【2025年問題】対策には介護職員の給料アップがカギ?!|2025年問題とは?
団塊の世代が後期高齢者となり、介護が必要な高齢者の人口が多くなると予測される2025年。介護士の人材不足も、さらに深刻になっていることが心配されています。2025年問題を乗り越えるために、どのような対策がされているのでしょうか。
今回は介護職員の処遇改善がカギともいわれている2025年問題対策が、介護職員の待遇やキャリアに与える影響についてご紹介します。
2025年問題とは?
年齢別の人口を見た際に、極端に人口が多い層に「団塊世代」があります。この団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になると、医療・介護サービスが需要過多の状況に陥ってしまうことを指摘しているのが「2025年問題」です。
ここでは、団塊世代が後期高齢者になることで起こる2025年問題の詳細について解説します。
介護士が足りなくなる
厚生労働省が2021年7月に発表した「第8期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数」では、2025年度には約243万人の介護職員が必要になると見込まれているようです。これは2021年現在よりも、さらに約32万人介護職員を確保しなければならないことを示しています。
しかし、少子高齢化により、働ける年代の割合はどんどん減少していくでしょう。そのため、2025年以降になると、介護士の人材不足がさらに深刻になっていくことが心配されています。
介護難民が増える
どんなに多くの介護施設を作ったとしても、介護士が集まらなければ施設を運営できません。団塊の世代が後期高齢者となることで、介護が必要な人が増えることが予測されます。
しかし、介護士が足りないことで、要介護状態になってもケアしてもらえない「介護難民」の増加が懸念されているからです。
社会保障費の負担増
介護が必要な状態の人が増えると、介護保険や医療保険、年金などといった社会保障費が増大します。
社会全体で負担しなければならない社会保障費の増大が見込まれるなか、働いて社会を支える世代の割合は減少傾向にあるため、ひとりあたりの負担は今後も増えていくことが確実です。
なぜ介護職員が足りない?介護職員が足りなくなる理由を解説
2025年問題で生じるとされる介護士不足の背景には、一体どのようなものが挙げられるのでしょうか。
人口構成による社会全体としての問題と、介護士という職種の仕事の内容の特性、給与などの待遇の問題にわけて解説します。
少子高齢化による人材不足
少子高齢化により、働ける年代の母数自体が減少しているため、現在でも業界を問わず人材不足が大きな問題となっています。
さらに、人口ピラミッドでもっとも層が厚い団塊の世代が被介護者となることで、一時的な介護施設の不足も生じることも。介護施設は一定のスタッフがいなければ運営できませんので、介護職の需要は高まる一方といえます。
給料など待遇がじゅうぶんでないため人材が集まらない
厚労省の「令和3年度介護従事者処遇状況等調査結果」によると、介護職員の平均給与は31万6,610円です。看護職員の平均給与36万9,210円、生活相談員の平均給与33万8,370円に対してもじゅうぶんな額とはいえず、人材が集まらない原因になっていると考えられます。
入所施設や24時間対応の事業所では夜勤があり、利用者の身体介助は重労働であることも影響しているためでしょう。ただし、介護人材確保に向けて処遇改善などの施策が打たれたことにより、徐々に介護職の給与は上がってきています。
政府がおこなう2025年問題への対策とは
2025年問題が危惧されるなか、政府は介護職の人材不足を解消するために各種対策をとっているようです。
給与アップや働きやすい環境づくりといった待遇面や資格取得などの人材育成、年齢や国籍を超えた人材確保などの対策についてご紹介します。
1. 介護職員の処遇改善で介護職の給料アップ
介護人材の給与を上げるなど、待遇をよくして人材を確保しようという処遇改善加算の取り組みは2009年からはじまっています。
介護職員全員の待遇改善に加え、経験や技能のある職員や勤続年数が長い職員に対してはさらに給与を加算していて、今後も引き続きおこなわれていく見込みです。給料がアップすることで職員のモチベーションも高くなり、介護の質も上がっていくことが期待されます。
2. 介護人材の育成・助成金や補助金の拡充
介護の人材育成、キャリアアップのための資格取得助成金や補助金が人材を育成する取り組みも拡充されています。
たとえば、介護職の入門的研修である「介護職員初任者研修」がその一例です。受講料の20%を補助するハローワークの教育訓練給付制度のほかに、受講料の60%を補助するひとり親家庭対象の自立支援教育訓練給付金制度、全額の補助もある介護職員初任者研修資格取得支援事業などがあります。
3. 離職者を減らす取り組み
介護のスキルを持っている介護職員には、身内の介護を期待されてしまうことが少なくありません。身内の介護を担わなければならなくなった際に、介護者が仕事を辞めなくてもいいように時間外労働や深夜労働の制限などにより、介護職員が働き続けやすい環境作りにも取り組んでいます。
