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特集・コラム 2023-09-01

作業療法士になるために必要な臨床実習とは?2020年度入学から改定されたカリキュラムもあわせて紹介

作業療法士を目指す人なら、誰しもが経験する臨床実習。臨床実習は、養成施設のカリキュラムで約4分の1を占めるほど大切な科目です。

この記事では、作業療法士になるために必要な臨床実習について紹介します。2020年度から適用されたカリキュラムと、臨床実習前にしておくべきこともあわせてお伝えしますので、これから作業療法士を目指す方は参考にしてください。

作業療法士になるために必要な臨床実習時間数は800時間以上|実習を行う目的は?

作業療法士の養成校でおこなわれる臨床実習の必要時間数は、800時間以上です。臨床実習は、臨床実習指導者の指導・監督のもと校外の医療機関などでおこなわれ、開始時期やカリキュラムの詳細は養成校によって違いがあります。

臨床実習の目的は次の3つです。
①作業療法を受ける患者や利用者の全体像の把握
②作業療法のプラン・治療・援助などを通じた知識・技術・マナーの習得
③専門職としての意識の向上

2020年入学生から適用されたカリキュラム|質の高い人材育成が目的

2020年4月から、今後も需要が拡大する作業療法士の質を高める目的で、作業療法士養成施設におけるカリキュラムが改定されました。

改定されたのは次の4つです。
・臨床実習の必要時間数
・総単位数
・最低履修時間
・専任教員の基準

それぞれ詳しく見てみましょう。

臨床実習1単位あたり40時間以上45時間以内

改定前の臨床実習の必要時間数は、1単位当たり45時間。改定後の臨床実習時間は、1単位あたり40時間以上必要とされ、臨床実習以外で必要な学習などがある場合には、その時間も含め45時間以内の履修時間で設定するよう決められました。

臨床実習時間以外の学習を考慮して、変更されています。

臨床実習時間の3分の2以上は医療提供施設|2分の1以上は病院又は診療所

臨床実習施設について、改定前は「臨床実習時間の3分の2以上は病院または診療所」という規定でしたが、改定後はそれ以外の施設でもおこなえるよう、養成施設に努力規定が設けられています。

臨床実習施設の規定も、次のように改定されました。
・臨床実習時間の3分の2以上は医療提供施設
・医療提供施設での実習のうち、2分の1以上は病院または診療所
・訪問リハビリテーションまたは通所リハビリテーションに関する実習を1単位以上

総単位数は101単位以上|そのうち臨床実習単位数は22単位

改定前は、養成施設を卒業するまでに必要な総単位数は93単位以上、臨床実習単位数は18単位でした。改定後は、総単位数101単位以上・臨床実習単位数22単位となり、カリキュラムには作業療法管理学や画像評価が新たに追加されています。

最低履修時間は3,150時間以上

改定前は最低履修時間数がなく、養成施設によって履修時間にばらつきがあったため、3,150時間以上に統一されました。

あわせて、独自のカリキュラムを、各養成施設の特色を出すため追加することが
望ましいとされています。

専任教員は5年以上業務に従事+専任教員養成講習会を修了した者

2つの要件のうちいずれかを満たしていることで、専任教員になることができます。

・作業療法士として5年以上の実務経験+専任教員養成講習会を修了
・大学や大学院で教育科目を4単位以上履修して卒業し、5年または3年以上の実務経験

また、5年以上の実務経験があり、臨床実習指導者講習会などの指定の講習会を修了することで臨床実習指導者になることができます。

引用元
厚生労働省:理学療法士・作業療法士学校養成施設カリキュラム等改正概要
一般社団法人 日本作業療法士協会:④【新旧対照表】PTOTガイドライン

臨床実習はおもに4種類|見学実習・評価実習・総合臨床実習・地域作業療法実習

臨床実習は、おもに以下の4つが実施されます。
・見学実習
・評価実習
・総合実習
・地域作業療法実習

それぞれの臨床実習の目的と内容について見てみましょう。なお、養成施設によっては、この4つ以外にほかの臨床実習をおこなうこともあります。

見学実習|学習内容がどのように現場で活かされるのかを知る

見学実習は1番最初の臨床実習です。医療機関や施設などに出向き、実際に作業療法士が働く現場の見学と体験をおこないます。

学習した作業療法士の役割や他の職種の役割が、現場でどのように活かされるのかを理解することなどが目的です。

作業療法士の仕事の現場を見学する以外に、作業療法士としての振舞いや基本的なマナーを学ぶことができるため、次の臨床実習にも役立ちます。

評価実習|知識や技術を活かしてプランを作成する

評価実習では患者や利用者とかかわります。これまで学習した知識や技術を活用し、評価・プランの作成能力を習得することが目的です。

具体的には、患者や利用者に対し以下の臨床実習をおこないます。

<面接>生活状況や困りごとのヒアリング
<検査・測定>心身機能・認知機能・関節の可動域・麻痺・筋肉量などの検査・測定
<観察>動作観察
<情報収集>医師・看護師・その他の医療関係者から患者や利用者の情報を集める
<評価>問題や課題の把握・必要な支援・解決策を考えプランを作成

