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特集・コラム 2023-01-08

保育所保育指針とは?5つの領域と10個の共通方針について解説

保育サービスについて考える際に重要な指標となるのが、厚生労働省が定めている保育サービスの考え方、運営方針に関する共通ガイドラインである『保育所保育指針』です。

保育施設における保育サービスや運営に関する基本方針を知ることで、サービスや運営体制の見直し、改善に役立てられるでしょう。

この章では、保育所保育指針の概要や保育方針目標、共通方針について解説します。

保育所保育指針とは?概要と成立の背景

保育所保育指針は、保育方針を策定する5つの領域と10個の基本方針からなります。この章では、保育所保育方針の概要と方針が成立した背景について見ていきましょう。

基本的な考え方

保育所保育方針とは、全5章からなる保育所保育の基本的な考え方やねらい、運営に関する事項をまとめた、保育サービス従事者向けの共通ガイドラインです。

同ガイドラインの基本的な理念は、子どもたちの健康や安全、発達の保障などの観点から策定され、保育所保育の改善を目指す内容になっています。

成立するに至った背景

核家族や共働き家庭が増え、近隣住民との関係性が希薄になり、乳幼児の両親が身近に相談できる人が少なくなったことで、保育所が乳幼児に与える影響が大きくなっているのが現状です。

また、科学的見地からも保育所保育は幼児期の人格形成に大きな影響を及ぼすといわれ、国際的にも保育所保育の重要性は高まっています。

このような背景から、社会や世論を反映した保育所保育のガイドラインである「保育所保育方針」が成立したのです。

保育所保育方針は、まず1965年に策定され、ついで1990年、1999年と改訂。そして、2008年の改訂で同ガイドラインが告示されました。最終的には、2017年に再度改訂が行われ、現在のガイドライン内容になっています。

【5つの領域】保育所の保育方針目標

保育所保育指針の第2章では、子どもの心身の成長のために保育所が目指すべき「5つの領域」が規定されています。この章では、それぞれの領域について見ていきましょう。

1.心身の健康に関わる|「健康」の領域

健康な日常生活を送るための心身の健康や、安全な生活を送るための生活力を養うことを目的とした項目です。

【ねらい】

・明るくのびのび生活し、体を動かすことを楽しむ
・自分の体を動かし、様々な動きをしようとする
・健康、安全な生活に必要な習慣に気づき、自発心が芽生える

【内容】

・保育士等の愛情豊かな受容の下で、安定感をもって生活する
・食事や午睡、遊びと休息など、保育所における生活リズムが形成される
・走る・飛ぶ・登る・押すなどの全身を使う遊びを楽しむ
・様々な食品や調理形態に慣れ、ゆったりとした雰囲気の中で食事や間食を楽しむ
・身の回りを清潔に保つ心地よさを感じ、その習慣が少しずつ身につく
・保育士等の助けを借りながら、衣類の着脱を自分でしようとする
・便器での排泄に慣れ、自分で排泄できるようになる

引用元:保育所保育指針解説|厚生労働省

このように、日常生活全般の行動や運動に関わる領域だといえます。

2.他人とのコミュニケーションに関わる|「人間関係」の領域

大人や他人とのコミュニケーションを通して、他人との関わり方や社交性を養うことを目的とした項目です。

【ねらい】

・保育所での生活を楽しみ、身近な人と関わる心地よさを感じる
・周囲の子ども等への興味や関心が高まり、関わりをもとうとする
・保育所の生活の仕方に慣れ、決まりの大切さに気づく

【内容】
・保育士や周囲の子どもとの安定した関係の中で、共に過ごす心地よさを感じる。
・保育士等の受容的・応答的な関わりの中で、欲求を適切に満たし、安心感をもって過ごす。
・身の回りに様々な人がいることに気づき、他の子どもと関わりをもって遊ぶ。
・保育士等の仲立ちにより、他の子どもとの関わり方を少しずつ身につける
・保育所の生活の仕方に慣れ、きまりがあることや、その大切さに 気づく
・生活や遊びの中で、年長児や保育士等の真似やごっこ遊びを楽しんだりする

