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特集・コラム 2022-11-10

傾眠について|意識障害の原因や対策などを解説!

傾眠は、介護の現場で起こりうるものです。どのような原因でなるのか、どんな症状なのかなど気になる方もいるのではないでしょうか?傾眠についての概要を知ることで介護を行う上で役立てることができるでしょう。

本記事では、傾眠についての概要や原因・対策などについて解説します。介護職の現場では、傾眠状態である高齢者が多くいるため、知識を身につけることが大切です。

傾眠とは?


「傾眠」という言葉は、浅い眠りにおちいり、うとうとしている状態をあらわします。介護で使われる傾眠は、身体を優しくたたくなどの軽い刺激で意識を取り戻せる状態のことです。
傾眠とは傾眠は、4種類の段階にわけられた意識障害の中の1つです。程度としては、もっとも軽度の状態を指しています。利用者に傾眠傾向がみられた場合、そのままの状態にすると重病化する恐れも。介護者は、傾眠について理解し、対処していく必要があるでしょう。

睡眠障害やうたた寝とはちがうの?

睡眠障害や単なる寝不足とは症状が異なります。うたた寝のときとくらべて、1日に何度もうとうとするなどの症状がある場合は、傾眠の兆候があると考えられることも。

また、傾眠の症状の1つに起きる前の記憶がなかったり、起きたときの時間や場所がわからなくなったりなどがあります。

傾眠は意識障害の1つ


前述したように、傾眠は4段階ある意識障害のうちの1つです。4つの段階は、意識清明・傾眠・昏迷・昏睡とあらわします。それぞれ症状の重さに違いがあり、介護者は適切な対応を行う必要があるでしょう。
傾眠の4段階ここからは、4つの意識障害を段階別に詳しく解説します。段階別の症状を知ることで、状況に合わせて落ち着いた対処が行いやすくなるでしょう。

1.【正常】意識清明

意識清明とは、意識がはっきりとある正常の状態です。うとうとせずに、問題なく通常の判断や意思の疎通が行えます。この状態は、傾眠の傾向がある状態ではありません。

2.傾眠

傾眠は、うとうとし、その頻度が多くなってきていたり、起きたときの状況がわからなくなったりしている状態です。軽く刺激を与えると起きるレベルで声などにも反応します。

3.昏迷

昏迷は、どんな刺激を与えたとしてもなかなか意識が戻りません。強い刺激を与えることで一瞬起きる程度の状態です。前段階の「傾眠」の状態をそのままにしておくと、昏迷に進行してしまう恐れがあります。

4.昏睡

昏睡は、どんな強い刺激を与えても起きない状態です。非常に深い眠りについており、外から刺激を与えたとしても覚醒しません。刺激に対する不快感をあらわすこともなく、意識障害の中では重度の状態です。

傾眠傾向になる原因について


傾眠になる原因はどのようなものがあるのでしょうか。原因を知ることで、傾眠を防ぐために生活の中で意識して気をつけるべきポイントを理解できます。

原因は1つではなくいくつかあるので、それぞれどのような内容かくわしく紹介します。

薬による副作用

薬の副作用によって傾眠が引き起こされることがあります。「抗てんかん薬」は、副作用として傾眠を引き起こしやすい薬です。また、花粉症などに処方される「抗ヒスタミン薬」も傾眠を引き起こしやすい成分が含まれています。

現在服用している薬を確認することで、傾眠の改善につながる場合も。薬を服用する際は、副作用を事前にしっかりと確認することをおすすめします。

脱水症状によるもの

脱水症状になると、意識のレベルが低下し傾眠を引き起こすことがあります。食事がうまくとれていなかったり、水分補給を忘れていたりすると脱水症状になりやすいでしょう。

また、脱水症状で傾眠の傾向があらわれるだけでなく、幻聴などの症状が出ることも。高齢者は食欲が落ちることが多く、とくに脱水症状になりやすいです。

認知症

認知症により、生活リズムが乱れることで傾眠につながることも。昼夜逆転している場合は傾眠になりやすいといえるでしょう。

また、認知症の初期症状の1つとして無気力状態が続くことがあります。この状態から傾眠へ移行するパターンも考えられます。

加齢によるもの

加齢自体が原因で神経の伝達機能が低下し、傾眠傾向になることも。高齢になり、傾眠の傾向があらわれるのは自然でよくあることです。このパターンの場合は、過度に心配する必要はないでしょう。

