HCU(高度治療室)とは?ICU(集中治療室)とどう違うの?|HCUでの看護師の役目を紹介
病院には、一般病棟やICU(集中治療室)、HCU(高度治療室)の3種類の病室があり、病気や症状の程度によって、患者が入院する病室は異なります。
しかし、ICUやHCUとは、一体どのような病室なのか、具体的によくわからないという方もいるのではないでしょうか?
この章では、HCU(高度治療室)とはどのような病室なのか、ICU(集中治療室)との違いやHCUでの看護師の役割、向いている人の特徴について紹介します。
この記事を読むことで、HCUとICUとの具体的な違い、HCUで働く看護師の役割や向き・不向きについて知り、就職・転職活動に活かすことが可能です。
HCU(高度治療室)とは?
HCU(高度治療室)とは、一般病棟とICU(集中治療室)の中間的な位置にある治療室。
HCUに入院する患者は、重症化リスクがある疾患や病体ですが、ICUに入院するほど重篤な状態でなく、明確な命の危険がある状態でない患者が該当します。
HCUとICUのどちらに入院するかどうかは、症状の度合いによって決まる点が特徴です。
どんな人が入院するの?
たとえば、大きな手術の後で病状が悪化する危険性が残っている場合や以下のような病状がみられる場合には、一般病棟ではなく、HCUに入院することが多いようです。
・心筋梗塞
・くも膜下出血
・急性呼吸不全
・急性心不全
・大動脈解離
上記の病気は一例ですが、重症化が懸念される病気や術後にHCUに入院して、症状が回復してきたら、一般病棟に移動するという流れが一般的だといわれています。
HCUの施設基準とは?
HCUの施設基準には、以下の条件が課されるのが特徴です。
・医療施設内に専任の常勤医師が1名以上在籍していること
・一般病棟内にハイケアユニットでの入院管理に最適な治療室がある
・ハイケアを実施するために十分な以下の装置を備えている(ICUと共有も可)
1.救急蘇生装置(気管内挿管セット・人工呼吸装置など)
2.除細動器
3.心電計
4.呼吸循環管理装置
・HCUで勤務している看護師はその時間帯はHCU以外での夜勤を行わない
・「ハイケアユニット用の重症度、医療・看護必要度に係る評価表」で評価。その基準を満たす患者が8割以上を満たしている状態であること
・「ハイケアユニット用の重症度、医療・看護必要度に係る評価表」は、院内研修を受けた人材しか記入できない
引用:厚生労働省:基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて
これらの施設基準をしっかりと満たすことで、病院側はHCUで患者の受け入れができると覚えておきましょう。
HCUとICU(集中治療室)はどう違うの?
HCUとICUの具体的な違いは、患者の病状や重症度の違いはもちろんですが、担当する看護師の配置基準によって、入院する患者が異なることも挙げられます。
この章では、HCUとICUの具体的な違いについて見ていきましょう。
ICUとは
ICUとは、24時間体制で経過観察を実現するためのモニタリング設備や生命維持装置、診療の体制が整備された治療室のことです。
ICUで施される「集中治療」とは、「生命の危機に瀕した重症患者を、24時間を通した濃密な観察のもとに、先進医療技術を駆使して集中的に治療する」ことです。
24時間体制の集中治療を実現できる治療室がICUであり、患者の急変にいつでも対応できる設備と、受け入れ態勢が整っている点が特徴だといえます。
ICUの種類
ICUにはいくつかの種類があり、特定の疾患に対する治療室も「ICU」の一種として含めて表現するのが一般的です。ICUには以下のような種類があります。
・NICU(新生児集中治療室):出産後まもない病的な新生児向け
・NCU(脳神経外科集中治療室):脳神経疾患や外傷を負った方向け
・SICU(外科系集中治療室):全身麻酔をかけた術後直後の方向け
・CCU(冠動脈疾患集中治療室):心筋梗塞や狭心症の処置を要する方向け
・KICU(腎疾患集中治療室):腎不全や肝炎によって処置を要する方向け
引用元:一般社団法人 日本医療福祉建築協会:ICUの種類と対象患者・施設基準
このように、ICUといっても細分化すると多くの種類があります。特定の疾患ごとに治療室の名称があり、それらをまとめてICUを意味することが多いです。