この「介護離職ゼロ」の取り組みは、子育てをしながらでも仕事を続けやすい環境づくりにも役立っているようです。
4. 介護職へのイメージアップ戦略
介護は実際に関わってみないと魅力が伝わりにくく、たいへんなイメージだけが膨らんでしまいます。また、従来の介護職のイメージを打破するためには、社会全体の意識改革が必要です。
厚生労働省は、介護に対するイメージを向上させるために「介護のしごと魅力発信等事業」として、ターゲットを絞った情報発信や体験型イベントの開催、理解促進事業などにも力を入れています。
5. 中高年の人材の掘り起こし
少子高齢化のなかで、介護職に就く人材を増やすためには、中高年へのアプローチも欠かせません。介護未経験の中高年の介護に対するハードルを下げるために、中高年への介護に関する研修や職場体験を設定するなどして、働く意欲のある中高年者の掘り起こしをしています。
また、中高年が介護の職場で働きやすくするために、介護業務の切り出しや介護職員の機能分化をおこなうことも奨励しているようです。
6. 外国人の介護人材の確保
介護人材として外国人に期待する動きもあり、外国人労働者の在留資格に「介護」が創設されました。介護職を目指す外国人人材への就学資金を貸付け、一定の期間、日本で介護職に従事することで返済を免除するなども同時におこなわれています。
今後は、介護職のスキルがある外国人が長く日本に定着してもらえるようにするための生活支援や相談窓口システムの創設が検討しているようです。
7. 地域包括ケアシステムの推進
介護が必要になっても在宅での生活を維持できれば、介護が必要な人とその家族の選択の幅が広がるでしょう。2010年代から検討されてきた地域包括ケアシステムでは、要介護になっても住み慣れた地域での生活を選択できることを目的としています。
2025年問題に地域全体で向き合うために検討されてきた地域包括ケアシステムは、包括的に地域における介護の問題に取り組むための仕組みです。
2025年問題に向けて私たちそれぞれができること
2025年問題は介護が必要になる人が増えるという問題なので、自分が2025年にどうなっていたいかを考えて、それぞれが問題に意識を向け取り組むことも大切です。2025年問題に向けて、個人ができる対策について解説します。
被介護者とならないよう体づくりをする
「できることなら、いくつになっても身の回りのことを自分でできたり、生きがいを持って暮らしたりしていたい」と感じる人は多いのではないでしょうか。後期高齢者になっても元気に自立して暮らせるようにするには、若いうちから運動や食事などの生活習慣に気を配ることが大切です。
また、転倒などの事故予防のための対策を早めにおこなっておくことでも、介護が必要になる年齢を引き延ばすことが可能です。
将来かかるであろう医療費への備えをする
病気や事故では医療費がかかるだけでなく、生活でかかる経費が増えてしまったり、介護で必要な費用が発生したりするものです。予想外の出費があると、老後の生活設計が崩れてしまいます。
公的年金などの社会保障費だけでなく、もしものときの備えとして貯金を心がけるなど、老後の資金作りを検討することが大切です。
待ち受ける2035・2040年問題
人口動態や昨今の出生率みても、日本の少子高齢化が改善される見込みは当面ないといってもよい状態です。
実は、2025年問題のあとにも、団塊の世代が多くの人が介護を必要とする85歳を迎える2035問題があり、さらに2040年問題が続きます。
2035年は後期高齢者が85歳以上を迎える
2035年は2025年に75歳以上の後期高齢者となった団塊の世代が、85歳以上の年齢になる年です。85歳にもなると心身の衰えが顕著になりますので、2025年よりもさらに介護を必要とする人が増えることが予想されるでしょう。
また、2025年の段階では、パート勤務や地域のボランティアとして介護を支えていた人が介護される側になる年でもあります。
2040年は労働人口が大幅に減少する
2025年から15年経った2040年には、団塊の世代の次に人口ボリュームの多い団塊ジュニアが定年退職を迎えます。90歳を迎えた団塊の世代のほとんどが、なんらかの介助が必要になるなかで労働人口が大幅に減少してしまうからです。
2040年は、介護を必要とする人に対して介護職として働ける労働人口が圧倒的に少なくなる年ということになります。
迫りくる2025年問題の解決には介護職の人材確保が必須!それぞれができることから取り組もう
迫りくる2025年問題を乗り越えるためには、行政の取り組みだけを期待するのではなくそれぞれができることに取り組むことが大切です。2025年問題への取り組みで築き上げたことが、その後の社会問題の解決の糸口になるかもしれません。
介護職人材確保のため、今後介護職員の待遇はさらによくなる可能性もありますので、介護の仕事やキャリアアップについて調べてみてはいかがでしょうか。
引用元
厚生労働省:介護人材確保に向けた取り組み
厚生労働省:令和3年度介護従事者処遇状況等調査結果
厚生労働省:処遇改善に係る加算全体のイメージ
厚生労働省:令和3年度以前の介護のしごと魅力発信等事業の取り組み及び平成30年度介護職のイメージ刷新等による人材確保対策強化事業の取組内容について
厚生労働省:介護人材の確保について
厚生労働省:地域包括ケアシステム