以上の取り組みを通して、患者や利用者との関わり方・課題の把握・解決策やプランを考える力を学ぶことが、評価実習の役割です。

患者や利用者によって症状が異なるため、ひとりひとりの課題を把握したり解決策を導き出したりする方法を習得することが求められます。

総合実習|プラン作成から実践までの集大成

総合実習は、学習した知識や技術をすべて活用し、プラン作成から実践までおこなう臨床実習の集大成です。

評価実習で実施したプラン作成から、実践・経過観察・効果測定までをおこなったうえで、プランの問題点や再評価を検討します。実践を通して知識や技術を習得することや、効果を測定し改善点が洗い出せるようになることが目的です。

臨床実習後は、次のような振り返りをおこないレポートにまとめて提出します。
・患者や利用者の課題やニーズが正確に把握できていたか
・評価にあったプランが作成できていたか
・プランに沿った実践がおこなえたか
・実践を通して見つけた課題

地域作業療法実習|家庭やデイサービスの作業療法について学ぶ

地域作業療法実習は、地域に住む高齢者やデイサービス・訪問リハビリテーション利用者に対する作業療法について学びます。

入院患者とは違って自立支援型の作業療法をおこなうため、対象者が望む生活行為に近づけるような評価やアプローチ方法を学習することが目的です。

地域で生活している対象者やその家族、周囲の環境など幅広い視点を持ち、生活していくうえでの困りごとを把握し、評価・プランの作成をおこないます。

臨床実習スケジュール|養成施設によって異なる

ここからは、臨床実習スケジュールをお伝えします。臨床実習のスケジュールは養成施設が3年制か4年制かによって違いがあり、導入する独自の臨床実習の有無によっても実施期間などが異なるため、目安としてご覧ください。

1年次から4年次までのスケジュール

4年制の養成施設を例に、スケジュールや期間を表で紹介します。

臨床実習前にしておくべきこと

臨床実習は、病院や施設の協力があってこそ実施できるため、しっかりとした事前準備が必要です。

ここからは、臨床実習前にしておくべきこととして2つ紹介します。

予習|障害領域や専門用語など

臨床実習がおこなわれる施設に応じた予習をしておきましょう。

障害領域や急性期・回復期・維持期によって作業療法士の仕事には違いがあるため、どんな施設で誰を対象とするのか、事前に把握しておく必要があります。臨床実習先の施設のホームページなどを確認してもよいかもしれません。

養成施設で習った知識や技術の復習も大切です。たとえば、専門用語をそのまま伝えても患者は理解できません。分かりやすい言葉に変えたり、伝わりやすい表現に変えたりといった、応用力が試される場面があるため、理解を深めておく必要があります。

学習したことをしっかりと落とし込んで、臨床実習に臨みましょう。

社会人としてのマナーを身につける|言葉づかい・挨拶・時間管理

作業療法士はスタッフだけでなく、患者や利用者とその家族ともコミュニケーションが欠かせない仕事です。学生のうちから、社会人としてのマナーを身につけておきましょう。

目上の人に対するきちんとした言葉づかいや敬語は、就職後にも役立ちます。挨拶はもちろん、遅刻をしない時間管理も大切です。

患者や利用者、施設の方たちから学習する機会をもらっている自覚を持ち、謙虚な姿勢で臨みましょう。

臨床実習は1年次から始まるところが多い!目的を理解し臨床実習に備えよう

作業療法士の養成施設では800時間以上の臨床実習が実施され、1年次から始まるところも多くあります。作業療法士として必要な知識や技術の大半を、この臨床実習で実践として学んでいくといえるでしょう。

臨床実習はおもに4種類あり、年次によって実施内容や目的に違いがあります。病院やその他の施設の協力のもと学ぶ機会が得られているため、目的を理解したうえで事前準備をして臨みましょう。

引用元
一般社団法人 日本作業療法士協会:④【新旧対照表】PTOTガイドライン
一般社団法人 日本作業療法士協会:作業療法臨床実習指針 2018
一般社団法人 日本作業療法士協会:作業療法教育ガイドライン 2019 作業療法士養成教育モデル・コア・カリキュラム 2019
一般社団法人 日本作業療法士協会:作業療法臨床実習指針(2018) 作業療法臨床実習の手引き(2022)
厚生労働省:理学療法士・作業療法士学校養成施設カリキュラム等改正概要

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