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ヘルスケア 2022-07-18

大工から整体師へ! YouTubeの人気動画「悶絶整体」が生まれたきっかけとは?【もっと知りたい「ヘルスケア」のお仕事Vol.67 整体師/榊原睦也さん】#1

「ヘルスケア業界」のさまざまな職業にフォーカスし、その道で働くプロに、お仕事の魅力や経験談を語っていただく連載企画「もっと知りたい! ヘルスケアのお仕事」。

今回お話を伺ったのは、

整体師として活躍する「骨盤先生」こと、榊原睦也さん。

院長を勤める新横浜の整体院「骨盤先生のカラダメンテ」は、なかなか予約が取れない人気店。キャンセルが出ても5分で埋まってしまうんだとか!

前編では、そんな榊原さんが整体師になったきっかけや、YouTubeの人気動画「悶絶整体」が生まれた背景を伺います。

大工と整体師のダブルワーク!
客として整体院に通いながら身につけた、師匠の「技」

――まずは、整体師になったきっかけを教えてください。もともと大工さんだったんですよね?

はい、広島で大工をしていました。その時に腰を悪くしてしまって、それを施術してもらったのが、のちの整体の師匠。大工をしながら師匠の元に弟子入りしました。

――ということは、大工と整体師のダブルワークですか!?

そうですね。平日は大工として働いて、土日は師匠のもとで整体の勉強をしていました。と言っても、基本はお客さんとして通っていたので、お金を払っていましたよ。その上で掃除をしたり、施術後の後片付けをしたり、雑用もして……、今考えるとヒドイですね(笑)。

しかも勉強といっても、「こうするんだよ」「ああするんだよ」って教えてくれるような師匠じゃなかったので、見よう見まねで覚えていった感じです。たまに「俺を客だと思ってやってみろ」って言われるので、師匠を練習台にして腕を磨きました。

――なかなかハードですね(笑)。

その頃、僕は20代でしたから、昭和50年、60年頃かな? 当時はどこもそんな感じだったと思います。今のように「教えてもらうこと」っていうのが当たり前じゃない時代でしたから。でも、そういう環境だからこそ、「早く覚えて一人前になりたい」って一生懸命になるんですよね。

――たしかに。ちなみに、お師匠さんの所ではどれくらい修行したんですか?

30歳ぐらいまで通っていたと思います。その後大工の仕事が忙しくなって、なかなか通えなくなりました。僕自身広島を離れ、関西や関東の仕事を転々としていたので。

その頃ですね、僕がまた体を悪くしてしまったので、師匠を呼び寄せようとしたんです。でも師匠は「自分でやれ」って言って、来てくれませんでした(笑)。でも、自分で自分の施術ってできないじゃないですか。なので妻に「勉強してきて」って、広島の師匠のもとに修行に行ってもらったんです。他にも習いたいっていう子がいたので、一緒に。そして彼らが帰ってきてオープンしたのが、今の店舗の前身となる整体院。2003年11月19日でした。

――そんな経緯があったんですね! その後は、整体師一本に?

いえいえ、まだ大工とのダブルワークです。正直、整体院としての儲けはスタッフの支払いだけで精一杯。なんなら僕の給料は0円でしたよ。家賃や光熱費、その他もろもろの経費は、建築業で稼いだお金を当てていました。

辛かったです。でも、お客さんの数が毎月50人ずつ増えていくんですよ。今でも覚えているんですが、11月は105人、12月は155人、1月は200人……。全然増えなかったり、減っていったりすれば店閉めも考えるんですが、そういうわけにもいかず。スタッフも抱えていましたしね。

――建築業の仕事は、いつまで続けられたんですか?

そのあと3年ぐらい続けましたが、僕がガンになってしまったんです。悪性リンパ腫だったんですが、そうなると続けるのが難しいので、整体師一本でやることにしました。

年間1億円の売り上げていた「骨盤先生の骨盤ベルト」が、
コロナ禍のあおりを受けて大ピンチ!

――「骨盤先生のカラダメンテ」では、オリジナル商品の販売もしていますよね。

はい。中でも人気なのは「骨盤先生の骨盤ベルト」。うちのヒット商品です。すごくこだわって作りました。こだわりすぎて工場に「うちではもう作れません!」って言われて、何回か工場を変えました(笑)。

――なんと(笑)! 商品開発のポイントはありますか?

