SNS運用で地方から全国へ!地方施術家の未来を考える多様性のある働き方とは【整体師 高橋竜士さん】後編
地方でヘルスケア事業に携わっている方に、集客や売上アップのための取り組みについてインタビュー。前回に続き、宮城県仙台市で整体師として活動している高橋竜士さんにお話をうかがいます。
整骨院グループのマネージャー、整体師YouTuber、ヘルスケア事業会社代表と、多岐にわたり活躍している高橋さん。前回はマネージャーという立場から、地方での店舗展開で重要なことについて教えていただきました。
後編となる今回は、SNSを活用した整体師のマーケティング術についてお聞きします。
お話をうかがったのは…
整体師 高橋竜士さん
柔道整復師、鍼灸師資格を取得後、宮城県仙台市の整骨院に勤務。マネージャーとして店舗展開に携わり、グループ院に展開を拡げる。2年前よりYouTubeを中心にセルフケア情報を発信し、チャンネル登録者数は現在4.7万人超に。2021年には自身が代表を務める会社を立ち上げ、地方ヘルスケア事業の創生に取り組む。施術家向けマーケティングコンサルタントとしても活動中。
施術家として生き残るために「自分が何者なのか」を発信
――前回はオフラインでの集客術についてお聞きしました。今回は、オンラインでの活動についてお聞きします。
SNSを活用し始めたのは2年くらい前です。始めた理由は、ひとりの施術家として20年後30年後生き残っていけるのかという個人的な不安からでした。整骨院がグループ院というかたちになり、当たり障りのない施術家になっていったとき、 SNSを通して施術家のなかでも自分は何者なのかを発信しておくことで、ちゃんと生き残っていける状態を作っていきたい なと思ったんです。
会社としても、1つのところに就職して、ただ固定給をもらうというよりは、働き方にいろんな幅を持たせていった方が将来的にいいという考えがあります。今後この治療院業界だけでなく他業界も含め、働き方の多様化というのは絶対的に必要だと思うんです。会社としての自分と個人としての自分を分けて活動していきたいし、収入面でも分散したほうが将来的な安心感に繋がりますから。
――SNSを活用し始めてから、多様な働き方ができるようになったんですね。
地方在住の施術家として、地方で店舗だけで一生やっていくというのは、どんどん厳しくなってくると思っています。だから自分の活動できるエリアを拡げる必要がある。それがオンラインなら、どこにいたってできます。だからSNSに力を入れて、全国の人に対していろいろ活動していきたいと思ったんです。
今では一般の方向けのオンラインセミナーというかたちで、全国の方にセルフケアを届けられています。地方の施術家として、ひとつのかたちが達成できたなと感じますね。
YouTubeで認知を獲得し、Instagramで関係性を構築
――実際に取り組んでいるSNSの活用の仕方を教えてください。
メインで取り組んでいるのはYouTubeです。細かい話になりますが、YouTubeはチャンネルを作ってから、ある程度の総再生時間が積み重なるとグンとチャンネル登録者数が伸びる性質があるんです。それが大体、半年ほどかかる。その情報は元々知っていたので、まずは半年がんばろうとスタートしました。
実際、最初は1日2人チャンネル登録者が増えるかどうかというところが、半年後には一気に1日100人増えるようになりました。そこまでいけば、あとはどんどん伸びてくれるようになるんです。
――YouTubeでの活動が店舗の売上につながることはありましたか?
基本的な流れとして、 YouTubeで認知してもらい、そこからInstagramに飛んでもらいます。Instagramで関係性を構築していきながら、毎月〇日に新規の予約を人数限定で解放 するというかたちにしているんです。僕の新規集客は全部そこから行っています。
――Instagramを介する理由は?
Instagramはストーリーズという機能があるので、そこで僕のプライベートな部分を出しています。またDMを通して直接やりとりをすることも可能です。
そうすることで僕をより身近に感じてもらえて、ひとりの整体師というところから、もう少しファン度を高めることができます。それができると「この人から施術を受けたい」という気持ちが強くなり、実際の予約に繋がるんです。
重要なのはターゲットを明確にするブランディング
――整体師がSNSを活用する時に重要なことは何でしょうか?
重要なのは、自分の得意なことをしっかり絞って、特定のターゲットに届けること。僕がSNSを始めたきっかけでもありますが、地域にあるただの整骨院という状態で、なんとなく10年20年を過ごすのが怖かったというのがあるので、「こういう人に特化した施術家ですよ」というのを持っておくことがすごく重要だと思っているんです。そこがないと、これからSNSを運用していきたいという施術家さんは、かなり厳しいんじゃないかと感じます。
差別化のポイントは、理想は需要があるところを狙うのが大前提です。多いのは、症状で分けるか、年齢層で分けるか、性別で分けるか。ベタなのはやはり症状別。「この症状だったら自分」というブランディングをして、SNSを運用していくんです。
――高橋さんがブランディングのためにしたことは?
かなりハードワークになってしまうんですが、 最初に複数のアカウントを運用しました。メインになるであろうテーマの他に、〇〇痛や自律神経の乱れ、ベタに整体全般など。それらのチャンネルを同時にスタートさせたうえで、一番伸びそうなものを残していく 。ひとつだけやって当たるか外れるかという方がリスクは大きいので、最初はかなりハードでもやる価値はあると思います。
――特化したテーマについてのネタはどうやって入れているんですか?
施術についての知識や情報は常々取り入れるようにしています。ただSNSでのネタの活用という観点で言うと、SNS上で受けるネタというのは大体決まっているんです。だからそのネタを、角度を変えてどう発信していくかという方が重要だと思います。
オンラインと並行してオフラインで地域に根付いた事業展開も
――働き方の多様性というお話がありました。高橋さんは昨年、起業されたそうですが、そちらでの活動内容は?
まだ活動し始めたばかりですが、直近で動いているのが、女性向けのスポーツジムの立ち上げです。あと少しずつ取り組んでいるのが、治療家向けのコンサルティング。僕のように施術家としてブランディングしていきたい方に、SNSの運用の仕方をお伝えしています。
――それら含め、地方の施術家として今後取り組んでいきたいことはありますか?
整骨院という事業もすごく大事なんですが、施術だけで健康が作れるとは思っていません。運動も大事だし、栄養面も大事。だから院での施術だけでは手が届かない部分がサポートできるいろんな施設を、地域に建てていきたい と思っています。
そういった活動を通して、地域に根付いたヘルスケアを提供していきたいという気持ちもありますし、それが地方でやっていくための戦略にもなってくるんじゃないかと思います。その足掛かりとしてスタートするスポーツジムは、今年の夏にはオープンできそうです。
また、年内にできたらいいなと思っているのが、精神的な問題などで就労が難しい方に向けた就労支援事業。近年は精神的な問題を抱えて就労できない方がとても増えていますよね。僕がいる会社は自律神経の安定というのもキーポイントにしているので、自律神経と直結する精神面の問題もサポートできるような福祉事業も展開していきたいです。
そういった別事業の拡大を通して、結果的に地域のヘルスケアを叶えていけたらと思っています。
地方在住の施術家が生き残る秘訣とは
1.SNSの運用で活動範囲を拡げる
2.ブランディングを明確にする
3.地域に根付いた事業を展開する
人の出入りが少なく活動の幅が制限されがちな地方ヘルスケア事業。高橋さんはご自身の未来のために視点を変えて、SNSで活動の場所を地方から全国へと拡げました。一方、地域のヘルスケアにも目を向けた事業展開も。これからの時代に求められる多様性のある働き方として、ぜひ参考にしてみてください。
取材・文/山本二季