言葉にならない悩みも細部まで読み取り、寄り添ったアドバイスを【もっと知りたい「ヘルスケア」のお仕事Vol.61 アロマセラピスト・講師 常川恵子さん ボディワーカー 明子さん】#2
ヘルスケア業界のさまざまな職業にフォーカスして、その道で働くプロにお仕事の魅力や経験談を語っていただく連載『もっと知りたい「ヘルスケア」のお仕事』。
今回は、板橋と恵比寿に二店舗を展開するアロマサロン「株式会社T&Kグループ Aroma Salon Prana」にて、セラピストで講師をしている母の常川恵子さん、ボディワーカーで娘の明子さんにインタビュー。
セラピストを目指す人向けにスクールを開講していたり、アメリカでは主流の心理学とオイルマッサージを掛け合わせて「エサレンマッサージ」を元にした、「ボディワーク」を強みとしているサロン。前編では、おふたりがアロマ業界を目指したきっかけやそのために学んだことについてお聞きしました。後編では、職業の魅力やサロンで人気のメニュー、今後アロマ業界を目指す方へのアドバイスを伺います。
お話を伺ったのは・・・
常川恵子さん(右)
編み物の先生、占星術講師など数々の講師経験を経て、友人の誘いを受けたのち、アロマ業界へ。サロンでは、スクールも開講しており、生徒が資格取得をするまでの講師や占星術セラピストとしてオリジナルのメニューを展開し、アロマの処方や鑑定を行なっている。
明子さん(左)
もともとIT業界で働いていたがヨガに通ったことがきっかけとなり、アロマ業界へ進出。その後、心と体のつながりに興味を持ち、心理学とオイルマッサージについて学び、現在、サロンではボディワーカーとして施術を行う。
ここでしか体感し得ない、独自のメニューを考案
――サロンでおすすめ、または人気のあるメニューはなんですか?
明子さん:はい。私と母のメニューを組み合わせた「アカシック占星術+プレミアムボディーリーディング」が一番人気ですね。
その人の生年月日はじめ基本的なデーターから読み取る占星術の鑑定とオイルを使ったマッサージをしながら、心の癖を筋肉から読みとってその人の悩みを根本的に見る、ボディリーディングがセットです。
――心と体の両方から悩みを読み取るなんて、他ではなかなか見られないコースとお見受けしました!やはり心と体は密接であるというお考えから生まれたメニューなんでしょうか?
恵子さん:そうですね、日本ではここでしか受けられないメニューです。私たちは、別々に施術・鑑定を行なっているのですが、不思議なことに結果が合致することが多々あります。例えば、「●月頃に回復に向かいますね」とボディリーディングで言われたあと、占星術鑑定でも近い時期が出たりして、お客様にも「さっきと同じ時期言われました!」と報告を受けることがあります。
――心の悩みは体へ直結しているんですね。施術ではどのようなことを心がけていますか?
恵子さん:サロンには、だいたい暗い顔をしていらっしゃるお客様が多いんです。なので、いかにお客様を笑顔で帰ってもらうか、考えながら鑑定しています。少しでもラクになってほしいので、「こうしなさい」などと指示はせず、とにかく相手の話を聞きます。悩んでいる人って吐き出したくてきているのだから、そこの気持ちを汲み取ってその人に合った解決方法を探り、なるべく笑顔で帰ってもらえるような鑑定を日々心がけていますね。
明子さん:当サロンでは「『スピリチュアル』を地に足をつけた状態で活かしていく」をテーマにしています。お客様の中には、稀に「さわれば見えるんですよね?」と勘違いされている方が多いんですが、あくまでボディから悩みを読み取り、さらに心理学に基づいた見方で鑑定しています。テーマに沿って、なるべく現実的なアドバイスや提案をするように心がけています。
お客様から寄せられる信頼感が自信に繋がる
――確かに「スピリチュアル」と聞くと、一括りにされやすいイメージはあります…。
明子さん:もう一つ、サロンのテーマに掲げていることが、「悩みを置いていっていただく」ことなんです。私自身、悩んだ経験があるのでそういった悩んでいる人たちを一人でも減らしたいと思っています。ボディワークをしていると、言葉にならない悩みやもやもやが体に顕著に出ているので、その悩みをこちらですくい上げて原因を明確にし、本人に伝える。そうして、次のステップへ向かえるんです。もちろん、その人の悩みにあった最善の解決策を一緒に考えるようにしています。
――具体的な解決策までもらえるのは、お客様側からすると心強いと感じます。仕事をしていて、大変だと感じることはなんですか?