どんなに工場に嫌われようとも、めげたり妥協したりせずにこだわること(笑)。あとは、頭で考えるだけでなく、試作品の使用感も都度しっかり確かめること。理屈じゃ説明できないけど、なぜかすごくいい、ってあるんですよ。

実はこの完成品も、まだまだ改良途中の試作品でした。工場で「ここをもっとこうしたい、ああしたい」とさんざん修正点を言った後、修正前のサンプルを一旦持ち帰ったんですが、試しに使ってみたらすごくよくて。これはいいものができるぞって思っていたら、修正後のサンプルはそうでもなくて(笑)。理論的には、修正後のものの方が絶対いいはずなのに、なぜだ?って。その後何度手を加えても、あの時のサンプルが一番いいってなるので、元に戻して販売することにしたんです。

――不思議ですね。

僕も未だに理由はわかりません(笑)。でも、関係者にもお客さんにもすごく好評です。頭で考えるだけじゃ答えが出ないこともあるんだなって、痛感しました。

ただ、値段も結構高いので、ネット通販だけではなかなか売れません。もちろん整体院でも販売していますが、コロナ前はホームセンターでデモンストレーションしたり、デパートの催事に出したりしていました。実際に試してもらうとよさをわかっていただけるので、コロナ前は年間1億円ぐらいの売り上げがありましたね。

でもコロナ禍で、催事等がことごとくできなくなって、販売数は10%以下に激減しました。それで、これからはSNSなどにもチャレンジしていかないとダメだってことになったんです。本業の整体も、こういうご時世だと先行きが不安でしたしね。Youtubeに力を入れたのも、その一つです。

YouTubeで大人気の「悶絶整体」動画。
予想以上の反響で、予約が取れない⁉️

――なるほど、そんな経緯があったんですか。

スタッフからも「今の時代、YouTubeでの集客は絶対です!」って言われましたしね。当初はスタッフが仕事の合間をぬって編集作業してくれていたのですが、今は撮影も編集もプロに依頼しています。そのかたも、もともとうちのお客さんだったんですよ。

――そうだったんですね。今では登録者数も3.5万人を超え、100万回再生の動画も! たくさんの人に見ていただく秘訣はありますか?

やっぱりエンターテイメントですから、「面白さ」は必要ですよね。飽きさせないのも大切かと思います。

また、集客という目的から考えるなら、「私の〇〇の痛み、この先生ならどうやってケアしてくれるのか?」っていうのを伝えることが重要だと思います。正直、腕がいいのは大前提なので、「この技すごいでしょ」っていうような見せ方をしても、つまらないんじゃないかな。

――「悶絶整体」の動画が人気ですが。

あれは動画のためというより、もともと僕の施術が「悶絶整体」で、リアルな現場です(笑)。とはいえエンターテイメントですから、お客さんが悶絶する姿や、僕とお客さんとのやりとりをうまく切り抜いて編集してくれていますね。おかげで「ちょっと怖いけど、施術を受けてみたい!」というお客さんが増えました。

でも反響がすごいあまり、予約が取れなくなってしまって……。新規のかただけでなく、常連さんもなかなか予約できず、ご迷惑をおかけしています。「集客」という意味では大成功なんですが。

――整体院って、1回の施術で「終わり」じゃないですもんね。

そうなんです。1回の施術でその時は楽になっても、根本的な改善にはならないので、少なくとも3〜4回は継続的にケアした方がいいのですが、なにせ予約が取れず……。

また、忙しすぎるとスタッフにも負担がかかります。体力面でもそうですが、精神面でもよくない。「いくらでもお客さんが来る」となると、どうしても施術が雑になるし、向上心も生まれないので。嬉しい反面、悩みもありますね。ぜいたくな悩みですが(笑)。


成功のポイントも今の悩みも、赤裸々に語ってくださった榊原さん。ご病気やコロナ禍など、どうしようもできない局面に立ったときも、前を向いて行動に移す姿がすごく素敵です。

後編では、この仕事のやりがいや大切にしていること、今後の目標などを伺います。

取材・文/児玉知子
撮影/喜多二三雄

information

骨盤先生のカラダメンテ
住所:神奈川県横浜市港北区篠原町3014東急新横浜南ビル3F-C
電話:0120-900-214
〈営業時間〉
平日:11時〜21時(最終受付20時)
土日祭日:10時〜21時(最終受付20時)〈定休日〉
火・金曜日
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