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特集・コラム 2023-07-21

作業療法士が公務員になるには?働く場所やメリット・デメリットもあわせて紹介

作業療法士の多くは、民間の医療機関や福祉施設などで働いており、心身の障害を抱える人に作業療法をおこなっています。

それ以外に、公務員として公立病院で患者にリハビリをおこなったり、行政機関でまったく違った働き方をすることも可能です。

この記事では、公務員として作業療法士が働く場所や仕事内容、民間施設と比較したメリットとデメリットなどをお伝えします。

公務員作業療法士になる方法|募集人数は少ない

公務員として作業療法士になるには、作業療法士の資格を取得するだけでなく、各自治体の公務員試験に合格する必要があります。募集人数が少ないため、採用情報はこまめにチェックしましょう。

各自治体の公務員試験に合格する|通常の公務員試験とは異なる

各自治体が運営する病院や施設、行政機関などが決める試験に合格すれば、公務員作業療法士になることができます。通常の公務員試験とは違い、試験日や試験内容は希望先によって設定されているのが特徴です。

受験できる年齢や試験内容は自治体によってさまざま|教養試験・適性検査・小論文・面接など

受験できる年齢や試験内容は、自治体・病院・施設によってさまざまです。年齢制限がないところもあれば、年齢の下限・上限が決められているところも。

試験内容は、教養試験・適性検査・小論文・面接などが一般的です。なかには、一次試験がWebテストというところもあります。

受験できる年齢や試験内容、試験科目は、事前によく確認してから対策をおこないましょう。

公務員作業療法士が働く場所と仕事内容

公務員として作業療法士が働く場所は、公立病院・行政機関・就労支援施設・特別支援学校・総合福祉センター・療育センターなどがあります。働く場所ごとに、仕事内容について次項で見ていきましょう。

公立病院|県立病院や市立病院

公立病院とは、都道府県や市町村などが運営する病院や医療機関です。規模が大きく、診療科目の多い総合病院をはじめ、小児・救急・災害などの特殊部門を扱う医療機関や、民間医療機関では対応が難しい高度・先進医療を提供する医療施設を運営しています。

また、山間地や離島などでの医療提供を果たすのも公立病院の大切な役割です。

公立病院の仕事内容

公立病院と民間病院の仕事内容はほぼ同じです。一般的に、総合病院など規模の大きい病院では、急性期・亜急性期患者のリハビリを任されます。

脳外科や整形外科などさまざまな症例・疾患に携わることができるため、作業療法士としてのスキルを磨くことができるでしょう。

行政機関

行政機関である市役所などのおもな配属先は、介護福祉課や障害福祉課など福祉にかかわる部署です。

市役所の仕事内容

地域住民の福祉に関する相談対応・福祉制度の案内・行政手続きなどをおこなう窓口業務を担当します。ほかにも、介護予防の企画や福祉に関する事業提案など、作業療法士の知識が活かされる仕事です。

必要に応じて、住民と医療施設をつなぐ橋渡し役として、間を取り持つこともあります。

就労支援施設|職業訓練所や公共職業安定所など

障がい者向けの職業訓練施設には、都道府県や市町村が管轄する障害者職業能力開発校や地域障害者職業センターなどがあります。また公共職業安定所も、障害のある人の就職活動支援をしています。

職業訓練所や就労支援施設の仕事内容

就労支援施設では、就労能力の評価・職業訓練・求人紹介・職業指導などをおこなうのが作業療法士の仕事です。

また、障がい者を雇用する企業や施設に対して、障害を理解してもらう働きかけや、就労を継続するための支援などもおこないます。

教育機関|特別支援学校

教員養成施設で学んでいない人でも、教員資格認定試験に合格することで教諭免許状を取得できる制度があります。特別支援学校では、特別支援学校(自立活動)教員資格認定試験に合格すれば、自立活動の専門教諭として働くことが可能です。

しかし、令和6年度以降は特別支援学校(自立活動)教員資格認定試験が当面実施されないことが決まりました。作業療法士など専門性を持つ人が、円滑に入職できるようにするためです。今後は、特別免許状の活用を促進するとしています。

そして、作業療法士のなかには特別非常勤講師として働いている人も。日本ではまだ教育機関で働く作業療法士は少ないですが、今後活躍が期待される領域です。

特別支援学校での仕事内容

特別支援学校では、児童や教員の相談をもとに、分析・原因追求・改善策の提案をおこないます。

たとえば、椅子に座った姿勢を保つことが難しい児童には、すべり止めマットを敷いて、姿勢を保つサポートをするという改善策の提案などがあります。その後の児童の変化を見ながら、課題の見直しも必要です。

ほかにも、教員に対し自立活動指導への助言や指導、環境整備にも努めます。学習環境が整っているかチェックするのは、作業療法士の視点が必要です。児童が円滑に学習できるよう、校内を巡回しひとりひとりの状況に合った工夫を考えます。

その他:福祉センターや療育センター

さまざまな福祉が提供される場となる福祉センターは、地域によって全く異なるサービスが提供されているのが特徴です。提供するサービスによっては、作業療法士が重宝されています。

また、障害や発達に遅れのある子どもを対象とした療育センターも作業療法士を必要としています。

福祉センター・療育センターなどの仕事内容

福祉センターはおもに、身体・知的障害をもつ人や高齢者などの施設利用者、療育センターは障害のある児童や発達に遅れのある子どもが対象です。

福祉センターのなかには、日常生活のなかでできることの幅を広げるためのリハビリや、個別プログラムを提供しているところがあります。作業療法士は、日常生活動作・家事動作・趣味活動などの訓練を通じて支援する役割です。

療育センターでは、食事・着替え・遊びなど生活動作の向上を目指して作業療法をおこないます。目的に合った道具を工夫したり、ひとりひとりに合ったイスや福祉用具を調整したりと、適切な環境を整えるのも仕事の1つです。

公務員作業療法士のメリット|民間との違いは?