明子さん:私が施術させていただくお客様は、意外と男性が多いんです。しかも、だいたいが会社を経営していたり、トップの方なのでその業界の情報や用語に合わせることに少し難しさを感じることがあります。中でも、大きなお金を動かす相談の場合もあったりして、アドバイスに悩むこともありますが、「明子さんに相談すればどうにかなりそうだから」と言われると、信頼されていることを実感できて頑張ろうと思えます。
――信頼されることは、嬉しいですよね。他にも嬉しかったことはありますか?
明子さん:そうですね。体から読みとった悩みについてアドバイスしたことが、その通りに解決できたと報告を受けたりしたときは、とても嬉しいですね!お客様が私を信じて行動してくれたところが本当に施術してよかったと思えるポイントです。
ボディワークの魅力は、他人の「ドラマが見られる」と「枠組みを決めない」ところ
――他人から影響されることって必ずありますもんね。お仕事の魅力はそういったところにもあるのでしょうか?
明子さん:はい。私は毎日、裸の状態の相手に施術をしています。そこで気づいたのですが、人は嘘を吐いていても、服を脱げば心が丸裸になるんです。例えば、見た目が気の弱そうな方でも、裸になって施術してみると意外と自信に満ち溢れている方だったり、その逆も然り…。施術しながら、その人の強がっている部分だとかいいところをみれるのがとても楽しいですね。毎日ドラマをみているような感覚で、刺激を受けますし、ボディワークという仕事の魅力でもあります。
恵子さん:鑑定でも同じことが言えますね。本当にたくさんの人をみているのでその数だけいろんな人生があって、とても刺激を受けます。
――なるほど。言葉通り、「丸裸」ですね。
明子さん:あとは、普段の生活では出会えないような方とお会いできることが楽しいですね。自分の周りにいる人たちって、価値観が似ている人同士で固まりがちだと思うんです。でも、仕事ではそういった枠にハマらない人たちと出会えることによって、その世界観も覗くことができるので疑似体験しているかのような感覚になれますし、楽しいだけではなくて自分にとっても学びになる出会いがたくさんあります。
――その出会いの中から、ボディワークという仕事に通じるような学びはありましたか?
明子さん:「普段出会わない人と出会える」ということは、枠組みに捉われないということです。それって、ボディワークをする上で、とても大事で重要なことだと感じています。
自分と違う考えの人がいても、「ありえない」と自分のものさしで否定するのではなく、肯定した上で、どうしたらその人が幸せな道を辿れるか、をアドバイスすることが大事なんです。そうして、いろんな人の考えや悩みに触れることで、枠組みにとらわれないということを学びました。
――お仕事で感じている魅力からまた学びが得られるとは、いい循環だと感じました。今後、アロマ業界を目指される方へアドバイスをお願いします。
恵子さん:とにかく自分の好きなことをして楽しむことですね。はじめる前から、「ああでもない、こうでもない」と理論をならべたてるのではなく、興味を持ったものに片っ端から手をつけてみてください。行動に移すことで、学びや気づきがたくさんあるはずです。
明子さん:ボディワークは、「あらゆるところに光を落とす」と言われています。そうやってたくさんの悩める方を救う手助けになるために、日々気付きながら些細な出来事にも注目して生活することを意識してほしいですね。
恵子さんと明子さんが「施術をするうえで心がけている」三か条
1.傾聴を意識して、笑顔で帰宅してもらう
2.もやもやの原因や悩みを追求し、言語化する
3.枠組みを決めずに、人それぞれの考え方を尊重した接し方を
「この人なら信頼して相談できる」という信頼感は、かなり希少で価値のあるものだと考えます。多くのお客様からそういった「信頼」が色濃く滲み出いていることは、恵子さん明子さんおふたりの日々の弛まぬ努力と学びの中で生み出されているものなんだなと実感しました。
取材・文/東菜々(レ・キャトル)
撮影/喜多 二三雄