引用元:保育所保育指針解説|厚生労働省

他人との関わり合いの中で、子どものコミュニケーション能力向上をはかることを目的とした領域で、その後の子どもの社交性の獲得に大きく関わる項目だといえます。

3.身近な環境に関わる|「環境」の領域

周囲の環境に好奇心や探究心をもってのぞむ姿勢を養成することを目指す項目です。

【ねらい】
・身近な環境に親しみ、触れ合う中で、様々なものに興味や関心 をもつ。
・様々なものに関わる中で、発見を楽しんだり、考えたりしよう とする。
・見る、聞く、触るなどの経験を通して、感覚の働きを豊かにす る。
【内容】
・安全で活動しやすい環境での探索活動等を通して、見る、聞く、 触れる、嗅ぐ、味わうなどの感覚の働きを豊かにする。
・玩具、絵本、遊具などに興味をもち、それらを使った遊びを楽し む。
・周囲の物に触れる中で、形、色、大きさ、量などの物の性質や仕組みに気づく。
・自分の物と人の物の区別や、場所的感覚など、環境を捉える感覚 が育つ。
・身近な生き物に気づき、親しみをもつ。
・近隣の生活や季節の行事などに興味や関心をもつ。

引用元:保育所保育指針解説|厚生労働省

周囲のあらゆる環境に興味関心をもって、知的好奇心を育むのが目標です。

4.言語の習得に関わる|「言語」の領域

言語に対する感覚や表現能力の育成を目標とする項目です。

【ねらい】
・言葉遊びや言葉で表現する楽しさを感じる。
・人の言葉や話などを聞き、自分でも思ったことを伝えようとする。
・絵本や物語等に親しむとともに、言葉のやりとりで身近な人と心を通わせる。
【内容】
・保育士等の応答的な関わりや話しかけにより、自ら言葉を使おうとする。
・生活に必要な簡単な言葉に気づき、聞き分ける。
・親しみをもって日常の挨拶に応じる。
・絵本や紙芝居を楽しみ、簡単な言葉を繰り返したり、模倣をしたりして遊ぶ。
・保育士等とごっこ遊びをする中で、言葉のやり取りを楽しむ。
・保育士等を仲立ちとして、生活や遊びの中で友達との言葉のやりとりを楽しむ。
・保育士等や友達の言葉や話に興味や関心をもって、聞いたり、話したりする。

引用元:保育所保育指針解説|厚生労働省

言葉全般に対する感覚を育み、言語能力を育成していくことを目指します。

5.表現の仕方と感性に関わる|「表現」の領域

子どもが感じたことを表現することで、感性や表現力の養成を目指す項目です。

【ねらい】
・身体の諸感覚の経験を豊かにし、様々な感覚を味わう。
・感じたことや考えたことなどを自分なりに表現しようとする。
・生活や遊びの様々な体験を通して、イメージや感性が豊かになる。
【内容】
・水、砂、土、紙、粘土など様々な素材に触れて楽しむ。
・音楽、リズムやそれに合わせた体の動きを楽しむ。
・生活の中で様々な音、形、色、手触り、動き、味、香りなどに気づいたり、感じたりして楽しむ。
・歌を歌ったり、簡単な手遊びや全身を使う遊びを楽しんだりす る。
・保育士からの話や、生活や遊びの中での出来事を通し、イメージを豊かにする。
・生活や遊びの中で、興味のあることや経験したことなどを自分なりに表現する。

引用元:保育所保育指針解説|厚生労働省

子どもが五感を通してさまざまな体験をし、それを言葉で表現することで、考える力や表現のバリエーションを広げることを目指します。

共通方針「幼児期の終わりまでに育ってほしい10の姿」

2018年に改訂・施行された保育所保育方針の中では、「幼児期の終わりまでに育って欲しい10の姿」が定められています。この方針によって、保育施設における幼児教育の到達目標を示し、保育サービスを提供する施設側の共通認識を作るという意図があります。