ただし、狭義においては、呼吸・循環・代謝機能に関わる重要臓器の疾患に対する治療室のみを「ICU」と定義する場合もあることも覚えておきましょう。
入院基準
ICUは生命の危機にあるような患者を24時間体制で観察し、容態に異常があれば、すぐに対応することが求められます。
その一方で、HCUは一般病棟で入院するよりも重度ですが、ICUに入院するほどの病気悪化のリスクが低い場合に利用される治療室です。
看護師の配置基準
HCUとICU、一般病棟では看護師の配置基準が異なります。ICUでは患者2名に対して、看護師1名の配置基準。HCUでは患者4名に対して、看護師1名の配置基準となっています。
また、一般病棟に関しては、患者7名に対して、看護師1名の配置基準です。
患者の重症度合いが高いICUやHCUでは、患者数に対して配置しなければいけない看護師の数は、一般病棟の場合よりも多くなるということを覚えておきましょう。
HCUでの看護師の役割
HCUで働く看護師は、緊急入院してきた患者に対する適切なケアや術後のリハビリなどを担当します。人工呼吸器管理や心電図、除細動器、生体情報監視装置などHCUにある装置を用いて、必要となる医療処置や経過観察をするのが主な役割です。
HCUに入院してきた患者は不安やストレスで不安定になってしまうことがあります。そのため、患者やその家族との対話を通して、不安を和らげるという役割も重要です。
また、HCUに入院している患者に対しての食事や入浴、排泄サポートなどの生活介助を行うケースもあります。
HCUの看護師に向いている人は?
HCUの看護師には、突然のトラブルに対する対応能力や失敗を繰り返さないための継続的な学習、心身が健康な方が向いています。この章では、HCUの看護師として働くために備えておきたい特徴について見ていきましょう。
観察力・対応力のある人
HCUでは患者の容態が急変するケースも珍しくはありません。問題の原因を考え、適切な医療処置を実行できる方がHCUでの勤務に向いています。
モニタリングや各種のデータを分析して、容態が急変した原因を冷静に分析し、パニックにならずに目の前の問題を解決する対応力が求められるのです。
体力のある人
HCUでは担当する患者の容態を24時間体制でモニタリングして、容態が急変する度に迅速な対応が求められます。そのため、心身がタフな方におすすめの仕事です。
患者の容態しだいでは、定時に帰れずに、長い時間残業せざるを得ないケースも多いでしょう。また、必死に看護しても力が及ばないこともあり、体力だけでなく、精神力の強い方でないと、仕事を続けるのが難しいといえます。
決断力のある人
HCUでは患者の容態が急変したり、矢継ぎ早に対応しなければいけなかったりと、短時間に重要な決断を下さなければならない場面が数多くやってきます。そのため、HCUで勤務するなら、判断能力・決断力がある方が適任だといえるでしょう。
学習意欲の高い人
HCUに入院する方は疾患や病気のステージ、基礎疾患など、患者ごとに把握しておかなければいけない事前情報や適切な対応の仕方は異なります。
患者にとってベストな医療処置や対応ができるように、入院患者ごとのカルテを読み込み、処置に必要な情報を学習する必要があります。学習意欲が高く、必要な情報を学習・実践に応用できる人材が、HCUで勤務する看護師には求められるといえるでしょう。
HCUは重症化や急変するリスクがある患者が入院する病棟
この記事では、HCUとICUの違い、UCUで働く看護師の仕事内容や向いている人の特徴について解説しました。HCUはICUに入院する患者よりも症状が軽度ですが、一般病棟の入院患者よりも重度の疾患をもつ患者のための治療室です。
患者の容態の急変や突然のトラブルに対する対応を迫られるケースがあるため、決断力があり、心身がタフな方でないと適応するのが大変な仕事だといえます。
しかし、現場の最新機器や患者の様々な症例にふれ、自分自身のスキルアップをはかるのには絶好の職場であることも事実です。
最新機器や多くの症例に触れることで、自身のキャリアアップを考えている方は、HCUの看護師として働くことも、就職・転職の選択肢として考えておきましょう。
引用元
厚生労働省:基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて
一般社団法人 日本医療福祉建築協会:ICUの種類と対象患者・施設基準
厚生労働省:入院基本料 特定入院料