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介護・看護・リハビリ 2019-11-18

介護業界にも吹くアロマの風

タイトルを見て、「アロマと介護に関係があるの??」と、思った方もいらっしゃることでしょう。ところが今、介護業界や家庭で介護をする方の中ではこの『アロマ』が活躍しているのです。
毎日の介護にはストレスがつきもの。アロマはそのストレスを緩和させるケアラーズケア(介護者支援)、アロマにより介護生活を長く続けることができる効果が期待できるのです。更にアロマは、介護者だけではなく被介護者にも良い影響を与えているのです。

アロマセラピーとは?

アロマとは「花や木など植物に由来する自然の芳香」を意味し、セラピーは日本語で「療法」を意味します。つまりアロマセラピーとは、「自然の香りを用いた療法」のことを言います。
アロマセラピーは、花や葉、木の幹、果実の皮などの植物から抽出したエッセンシャルオイル(精油)や植物オイルを使用しますが、使用方法は大きく2つに分けられ、1つは香りを鼻から入れる「吸入」、もう1つはアロマを皮膚から吸収する「皮膚塗布」です。

<吸入>
鼻から直接精油の香りの吸入する方法です。精油の成分によって効果は異なりますが、鼻から入った精油の成分は脳に直接伝わり、心を落ち着かせたり、気持ちを高揚させたりなどの効果に繋がります。また、吸入した精油の成分は肺にも送られます。肺に入った成分は血液中に取り込まれて全身に渡ります。

<皮膚塗布>
精油と植物オイルを用いて全身のマッサージを行う、オイルトリートメントです。オイルトリートメントにより植物の成分が毛細血管に取り込まれ、全身を循環します。皮膚塗布のケースでは植物成分の効果以外にも、リンパの流れを促したり、コリをほぐしたりといった効果も期待できます。

精油の様々な効果

精油による作用には以下のように様々なものがあります。

抗菌作用 内容
抗菌作用 細菌感染の抑制作用
抗ウィルス作用 ウィルス感染の抑制作用
収斂作用 組織を引き締め、出血、分泌などの減少作用
止血作用 出血を止める作用
瘢痕形成作用 かさぶたの形成促進作用
鎮痙作用 痙攣および痙攣性の痛みやこむらがえりを取り除く作用
抗炎症作用 炎症、または熱の軽減作用
抗不安作用 不安や緊張を取り除く作用
エストロゲン作用 女性ホルモンの働きを刺激する作用
鎮静作用 苦痛・興奮を和らげる作用
抗うつ作用 抑うつ的な気分を明るくする作用
デオドラント作用 消臭作用
強壮作用 身体の機能・能力の向上作用
降圧作用 血圧を下げる作用
緩下作用 排便の促進作用
駆風作用 腸内ガスの排出促進作用
健胃作用 胃液の分泌活動を刺激して調子を整える作用

オイルの選び方

前項で述べたように、精油には様々な効果があります。そのため、精油の種類は期待する効用によって選ばないといけませんし、「吸入」「皮膚塗布」などの使用用途によっても選ばないといけません。

<吸入に向いている精油>
なかなか入眠できない、または眠ってもすぐに起きてしまい安眠ができない場合にはラベンダーが良いとされています。ラベンダーの精油を一滴ティッシュに垂らして、眠る時に顔の近くに置いておくと安らかな眠りにつく効果があります。

おむつ交換の時など、どうしても部屋中に臭いが広がってしまうことで悩みますよね。シベリアモミやレモンの精油を香水用アトマイザーに入れて室内に噴霧することにより介護者と高齢者の双方が気分が良く笑顔になる、快適な空間にします。

認知症により、時間の感覚がわからなくなる人もいます。時間の把握をさせるためには、朝・昼・夜、それぞれに室内の香りを変えることが効果的です。高齢になると視覚や聴覚は衰えてきますが、嗅覚はあまり衰えません。そこで「朝はこの香り、夜はこの香り」と決めることにより時間の感覚が戻り、朝はすっきり目覚めて、夜には落ち着いて眠れる等の効果がありあります。

