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介護・看護・リハビリ 2020-12-14

【今さら聞けない!? 介護のお仕事の基本 vol.20】口に入れたティッシュを出してくれない! 異食行動の対応は?

介護の現場で直面しがちな困りごとの対処法をご紹介する当企画。忙しい現場では、困ったことがあってもすぐに同僚や先輩に相談できずにいる人も多いのではないでしょうか。必要な介護も性格も様々な利用者と接する介護職の毎日に、少しでもお役に立つ情報をお届けします。今回は、異食行動の対処法を取り上げます。

ティッシュを食べているところを見つけて、声をかけた。けど、嫌がって口から出してくれない…。

認知症の診断を受けているSさんは、現在、特別養護老人ホームで暮らしています。最近、食べ物ではない物を口に入れてしまう異食行動がみられるようになっています。

先日、ティッシュペーパーを食べているところをスタッフが見つけ、「食べ物ではないから、口から出しましょうね。」と声をかけました。しかし、Sさんは嫌がって、口の中の物を出してくれるどころか、口を開けてもくれません。

何でも口に入れてしまう異食行動は、のどに詰まらせたりなどの事故を防ぐためにも、『口から出してもらう』ための声かけが重要になってきます。それでは、どう声をかければよいのか、ポイントを見ていきましょう。

ポイント1:無理強いをしない

「何でそんな物を…」と思ってしまいがちな異食行動ですが、本人にとっては『おいしい物を食べている』つもりかもしれません。ですから、ただ単に「口の中の物を出してください」という声かけでは、「せっかくおいしい物を食べてるのに、どうして取り上げるんだ!?」という気持ちになっているのではないでしょうか。そんな状態のところに、「出して」と強い姿勢で向かっても頑なになってしまう可能性が高いといえます。

ポイント2:「もっとおいしい物がある」と声をかけてみる

おいしく食べているごちそうを途中で差し出さなければいけないとして、自分ならどうなれば、気持ちよく差し出せるかを考えてみましょう。「代わりに、もっとおいしいこっちのごちそうをどうぞ。」と言われれば、おそらく多くの人が納得できるのではないでしょうか。

認知症の人もこうした感情は同様です。まずは、「もっとおいしい物がありますよ。」「でも、口の中に何か入っていたら食べられませんねぇ…」「どうしましょうか」のような声かけで、今食べているものを手放す気持ちへ誘導してあげられるといいですね。

異食行動をとる利用者へやってはいけない2つのこと

1.「何食べてるんですか!」と怒る
2. 無理やり口を開けて取り出す

この2つは、誤飲などの事故につながりかねない、危ない! という思いから、ついとってしまいがちな行動です。ですが、これらは利用者に恐怖心や不信感を与えてしまい、これまで築いてきた信頼関係を壊してしまいかねません。まずは、食べたら絶対に危ない物はその利用者の手の届く範囲には置かないことを徹底しましょう。その上で異食行動を見つけたら、ご紹介したような利用者の気持ちに寄り添う声かけで対処するとよいでしょう。

文:細川光恵
参考:「こんなときにはどう言葉をかけたらいい? 介護の言葉かけタブー集」誠文堂新光社

監修

中浜 崇之さん
介護ラボしゅう 代表/株式会社Salud代表取締役/NPO法人 Ubdobe(医療福祉エンターテイメント) 理事/株式会社介護コネクション 執行役

1983年東京生まれ。ヘルパー2級を取得後、アルバイト先の特別養護老人ホームにて正規職員へ。約10年、特別養護老人ホームとデイサービスで勤務。その後、デイサービスや入居施設などの立ち上げから携わる。現在は、介護現場で勤務しながらNPO法人Ubdobe理事、株式会社介護コネクション執行役なども務める。2010年に「介護を文化へ」をテーマに『介護ラボしゅう』を立ち上げ、毎月の定例勉強会などを通じて、介護事業者のネットワーク作りに尽力している。

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