この章では、10の姿の具体的な内容について見ていきましょう。

1.健康な心と体

保育施設で生活を送る中で、心と体を働かせながら自分のやりたい行動にとりくみ、目的意識をもって、安全で健康的な生活を過ごせるようになるのが目標です。

衣類の着脱や排泄などの日常生活における基本的な日常行動を通して、自分の心身でやりたいことをこなせる状態を目指します。

2.自立心

自力で何かをできるようになること、満足感や達成感をもちながら自信をもって行動していくことが自立心にあたります。保育園での活動を通じて、生活の中でできることを増やし、子どもたちの自信をつけることが求められるでしょう。

3.協調性

保育施設では他人とのコミュニケーションをとる機会があります。一緒に食事をして、遊び、会話する中で、他人との協調性を身につけていくのが一般的です。集団行動をすることで他人を理解でき、助け合いの精神が育まれることが期待されます。

4.道徳心

子どもが物事の良し悪しの分別をつけ、ルールを守るという道徳心を身につけることも目指すべきゴールの一つです。他人との関わり合いの中で、やっていいこととやってはいけないことを区別し、ルールについて学ぶことが求められます。

5.社会生活における関わり

家族以外の友人や保育士、大人たちなどの社会との関わりをもつことで、社会の中での自分がとるべき行動や表現方法などを学ぶことが可能です。

地域とのふれあいの中で、地元の人との関わりや住んでいる地域に対する愛着をもつことで、子どもが地域社会の一員として成長するのが理想だといえます。

6.思考力の芽生え

保育施設で友達や大人とコミュニケーションをとりながら活動していく中で、自分の考えで行動し、思っていることを表現する力が徐々に身についていくのが目標です。

人々との交流の中で試行錯誤して、思考と行動の練習をすることが求められます。

7.生命の尊重

自然にふれることで、自然に対する理解と愛着を深めて、その他の動物を尊重する考えをもつことが大切です。自然と動物を大切にすることは、他者理解にも役立ちます。

自然とふれあう機会をもうけて、子どもが自然や動物に対する興味関心を自然に抱くような保育所保育が求められます。

8.図形・文字等への関心・感覚

日常生活で図形や文字にふれることで、言葉に対する関心を高めることが、その後の学校教育で役立つ感覚を身につけることにつながります。

保育施設での生活の中で、図形や文字が意味することを解釈して、自分なりに理解しようと努力させることが重要なポイントです。

9.言語コミュニケーション

先生や友人、絵本・物語の読み聞かせを通じて、言語によるコミュニケーションと言葉を使用した伝達能力を育むことも保育所の大きな役割の一つです。

文字の必要性や他人の会話の意味を理解すること、ルールや物語のあらすじを共有したりなど、言語を使った理解・コミュニケーションスキルの養成を目指します。

10.感受性と表現の仕方

自分の言葉で表現し、他人と話を共有することで表現力を高めることも大切です。心を動かすような出来事にふれ、他人との関わり合いの中で表現方法や表現する喜びを知り、感受性と表現力を高めていきます。

保育所保育指針の領域と共通方針を把握して、日々の保育サービスに活かしていこう!

この記事では、保育所保育指針の概要や成立した背景、基本的な保育方針の5つの領域や「幼児期の終わりまでに育って欲しい10の姿」を解説しました。

幼児期に家庭や周囲の大人が教育に参加する時間が限られている中、保育施設が子どもの成長に果たす役割は大きくなっています。

基本方針や共通方針をおさえて、保育サービスのさらなる改善に活かしていきましょう。

引用元
厚生労働省:保育所保育指針解説
厚生労働省:保育所保育指針 平成29年

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