しかし、急に傾眠の傾向が頻繁にあらわれたときは注意が必要です。心身に変化がないかを確認し、傾眠がさらに進行していかないように対策を行う必要があるでしょう。

内科系の疾患

臓器になにか疾患を抱えている場合は、傾眠状態になりやすくなります。肝臓や腎臓など代謝に関係する臓器に問題があると、高熱が出て意識が朦朧とすることも。

また、症状の1つとして自分のいる場所や時間がわからなくなる場合もあります。内臓系の疾患が傾眠の原因だった場合、病状がおさまることで傾眠の改善につながることが多いでしょう。

傾眠傾向がある場合|介護士として気をつけるべきこと


傾眠や傾眠傾向がある場合、そこから引き起こされる事故やけがにも注意が必要です。傾眠が続くことで食事や移動に支障がでることがあります。

介護士は通常の状態のときよりも、傾眠の傾向がある場合に意識して気をつけなければなりません。どのようなことを意識して介護の業務を行えばよいのかについて説明します。

誤嚥のリスク

傾眠の傾向があるときは誤嚥のリスクが高まります。なぜなら、あまり嚙まずに飲み込もうとしてしまったり、汁物でむせてしまったりする機会が増えると考えられるからです。

介護士は、誤嚥のリスクが高まっていることを理解して食事の介助を行う必要があるでしょう。もし、誤嚥してしまうと肺炎などを引き起こしてしまうことも。食事の介助だけでなく、食事のメニューにも気をつけ、リスクをできるだけ下げていきましょう。

転倒などの介護事故

傾眠になり、うとうとすることで転倒などの介護事故のリスクが高まります。介護施設では、車いすや椅子に座った状態で傾眠状態になっている人が多いです。傾眠により転倒してしまうシチュエーションも考えられるでしょう。

介護士は、傾眠状態である利用者がいることで、転倒につながりやすい環境であることを理解し、普段よりも注意を払ってサポートする必要があります。

傾眠の傾向がある場合の対策


傾眠の傾向がみられた場合、以下のような対策を行うことで改善される場合があります。介護士や医師によって行える対策や対処法について紹介します。

傾眠の傾向がある場合の対策
・薬の量を調整する
・日中のコミュニケーションや散歩を増やす
・こまめな水分補給を行う

以下でそれぞれの内容について詳しく説明していきます。

薬の量を調整

薬を服用している場合、薬の副作用が傾眠の原因になっていることが考えられます。医師に傾眠の傾向があることを相談し、薬の量を調節する・薬を変えてもらうなどの対策を行いましょう。

日中のコミュニケーションや散歩を増やす

介護士は傾眠を防ぐために日中に積極的に話しかけたり、散歩を行ったりする対策ができます。このような働きかけを行うことで、昼間の傾眠を減らしやすい状況となり、夜に良質な睡眠がとりやすくなるでしょう。

こまめな水分補給を行う

脱水症状を防ぐことは、傾眠を回避するためにも大切です。水分があまりとれていないと思われる利用者に対して、介護士は適切なタイミングで水分が十分に補給できているかをチェックする必要があるでしょう。

傾眠について理解し正しい対処を行おう


今回は、傾眠についての概要や対処法などを紹介しました。傾眠は意識障害の4段階のうちの1つで、介護の現場でよくみられます。

傾眠を防ぐには、日ごろから積極的に話しかけたり、散歩にいったりすることも効果的です。介護士が傾眠について正しく理解し、適切な判断やサポートが行えるようになりましょう。

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