作業療法士になるためには?国家試験の概要や学校選びのポイントについて解説
作業療法士は、怪我や病気によって心身に障害を抱えている対象者の、日常的な基本動作の回復や社会適応をサポートする仕事です。
障害を抱えている方のサポートをする仕事をしたいという方の中には、「作業療法士になることを考えているけど、何をすればいいのかわからない」という人もいるでしょう。
今回は作業療法士の国家試験の概要や受験資格、仕事内容について確認して、作業療法士になるまでの具体的な学習プランについて考えてみましょう。
作業療法士の資格|国家試験の難易度は?概要を紹介
作業療法士になるためには、作業療法士国家試験に合格する必要があります。試験の概要や試験の難易度を把握して、試験を受験するにあたってのイメージを作りましょう。
試験の概要
作業療法士国家試験は、筆記や口述試験及び実技で受験する試験です。ただし、重度視力障害者以外は、全員が筆記試験で受験します。令和6年の試験の出題範囲は下記のとおりです。
見出し | 大項目 |
Ⅰ.人体の構造と機能及び心身の発達 | 1.解剖学
2.生理学 3.運動学 4.人間発達学 |
Ⅱ.疾病と障害の成り立ち及び
回復過程の促進 |
1.医学概論
2.病理学概論 3.臨床医学総論 4.リハビリテーション医学 5.臨床心理学 6.精神障害と臨床医学 7.骨関節障害と臨床医学 8.慢性疼痛と臨床医学 9.中枢神経の障害と臨床医学 10.末梢神経・筋の障害と臨床医学 11.小児の障害と臨床医学 12.内部障害と臨床医学 13.がん関連障害と臨床医学 14.老年期障害と臨床医学 15.その他の障害と臨床医学 |
Ⅲ.保健医療福祉とリハビリテーションの理念 | 1.保健医療福祉
2.リハビリテーション概論 |
Ⅳ.基礎作業療法学 | 1.作業療法の基本
2.作業療法の範囲 3.作業療法学の基礎 |
Ⅴ.作業療法管理学 | 1.職業倫理
2.職場管理 3.教育 4.法規・関連制度 |
Ⅵ.作業療法評価学 | 1.目的
2.時期と手順 3.心身機能、身体構造 4.基本動作 5.活動、参加 6.背景因子等 7.義肢、装具、支援機器、自助具等 8.疾患、障害 9.保健、予防 |
Ⅶ.作業療法治療学 | 1.基礎
2.心身機能、身体構造 3.基本動作 4.活動、参加 5.背景因子等 6.義肢、装具、支援機器、自助具等 7.疾患、障害 8.保健、予防 |
Ⅷ.地域作業療法学 | 1.基礎
2.評価と支援 3.安全管理 |
Ⅸ.臨床実習 | 1.実習前準備
2.医療提供施設実習実施内容 3.地域実習実施内容 4.実習後評価 |
引用元:厚生労働省:理学療法士作業療法士国家試験出題範囲基準 令和6年度版
なお、作業療法士国家試験を受験するためには、受験要件を満たす必要があります。具体的な受験要件については、後ほど紹介します。
試験の難易度
作業療法士国家試験の難易度はそこまで高くありません。参考までに直近3年間の受験者数と合格率の推移を見てみましょう。
引用元
厚生労働省:第58回理学療法士国家試験及び第58回作業療法士国家試験の合格発表について
厚生労働省:第57回理学療法士国家試験及び第57回作業療法士国家試験の合格発表について
厚生労働省:第56回理学療法士国家試験及び第56回作業療法士国家試験の合格発表について
このように合格率は8割前後で推移しており、きちんと準備しておけば、合格を目指しやすい試験だといえます。
作業療法士になるには?最短ルートは3年間の養成課程
作業療法士になるためには、国に指定された養成校で3年間、もしくは4年間のカリキュラムを修了して、作業療法士に求められる基本的な知識や技能を獲得する必要があります。
作業療法士の養成校で学ぶ内容について確認しましょう。
作業療法士のカリキュラムで学ぶこと
作業療法士の養成校では、運動学や機能解剖学を学んで身体の機能を把握したり、精神医学を学んで、リハビリ期の患者との付き合い方について学んだりします。
座学で理論を学ぶだけでなく、実習で人間の体に対して作業療法を施したり、患者役を体験したりすることで、より患者に寄り添ったサービスを施せるように理解を深めていきます。
医学・心理学・社会学など、多岐にわたった実践的な学びの機会を得られるのが特徴です。
作業療法士の就職先
作業療法士の就職先は、医療・介護・教育・研究機関など多岐に渡ります。具体的には、下記のような就職先の選択肢があるのが特徴です。
・医療:一般病院、クリニックなど
・福祉:児童福祉施設、児童発達支援センターなど
・介護:介護老人保険施設、訪問リハビリ施設など
・労働:ハローワーク、就業・生活支援センターなど
・保険:保健所、地域包括支援センターなど
・教育:特別支援学校、教育委員会など
・司法:刑務所、保護観察所など
引用元
一般社団法人 日本作業療法士協会:作業療法士になるには
医療や福祉、介護分野以外にも、幅広い就職先があることがわかります。
作業療法士の仕事内容とは
作業療法士の仕事は、心身に障害を抱えていて、サポートを必要とする対象者に対して基本的な動作を獲得するサポートや精神的なケアをすることです。
作業療法士の詳しい仕事内容を知って、作業療法士として働く際に、自分ならどのような働き方ができるのかを考えてみましょう。
日常生活における運動機能の維持・改善をサポートする
作業療法士の仕事は、怪我や病気を負って日常生活を送るのが困難な対象者に対して、日常的な動作の獲得に向けた運動サポートや精神的なケアを行います。作業療法士が対象者をサポートする能力は、下記の3つに分類される点が特徴です。
・基本的動作能力:運動や感覚、知覚、認知などの心身の機能
・応用的動作能力:食事やトイレ、家事などの日常的な活動
・社会的適応能力:地域活動への参加、就学・就労
引用元
一般社団法人 日本作業療法士協会:作業療法士ってどんな仕事?
