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ヘルスケア 2023-10-06

視聴者の声を代弁して、介護職の未来を明るく元気に!【介護リレーインタビュー Vol.38/介護系インフルエンサー はたつんさん】#2

介護業界に携わる皆様のインタビューを通して、業界の魅力、多様な働き方をご紹介する本連載。

今回お話を伺ったのは、介護系インフルエンサーとして活動している、はたつんさん。現在も介護士として働きながら、現場のリアルな声を反映したYouTubeやTikTokなどで人気を集めています。

前編では、介護士になったきっかけや、利用者さんと向き合う際に心がけていることなどを伺いました。
後編では、介護系インフルエンサーとしての活動や、今後の目標などを伺います。

「介護士あるある動画」が話題となり、
介護系インフルエンサーにシフトチェンジ

――YouTubeなどの配信を始めたきっかけは何だったんですか?

もともとは私が組んでいるバンド「チキンスープ」の活動を広めるために、動画配信を始めました。音楽配信だけでなく、メイク動画を上げたり、激辛料理を食べたり、当初はいろんな企画をしていましたね。

ある時たまたま「介護士あるある動画」をTikTokでアップしたら、すごく反響があって。100万回以上再生され、コメントもたくさんいただいたんです。私の小さな投稿一つを、こんなにもたくさんの人たちに見ていただけて、すごく嬉しかった。それまで見て欲しいのに見てもらえないっていう期間もあったので、なおさらですよね。

「世の中に介護職の人たちってこんなにたくさんいるんだ」というのもSNSを通じて知りましたし、何より自分が十何年続けてやってきたことが誰かの元気に変わるということにも感動しました。

その感動と感謝の気持ちを込めて、見てくれる人にもっともっと元気になってもらいたいと、介護系インフルエンサーに転向したんです。

――恩返しの思いもあったんですね。

介護系インフルエンサーになって、介護士のフォロワーさんからいろいろなコメントをいただくようになり、みなさんさまざまな悩みを抱えているけれど、家族にも職場の仲間にも言えないで苦しんでいる人が多い、ということにも驚きました。そんな、声を上げたくても上げられない人たちに変わって私が発信することで、業界全体が笑顔と活気で溢れたらいいな、という思いもあります。

――職場で悩みを言えないのはなんとなくわかりますが、家族にも言えない理由はなんなんでしょう?

家族に心配されるんですよね。介護職というと、「辛い」「大変」というイメージがまだまだ強いので、「ほら言ったじゃない、介護士になんかになるからだよ」って言われることもあるようで……。

そういう人たちの代弁ができたらな、というのと、最近は学生さんや転職を考えている人たちから「はたつんさんの配信を見て、介護職って楽しそうだな、と思いました」や「介護の道に進むことを決めて、これから学校通います」というコメントもいただくんです。それもすごく嬉しくて!

配信でも何度も伝えているんですけど、介護職はご利用者さんの人生のサポートをする、最高にかっこいい仕事です。コメントをくれた学生さんのように、憧れや誇りを持って介護職を選ぶ人が増えていったらいいなと思っています。

明るく元気な自分を見てもらうことで
介護職のネガティブなイメージを払拭したい

――ちなみに動画制作はお一人でやっているんですか?

バンドメンバーで運営チームを作って制作しています。動画の内容は、自分自身の体験はもちろん、運営チームのみんなも介護士をしているので、彼らの体験や、視聴者さんから教えてもらった悩みや体験談も参考にしています。

動画で演じている私って、私自身の体験談だと思われがちなんですが、結構視聴者さんのコメントを参考にしていることが多いんですよ。なので、視聴者さんが主役になって共感できるように意識して作っています。でも見てくださっている方の立場や悩みは人それぞれなので、例えば新人さんとベテランさんだったら、両方の悩みを取り入れた動画にするようにしていますね。

――どういう動画が人気なんですか?

最近人気なのは、先ほども少し話に出てきた、介護士別の声掛けの違い。個人的に好きなのは、介護士も介護される側の気持ちを体験する企画で、以前アップしたのは「おむつに排泄してみよう」というチャレンジ企画です。

反響が大きかったのは、実際に介護施設に行って、例えばそこが訪問介護の施設だったら、その業務を1日体験してみよう、という企画ですね。同じ介護職でもいろいろな施設形態があるので、それを知る機会になればいいなと思って投稿しました。

正直、「介護職、自分には向いていなかったかも。辞めようかな」と思っている人の中には、今の働き方があっていないだけで、他の働き方に変えたら楽しく働ける場合もあると思うんです。でも、介護士さんにはシャイな人も多いので、個人的に体験に行くのはなかなかハードルが高い。そういう人たちが動画を見て「こういう施設なら、介護職を続けられるかも」と思っていただけると嬉しいですね。

あと、私個人の工夫として、できるだけハイテンションで動画に出たり、メイクを派手にしたりして、介護職に明るいイメージを持ってもらえるよう意識しています。どうしても「介護職=暗い、地味」というイメージは根強いので、それを払拭したいんです。「介護職って楽しいし、かっこいいし、自信を持っていい」というのが伝わってほしいですね。

介護職を楽しんで誇りに思ってもらえるよう、
マインドにフューチャーした講座を開きたい

――介護士として、介護系インフルエンサーとして、今後チャレンジしてみたいことはありますか?

