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介護・看護・リハビリ 2021-09-07

【今さら聞けない!? 介護のお仕事の基本vol.43】散歩中、利用者が転倒! 介護職としてやるべきことは?

介護の現場で起こる困りごとへの対処法をご紹介する当企画。今回は、業務中に利用者が転倒や転落をしてしまった時に知っておくとよい対処の流れを見ていきます。

利用者が転倒してしまった! 本人は「大丈夫」と言うけれど、介護職としてはどうすべき?

どんなに予防策を講じていたとしても、100%防ぐことは難しい事故が「転倒」や「転落」です。大切なのは、万が一事故が起こった時に正しく対処することです。しっかりと状態を観察して必要な応急処置がとれるようにしておきましょう。

今回は、転倒や転落の現場に居合わせた時に介護職が取るべき行動をご紹介していきます。

お話を伺ったのは…

中浜 崇之さん
介護ラボしゅう 代表/株式会社Salud代表取締役/NPO法人 Ubdobe(医療福祉エンターテイメント) 理事/株式会社介護コネクション 執行役

1983年東京生まれ。ヘルパー2級を取得後、アルバイト先の特別養護老人ホームにて正規職員へ。約10年、特別養護老人ホームとデイサービスで勤務。その後、デイサービスや入居施設などの立ち上げから携わる。現在は、介護現場で勤務しながらNPO法人Ubdobe理事、株式会社介護コネクション執行役なども務める。2010年に「介護を文化へ」をテーマに『介護ラボしゅう』を立ち上げ、毎月の定例勉強会などを通じて、介護事業者のネットワーク作りに尽力している。

 

ポイント1:転倒・転落時の対応の手順

1. 呼びかけて意識の有無(意識レベルとバイタルサイン)を確認
まずは名前を呼び、返答が返ってくるかを確認しましょう。返答がなく、意識レベルや血圧の低下、呼吸の停止や困難が見られる場合は、事業所へ連絡して応援を呼ぶとともに、すぐに救急車を呼びましょう。

また、返答があり、意識レベルやバイタルサインにも問題がないことが確認できたら、次の確認を。

2. 痛みや出血の有無、体の不自然なゆがみの有無を確認し、応援を呼ぶ
傷による痛みや出血、骨折による不自然なゆがみなど、転倒・転落による負傷箇所を確認します。事業所へ連絡し報告して応援を呼び、その時に主治医・看護師への報告と、救急車など対応の指示も受けましょう。

ポイント2:頭を強く打っている場合

頭や首、背中を打っている場合、頚椎を損傷している可能性があります。また、頭を強く打った場合は「脳震とう」を起こしている可能性も。対応するときは、頭を動かさずに安静を保つのが大切です。

また、硬膜の内側で出血が起こる「硬膜下血腫」を起こしている可能性も考えられます。症状がその時に現れていなくても、3週間以上経過してから現れるというケースもあります。「脳震とう」も発症しても9割以上は意識を失いません。ですから、頭を強く打った場合は本人が「大丈夫」と言っていても、主治医・看護師の指示を仰ぎ、病院で検査を受けましょう。

ポイント3:骨折が考えられる場合

強い痛み、腫れ、変形、脱力、しびれなどがある場合は骨折している可能性が考えられます。80歳以上の女性の2人に1人、男性の3人に1人は骨粗鬆症にかかっていると言われ、小さな外力でも骨折しやすくなっています。特に背骨、太ももの付け根、肩、手首に多く発生するので注意して確認しましょう。

医師の指示や救急車の到着までは、悪化しないように患部の安静を保ち、痛みを和らげるために冷やしながら、患部を心臓よりも上に挙げて待ちましょう。

転倒・転落の対応時にやってはいけない2つのこと

1. 意識があって動ける、だから「大丈夫」と判断
2. 頭は打っていない、痛みもない、だから「大丈夫」と判断

転倒や転落で負傷した場合、頭を打っていれば、本人に自覚がなくても脳震とうや硬膜下出血をしている可能性が捨てきれません。また、高齢者の場合、我慢強かったり、感覚が鈍くなっていたりして、痛みや症状を訴えないこともあります。特に認知症のある人は、自分の状況や症状を明確に伝えられないこともあるので要注意です。全身状態や患部の状態をよく確認・観察し、受診を大前提として対応しましょう。

監修・中浜さんの「実際にこんなことありました!」

今回のテーマの「利用者の転倒・転落」。実際にこの状況になった時って、『自分のせいで転倒させてしまった!』と悪いイメージが頭の中に広がってしまう介護職も少なくはないんじゃないでしょうか。特に現場経験が浅い時期は、「言いたくないな」とか「なかったことにしたいな」という感情も出てきてしまうかもしれません。しかし、重要なのは初期対応です。転んでしまうのは生きている限り起こり得るリスクです。これは自宅で生活していようが、施設で生活していようが変わりません。

転倒などがあった場合は、状況報告とその場でしっかり対処することが大切です。転倒の直後は痛みがなかったのに、数時間後に腫れてきて骨折していてた事に気がつくということもあります。もし転倒などの報告をしないでいれば、利用者が自宅に帰った後に何かしらの症状がでて、ご家族から施設へ相談の電話をいただくということも考えられます。

後から知るということが一番、利用者にとってもそのご家族にとっても、自分自身にとっても、所属する事業所にとっても悪い状況を招きます。安全への配慮をしていたとしても起こってしまうのが転倒や転落です。初期対応がどんな面でも重要になりますので、ドキドキするかもしれませんが最初の対応を大事にしてくださいね。

文:細川光恵
参考:「介護現場で使える 急変時対応便利帖」株式会社翔泳社

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