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ヘルスケア 2023-10-05

大好きな音楽を通して利用者さんを笑顔にしたい【介護リレーインタビュー Vol.38/介護系インフルエンサー はたつんさん】#1

介護業界に携わる皆様のインタビューを通して、業界の魅力、多様な働き方をご紹介する本連載。

今回お話を伺ったのは、介護系インフルエンサーとして活動している、はたつんさん。現在も介護士として働きながら、現場のリアルな声を反映したYouTubeやTikTokなどで人気を集めています。

前編では、介護士になったきっかけや、利用者さんと向き合う際に心がけていることなどを伺います。

バンド仲間に誘われて、
生活のために始めた介護職

――介護士になろうと思ったきっかけは?

昔から音楽の道に進むのが夢で、音楽学校を卒業してバンド活動をしていたのですが、生活のためには働かなないといけなくて。バンド仲間が働いていたデイサービスで私も働くことにしたんです。

当時はもちろん無資格で、とりあえず……という感じだったのですが、続けていくうちにだんだん面白くなっていって、もっと知りたい、もっと勉強したいと思うようになり、ヘルパー2級、介護福祉士の資格を取りました。

――面白いと感じるようになったエピソードはありますか?

デイサービスだと、介護士がレクリエーションをするのですが、ある日私がその担当になったんです。その時は私の大好きな歌を使ったレクリエーションをしたのですが、普段寝ていて参加しない利用者さんや、スタッフの仲間もみんな輪になって楽しく歌って踊ってくれたんです。自分が大切にしている音楽を通して、こんなにも人を元気にすることができるんだと気づいたら嬉しくなって、介護の楽しさに目覚めました。

資格をとってからは技術に自信がついたり、話し方や共感の仕方もわかるようになってきて、ますます楽しくなりましたね。

――ちなみに取るのが大変だった資格はありますか?

ヘルパー2級(現在の介護職員初任者研修)は当時通うだけでよく、筆記試験などがなかったので「いろんなことが知れて楽しいな」という気持ちで勉強できたのですが、やはり国家資格である介護福祉士の勉強は大変でしたね。

正直、私は勉強が苦手なタイプなので、テキストを見ながらわからない単語を一つ一つ調べて、またテキストに戻って……というのに苦労しました。特に働きながらの勉強だったので、働いて、勉強して、また働いて、という感じで体力的にもキツかったです。

――働きながらだと大変ですよね。今もそのデイサービスで働かれているんですか?

今はインフルエンサーの活動が中心になっているので、夜間ケアを専門にした夜間専従で働いていますが、先ほどのデイサービスでは約10年間在籍しました。

お泊まり付きの小規模デイサービスだったのですが、送迎、入浴介助、排泄介助、レクリエーション、食事の準備と介助、記録が主な業務。基本的には全ての業務を全てのスタッフで行うのですが、「苦手なところは得意な人が補って助け合おう。適材適所でそれぞれのいいところを伸ばそう」という考え方の施設だったので、すごく働きやすかったです。

寝る間もなく活動していた時代は、
サウナと「納豆かけご飯」でストレス発散!

――当時の1日の流れはどんな感じでしたか?

朝は7時に起きて化粧&食事。送迎を担当していたので8時には出勤していました。夜は20時半ぐらいまで働いていたと思います。お泊まり付きではあったのですが、お泊まりしない人も延長システムがあったんです。17時〜18時に全員帰宅、ではなく、お食事を食べた後に帰る人もいて。

送迎は運転免許書を持っている人に限られるので、あまり担当できる人がおらず。となると必然的に私が担当することになるので、そういう意味では残業が多かったですね。

――お休みの日は?

勤務自体は週4日でしたが、当時からYouTube活動をしていたので、休みはほとんどYouTube撮影。実質休みはほとんどなく、たまに休みがとれたらひたすら寝ていました。

というのも、仕事の日も帰ってからバンド活動をしたり、YouTubeの編集をしたりしていたので、ほとんど睡眠時間が取れていなくて。2年ほど前に介護系TikToker、1年前に介護系YouTuberになったのを機に、今の夜間専従にシフトしたんです。

――ハードですね! ストレス解消法などはありますか?

サウナで無になることと、おいしいご飯を食べること。ご飯は、シンプルですが「納豆かけご飯」が大好きです(笑)。

利用者さん、そのご家族、一緒に働くスタッフ、
みんなを笑顔にできることが、介護職のやりがい

――利用者さんと向き合うときに大切にしていることはありますか?