このように、基本的な動作から自立的な生活を送るための応用動作の獲得、就学や就業、地域コミュニティへの参加まで含めた、社会適応に向けた支援も仕事に含まれます。
理学療法士との違い
理学療法士との大きな違いは、作業療法士は動作の回復から社会復帰までの総合サポートを行なうのに対して、理学療法士は物理療法・運動療法で、基本的な動作の獲得を主眼としたリハビリサポートを行なう点です。
日常的な動作のリハビリをサポートをする点は共通していますが、作業療法士は就学・就業支援など、リハビリ後の社会適応に向けたサポートをする点が特徴だといえます。
作業療法士を目指すのにおすすめな学校選びのポイント
作業療法士を目指すための学校には、大学や短大、専門学校があります。学校ごとの特徴や選ぶべきポイントを知って、間違いのないスクール選びをしてみましょう。
1.学校の種類はどこがいいか
作業療法士になるための学校には、大学・短大・専門学校があります。学校の種類ごとで、カリキュラムの特徴は下記のようにまとめられます。
・大学(4年制):医学・介護だけでなく、語学や科学分野の一般教養も学べる
・短大(3年制):短期間で作業療法士になるために必要な知識を学べる
・専門学校(3・4年制):臨床実習が多く、実践力を養える
どの種類の学校に通うかでカリキュラムは異なるので、よく比較検討することが大切です。
2.実技や実習が充実した学校かどうか
学校選びのポイントとして、実技や実習が充実した学校かどうかを見極めることはとても大切です。いくら座学でたくさん理論を学んでも、その知識を活かして、実際の現場で活躍できるスキルを身につけられなければ、就職してから苦労してしまう可能性も。
実技や実習が充実したカリキュラムの学校を選ぶようにしましょう。
3.国家試験の合格率や就職実績はどうか
作業療法士になるためには、国家試験に合格する必要があります。そのため、まずは国家試験の合格率やサポート体制を確認して、より自分が合格を目指しやすい学校を選ぶことがポイントです。
また、合格後の就職実績があるかどうかを確認することも大切です。国家試験に合格しやすく、希望する職場に就職実績のある学校選びをしてみましょう。
国家試験に合格するためのルートを知って、作業療法士としての活躍を目指そう!
今回は、作業療法士になるための国家試験や受験要件、仕事内容や失敗しにくい学校選びの方法について紹介しました。
作業療法士になるためには、作業療法士国家試験を受験する必要があり、受験するためには指定された養成校で3年以上のカリキュラムを修了しなければいけません。
作業療法士国家試験の合格率は8割前後で高めですが、国家試験に合格して、作業療法士として働くなら、合格・就職実績が豊富な学校を選ぶのがおすすめです。
国家試験合格に向けた学習プランと合格後の働き方について確認して、作業療法士としての活躍を目指していきましょう。
引用元
jobtag:作業療法士(OT)
一般社団法人 日本作業療法士協会:作業療法士になるには
厚生労働省:理学療法士作業療法士国家試験出題範囲基準 令和6年度版
厚生労働省:資格・試験情報:作業療法士国家試験の施行
厚生労働省:第58回理学療法士国家試験及び第58回作業療法士国家試験の合格発表について
厚生労働省:第57回理学療法士国家試験及び第57回作業療法士国家試験の合格発表について
厚生労働省:第56回理学療法士国家試験及び第56回作業療法士国家試験の合格発表について
一般社団法人 日本作業療法士協会:作業療法士ってどんな仕事?