介護士としてだと、自分が最も得意とするのが音楽なので、音楽を使ったレクリエーションについてもっと勉強したいと思っています。以前働いていた施設でも音楽や体操を取り入れたレクリエーションをしていましたが、最近、音楽で五感を刺激することで健康維持増進させるということを学んだので、その知識を活かして突き詰めたいですね。

また音楽に限らず、アロマなどの香りやヘアメイクなどの美容で得られるメンタル効果も、近年介護業界で注目されているので、私もそういった資格を勉強して取り入れたいです。

――いいですね! 介護系インフルエンサーとしてだと?

こんな企画がやりたい、というのは山ほどあるのですが、「介護士あるある動画」の次のステップとして、介護職を楽しんで誇りに思ってもらえるような講座を開いてみたいです。

イベントなどは時々お邪魔させていただくのですが、もっとマインドについて学べる場、伝えられる場を作っていきたいんです。先ほどの音楽レクリエーションについてももっと紹介したいですし、若い世代に介護の楽しさを伝えられる場を作りたいです。

あと、せっかく介護職の人たちが集まるチャンネルなので、みんなの声が詰まったアイテムを商品化したい! 例えば、すごく歩きやすい靴とか脱ぎ履きしやすい手袋とか、腰痛ベルトとか。

介護用品って正直なところ可愛いアイテムが少ないので、デザイン性にもしっかりこだわって、使うたびにテンションが上がるようなアイテムを視聴者さんと一緒に作りたいです。

笑顔は自分を救う!
どんな時でも笑顔でいたからこそ今の私になれた

――若い世代に、というお話も出ましたが、これから介護士を目指す人が経験しておくといいことや学んでおくといいことはありますか?

誰かの介助をするというのは、コミュニケーションや気づきが鍵になるので、日頃から周りの人の小さな変化に気づけるようになっておくといいと思います。「髪色変えたんだ、似合ってるね」とか、ちょっとした変化にも敏感になって声がけできると素敵ですよね。

また、いろんな人と会って、いろんなところに行くという経験も、利用者さんとお話しする上で、すごく役に立つと思いますよ。一緒にテレビを見ていて「ここ、行ったことある?」という話になった時、「行ったことあります! 〇〇の景色がすごく綺麗でしたよ」と会話のキャッチボールができると、盛り上がりますから。

正直技術的なものは、働いていればある程度身につきます。でも経験は、実際に体験していないとどうしようもない。そういう、人としての深みや人間力を高めておくことがおすすめですね。

――ありがとうございました! では最後に、介護士の心得三箇条を教えてください。

・思いやること
・認め合うこと
・大笑いすること

「思いやること」は、対・人のお仕事なので当然ですね。「認め合うこと」は、人生の大先輩である利用者さんの過去の生活や経験を大切にするというのもそうですが、職場のスタッフにも同じことが言えます。

というのも、介助ってゴール地点が同じなのに人によってやり方がそれぞれ違ったりするんです。例えば利用者さんにお食事を出すにしても、「ゆっくり食べていいよ、とりあえず好きなものだけでもしっかり食べて」というスタッフもいれば、「栄養バランスが考えられているんだから、せっかく食べるなら残さず全部食べて」というスタッフもいる。盛り付けにしてもそうです。

それって結局、生活の延長線上にあるものなので、やり方やこだわりがみんな違うんですよね。だからこそ、相手のやっていることに対して認め合うこと、尊重することが大切。だってゴールは同じなんですから。

――確かにそうですね!

大笑いするというのは、介護職ってもともとのマイナスイメージも相まって「辛いな」とか「きついな」と感じることが多いと思うんです。もちろんどんな仕事でも大変な時はあると思いますが、そういう時こそ大笑い! 笑えば自然と場が和みますし、辛いことものちのち「こんなこともあったね〜」と笑い話にできるはず、という期待を込めました。

私、笑顔は自分を救ってくれると信じているんです。私自身、バンドをしながら介護士をして、動画配信もして、寝る間もなく活動しているのに視聴者は0人とか1人という時代がありました。正直辛い時期でしたが、そんな時でも笑って生きてきたんです。でもあの時笑っていたからこそ、今があるし、たくさんの視聴者さんに出会えたと思っています。だから皆さんも、自分のために笑っていてくださいね。

取材・文/児玉知子

 

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