3つあるのですが、一つ目はどんな方にも敬意を持って接すること。「介助=お世話する」というイメージがありますが、本来はその人らしく生きていくことをサポートすることなので、その方がこれまで生きてきた人生経験や思いを大切にしたいと思っています。どなたも人生の大先輩ですからね。

二つ目は安心できる場所を提供すること。みなさん、育ってきた環境も好きなものも嫌いなものも、人それぞれだと思うんです。一人一人が笑顔で過ごせるように相手の立場になって物事を考え、安心してもらえるように心がけています。

というのも、私が介護士をしている「東京」という土地柄か、住み慣れた田舎から娘さんや息子さんのもとに引っ越してきたという人がたくさんいるんです。そういう人の中には、「本当は石川県に帰りたい」「長野県に帰りたい」と思っている人も多い。もちろんみなさん納得されてますが、テレビなどで地元の映像が流れると「懐かしいわ、帰りたいわ」って。それは当然のことだと思います。

――そういう人にはどういうお声がけをされているんですか?

思い出話を聞くのも大切だと思うので、その時どういうことをしていたのか、どんな感情だったのかを深く語っていただきますね。

三つ目が、その人のできることを尊重すること。介助が必要とは言え、まだまだ一人でできることもたくさんあるはずです。できないことはもちろん私たちがサポートしますが、できることはご自身でやっていただき、自信を持っていただくことも大切だと思っています。

――たしかに、闇雲に手を貸すのも良くないですよね。介護の仕事をしていてやりがいを感じることは?

やっぱり「ありがとう、生きていてよかった」と言っていただいたり、笑顔になっていただいた時ですね。利用者さんだけでなく、そのご家族の方や一緒に働く職員も笑顔になってもらえるとより嬉しい! その笑顔のおかげで、この仕事を続けてこられたと思っています。誰かの人生のサポートをしているということにやりがいを感じますね。

苦手だったレクリエーションも、
一つの成功体験をきっかけに克服!

――逆に大変だったことや苦手なことはありますか?

大変なのは、声掛けややってほしいことに対して拒否されることですね。例えば、お泊まり中に「帰りたい」と言われた時。なんとか「今日はお泊まりですよ」と納得してもらうように努めますが、正直帰りたいという気持ちもわかる。心を鬼にして説明しますが、胸が痛みますね。

拒否といえば、水分・食事の拒否や入浴介助の拒否、トイレの拒否もあります。でも、どんな拒否も拒否をするにはそれなりの理由があるんですよね。とはいえ、私たちも業務に追われていると、ゆっくり寄り添う時間が取れない時もある。そういう時はすごく葛藤を感じます。

――はたつんさんの動画では、拒否された時の介護士さんの対応を、真面目系、怒る系、優しい系などタイプ別に紹介している動画がありますよね。はたつんさんはどのタイプなんですか?

利用者さんに合わせて変えています。感情で訴えた方がいい人もいれば、ノリと勢いで訴えた方がいい人もますから。時には心理戦だったり、2人がかりで泣き落とし作戦をすることもありますよ。今でも試行錯誤の毎日です。

とはいえ、どんな時でも利用者さんの味方でありたいと思っています。みなさん、お友達が亡くなったり、ご家族が亡くなったりしていく中、介護士は第二の人生の人間関係だと思うんです。だからこそ味方でいたい、寄り添いたい、と思いますが、やっぱり拒否されると辛いですね(苦笑)

あと、苦手なことといえば、今でこそ克服しましたが、昔はレクリエーションが苦手でした。

――それは意外です!

最初にお話しした音楽のレクリエーションで自信をつけるまでは、すごく苦手だったんです。先輩の真似をして体操のレクリエーションをした時、利用者さんに「間違ってるよ」と怒られたこともありますし、うまく説明ができず大失敗して、裏で泣いていたこともあります。でも、音楽のレクリエーションで成功体験を得られてから、体操も工作もボール遊びも、全部楽しいことなんだって思えるようになったんです。

なので今の苦手なものといえば……虫ですかね。たまに施設で虫が出ると、逆に利用者さんに助けてもらったりします。「なによ〜、虫なんて小さくて可愛いじゃない!」と言われますが、こればっかりは克服できず。立場逆転ですね(笑)。


後編では、介護系インフルエンサーとしての活動や、今後の目標などを伺います。

取材・文/児玉知子

 

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