長寿都市・長野でNPO法人を設立し地域の健康を支える!【フリーインストラクター・小林美穂さん】#1
地方でヘルスケア事業に携わっている方に、集客や売り上げアップのための取り組みについてインタビューする本企画。今回は長野県松本市を拠点に活動しているインストラクター、小林美穂さんにお話をお聞きしました。
前編では、小林さんのこれまでの活動と、インストラクターをする上で大切にしていることを教えていただきます。
お話を伺ったのは…
NPO法人CFM実行委員会 代表 小林美穂さん
フリーのインストラクターとして、大手スポーツクラブ数社のインストラクター兼アドバイザー、松本市熟年体育大学にてエアロビクス・アクアビクス講師、キッズダンスカンパニー&ダンスラボラトリーにてダンス講師などを28年務める。2013年、NPO法人CFM実行委員会を立ち上げ、地域住民の健康づくり事業や指導者育成にも携わる。
行政からの仕事に応え続け、広がった仕事の幅と仲間の輪
――長野県松本市でインストラクター活動をしている理由と、これまでの活動について教えてください。
松本市は私の居住地なので、インストラクターとしての活動もここでスタートしたんです。活動当初からフリーランス契約で、近隣のスポーツクラブ3社を併行しながら経験を積み、アドバイザーという役職にも就かせていただきました。
また、活動をしていくなかで行政からお話をいただき、地域の方々の健康づくりに関するイベントや講演なども行うようになり、その流れでNPO法人CFM実行委員会を立ち上げ、代表兼理事長としても活動しています。
――小林さんの活動を拝見すると、行政と連携した活動が多いように感じました。
そういった活動のきっかけと、お仕事が長年継続している秘訣は?
スポーツクラブでの勤務をいくつか併行していた駆け出しのころから、市の体育館などに出入りする際は、いろんな課の方に挨拶するようにしていたんです。ほんの些細なコミュニケーションなんですが、そこから人伝にいろいろと声がかかるようになりましたね。それからは、とにかく「なんとかする」ことを続けています(笑)。
――「なんとかする」とは?
何か依頼されたら断わらず、自分ができなければ人を探してでも協力する。それを続けたことで、「小林さんに頼めばなんとかなる」と思ってくださったんじゃないでしょうか。
講師の仲間を紹介していくなかで、ますます行政との絆が深くなり、大きなイベントを実施する際にも声がかかるようになりました。
――フリーランスとは思えないくらい、同業者との連携があるんですね。
NPO法人CFM実行委員会も同業者が集まったかたちですが、活動のきっかけは?
最初は、ホスピタリティが高く優秀な講師陣が集まり、東日本大震災の被災地域で支援イベントなどを行っていたんです。しばらくの間は自己負担で運営していましたが、活動を続けていくために、資金や賛同してくれる仲間が必要になりました。そこで組織を作ることが大切だと考え、NPO法人を立ち上げることにしたんです。
理事を務める5名からスタートしたCFM実行委員会も、現在では28名の講師陣が参加してくれています。そして、その1/3がフリーランスです。社会貢献を継続していくには、活動に参加する側に「ある程度安定した収入がある」という安心感も必要。そのために講師やトレーナーの活躍の場を確保・開拓していくのも、理事としての仕事のひとつです。
大切なのは、横のつながりと異業種との交流
――小林さんの活動は、周りの同業者も大切にされていますね。
インストラクターとして活動するなかで、「横のつながり」と「異業種との交流」は、とても大切にしています。
個で活動しているトレーナーや講師がつながれば助け合えますよね。何かあって仕事に出られないことがあっても誰かが代われるし、みんなでタッグを組んでイベントに取り組めば情報量が増える。そして仕事も紹介し合えるし、活動の幅も増やせます。
CFM実行委員会の考え方としても、委員会から紹介した仕事先から直接の依頼があれば、どんどんして欲しいし、その場で自分の名刺を配ってくれてもいいと思っています。そうして広がったつながりから、委員会の活動に返ってくる恩恵もありますから。
――異業種との交流を大切にされるのは何故ですか?
同業界内だけでなく異業種とも交流することで、視野が広がります。この業界で働いているのは運動好きだらけですが、そんな人ばかりではないし、むしろ運動が苦手な人のほうが多いかもしれません。自分が考えている当たり前のことを、違う視点で考えて発展できるよう、常に上書きしていきたいし、周りの仲間にもそうして欲しいと思っています。
――異業種の方々とはどんなところで交流を持っていますか?
飲み会が好きなので(笑)、以前はよくそういった場で知り合った方たちから紹介がつながる…ということも多かったですね。運動とは関係のないイベントや、中小企業の社長さんが集まる勉強会、交流会などにも参加していました。
本当に、ちょっと顔を出すだけでも違うと思います。視野を広げるだけでなく営業活動にもなりますし、いろんなことが後々に恩恵が返ってきますよね。「動けば変わる」とすごく感じます。
どんどん営業して、アウトプットの場を自分で作っていく
――なかなか営業活動に踏み出せないという個人の方も多いですが…。
「話が来るのを待っている」というのは、フリーで仕事が増えない理由のひとつですよね。私はCFM実行委員会で頻繁に営業するのですが、やっぱり営業は「数」だなと思います。営業先の相手に対してどういう企画書を作るのか、どう売り込むのか、実践して学ぶと上達が早いです。
――他に小林さんがトレーナー活動のなかで大切にしていることは?
インプットばかりでなく、アウトプットすることに勇気を持つことが大切だと思います。インプットばかりして、アウトプットをしていない方は多いです。資格を取ったきりで活用しなくては意味がありません。
取得した資格をいかすアウトプットの場がなければ、まずはいろんなところに営業して、小さな講演会を開くのがおすすめです。地域の人たちを集めて、講師として実際にやってみる。
その場が決まってしまえば準備するしかないし、アウトプットするしかないんです(笑)。そうして自分で自分を追い込んでいけば、だんだん講師としてのスキルも上がるし、新しい依頼がくるようにもなります。
CFM実行委員会では自分でアウトプットの場を作るのが難しい方のために、理事たちが代わりに営業を行うこともありますし、講演会までのサポートもしています。アウトプットの大切さを知って欲しいし、成功体験を持って成長して欲しいんですよね。
地方でヘルスケアに関わる活動をするうえで大切なこと3か条
松本市を拠点に幅広く活動している小林さんに、地方でヘルスケアのお仕事をするときに大切なことを教えていただきました。
1.自治体とは常に情報共有できるようにしておく
2.異業種との関わりで視野と活動の幅を広げる
3.場所にこだわらない(地方ならではの不便さがある中の環境づくり)
次回後編では、地域での集客や売上をアップするための取り組み、地方でトレーナーを目指す方へのアドバイスをお聞きします。
取材・文/山本二季