その他、吸入に向いている精油としては以下のものがあります。

ユーカリラジアタ、ローズマリーシネオール、ゼラニウム、ベルガモット、グレープフルーツ、オレンジスイート、マンダリンなど


<皮膚塗布に向いている精油>

清拭の場合は殺菌作用があるラベンダーの精油を1滴、洗面器のお湯の中に入れ、混ぜた後タオルを入れ、そのタオルで身体を拭きます。ハンドトリートメントをする場合は、トリートメントをされる方が好きな香り、喜びや心地良さを感じる精油の使用をおすすめします。但し、使用には必ず皮膚塗布に向いている精油を使用しましょう。

皮膚塗布に向いている精油としては以下のものがあります。

ユーカリラジアタ、真正ラベンダー、ティートゥリー、ローズマリーシネオール、イランイラン、レモングラス、ユーカリシトリオドラ、ゼラニウムなど


<その他、オイル選びのための留意点>

・商品に「エッセンシャルオイル」と記載してあるもの
・使用している植物や産地が明確であり、分析表で成分が確認できるもの

介護アロマの勉強をするには

介護アロマセラピストの資格はありますが、介護アロマセラピストになるためには資格が必要というわけではありません。しかし、アロマの技術や知識を得る目的でスクールに通ったり、認定講座等を受講することは一人前のアロマセラピストになる近道と言えます。また、資格を取得することにより、その人の知識や能力が明確になるので、採用する側にとっては判断しやすくなるという利点もあります。

アロマのスクール(講座)には、技術や知識を身に付けることが目的のところと、資格を取るための勉強をするところがありますが、「今後資格を取得する予定なのか」「どんな資格を取得するのか」など、皆さまの意向に合うスクールを受講しましょう。但し、介護に特化したアロマのスクールというのは少なく、介護アロマに関しては1~3日くらいかけて行う講習会で学ぶのが一般的なようです。

アロマの経験が豊富な臨床心理士の先生を講師とした介護アロマセラピーの講習会は全国各地で催されています。講義の内容は様々ですが、よく行われている介護アロマの講義内容ランキングの上位はコチラの8つです。

講義 内容
介護アロマセラピー概論 介護アロマ導入の背景と経緯・介護保険との関連性
初心者向け介護アロマの基礎知識
ブレンド精油作り講座 ジェルクリームやブレンドオイルの作り方、ブレンドの比率、香りの相性など
高齢者と心理療法 介護の現場やボランティア活動で役立つ、傾聴をベースに高齢者の話を聞くための意味と留意点。
(参加者は、ロールプレイで体験)
トリートメント講習
(実技)
「ハンドトリートメント実習」「フットトリートメント実習」で精油と手の使い方をメインに、受講者は実習を通して技術の習得・ステップアップ
高齢者と皮膚感染症 皮膚感染症や皮膚トラブル、アロマ使用の留意点など
アロマと臨床 病院で臨床患者に実際に行っているアロマセラピー。介護、看護の留意点など
高齢者と口腔 口腔ケア・口腔リハビリ・口腔マッサージの効果と実習
高齢者とアロマ 実際に高齢者に対してアロマセラピーを施す際の注意点、実際にあったトラブルなどから自分を省みる機会を提供。また、仕事上での言葉遣いや声かけ、ご家族の対応、えがおでの話し方などの基礎も学ぶ

講習会の多くは有料ですが、中には無料レッスンを行っていることもありますので、詳細は講習会の主催(問い合わせ先)に連絡してみましょう。

介護アロマの講習会は全国のいろんな場所で催されています。インターネットで検索するとイベント日程や講習会のお知らせ等が容易に見つかると思います。申し込みについては各ウェブサイトでの説明を読んだ上で、メールや申込フォームから送りましょう。一人で参加するのに抵抗がある人は同じ志を持った周りの仲間と一緒に参加してみてはいかがでしょうか。

まとめ

これから更に高齢者が増えていく日本では、今以上に介護によるストレスが大きくなるでしょう。そのため、介護におけるアロマの存在価値は、今後更に大きくなっていくと思われます。アロマを使用することは自宅でご両親等の介護をしている方だけではなく、介護施設で働く方にも落ち着いた気分で働くことができます。これまでにあった介護施設での事件や事故が少しでも減り、高齢者にも介護者にも優しい業界づくりの一端をアロマが担っているのです。

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