民間の医療機関や福祉施設で働く場合と、公務員として働く場合ではどのような違いがあるのでしょうか?ここからは、公務員作業療法士として働くメリットを紹介します。

安定した雇用・収入・休日・福利厚生

公務員として働くメリットは、雇用や収入が安定していることです。終身雇用かつ年功序列制であるため、基本的には定年まで働くことができます。給与が減ることもほとんどなく、ボーナスは年に2回支給されるため、一定の収入が得られるでしょう。

また、土日祝日に加えてお盆や年末年始の休暇もあることがほとんど。有給休暇が取得しやすいことも特徴です。病院によっては交代勤務もありますが、別日に休みが確保されています。

さらに、住宅手当や時間外手当などの各種手当や、産休・育休制度といった福利厚生も充実していることも魅力です。

一方、民間の医療機関や福祉施設は、経営状況によって雇用や収入が左右されます。業績が悪化すると、リストラの可能性や給与が下がる恐れもあり、倒産してしまうリスクもあります。休日数や福利厚生を見ても、公務員ほど整っているところは少ないのではないでしょうか。

民間とは違った経験が積める可能性もある

公立病院は診療科目が多く、担当科目が割り振られていないこともあるため、さまざまな症例に携われる可能性があります。とくに、特殊な部門や高度・先進医療を担う病院は、民間病院では対応できない疾患に携わるため、多くの経験が得られるでしょう。

行政機関であれば、福祉に関する窓口業務や特別講師として教育に携わるなど、民間企業では得られない経験を積むことができます。

公務員作業療法士のデメリット

公務員で働くメリットがある一方で、公務員ならではのデメリットもあります。

能力給ではなく年功序列制

公務員の収入は、職務によって俸給表が決められています。毎月の基本給だけでなく、昇給する場合も規定されており、年に一度、勤務年数に応じて給与が上がる年功序列制です。

長く働くほど給与は上がりますが、頑張り次第で大きな昇格や昇給が目指せるというものではありません。そのため、民間のように能力や実績、スキルなどを評価してもらう機会はあまりないという点でデメリットといえるでしょう。

副業は認められていない

民間の医療機関や福祉施設では、ダブルワークや副業を認めている施設も増えています。しかし公務員は、営利目的の副業が法律によって制限されているため、ほかの仕事で報酬を得ることが禁止されています。

ダブルワークや副業でより多くの収入を得たい人にとってはデメリットといえます。

なお、報酬を得るような副業をおこなった場合、懲戒処分の対象となり、戒告や減給、停職または免職といった罰則を受けなければなりません。

公務員作業療法士の平均年収

公務員作業療法士の給与は、人事院規則で「医療職俸給表(二)」に区分され、総務省の職種別職員給与では「薬剤師・医療技術職」に表記されています。

令和3年の総務省のデータをもとに、公務員作業療法士の平均年収をみてみましょう。

公務員作業療法士の平均年収は約510万円|作業療法士全体の平均年収は約430万

厚生労働省によると、令和4年の作業療法士全体の平均年収は約430万円でした。

総務省の「令和3年職種別職員の平均給与額」によると、「薬剤師・医療技術職」の平均基本給は約30万円です。ボーナスは、期末手当と勤勉手当に該当し、その額は約150万円。

ここでは各種手当を含みませんが、年収となる1年間の基本給とボーナスの合計は、約510万円(約30万円×12カ月+約150万円)です。

なお、このデータには薬剤師や理学療法士、歯科衛生士や栄養士なども含まれています。給与額だけで見ると作業療法士全体の平均年収よりは高くなっていますが、一概に公務員作業療法士の年収が高いとは言いきれない点には注意が必要です。

また、年齢や学歴、地域によって年収に大きな違いがあるため、詳しくは住んでいる地域のデータを確認しましょう。

引用元
厚生労働省 job tag(職業情報提供サイト(日本版O-NET)):作業療法士(OT) – 職業詳細
総務省:令和3年 地方公務員給与の実態 第5表 職種別職員の平均給与額

公務員作業療法士は安定した働き方をしたい人におすすめ|採用情報はこまめにチェックを!

公務員作業療法士は、雇用や給与が経営状況に左右されることがないため、安定した働き方をしたい人におすすめです。

公立病院は、民間の医療機関よりもさまざまな疾患に携わる機会が多いため、幅広い分野の経験を積むことができます。行政機関では、窓口業務をしたり政策に携わったりと、民間とは全く違った仕事ができることも魅力です。

ただし、募集人数は民間よりもはるかに少ないため、採用情報はこまめにチェックしてくださいね。

引用元
e-GOV法令検索:地方公務員法 第29条および第38条
e-GOV法令検索:人事院規則九―二(俸給表の適用範囲)
総務省:令和3年 地方公務員給与の実態 第5表 職種別職員の平均給与額
厚生労働省 job tag(職業情報提供サイト(日本版O-NET)):作業療法士(OT) – 職業詳細

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