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ヘルスケア 2023-12-16

カイロプラクティック哲学に魅せられて。名院の二代目として活躍する「塩川カイロプラクティック」塩川雅士さん

カイロプラクティックの名門として知られる、「塩川カイロプラクティック」。アメリカで技術を学び、日本にその技術を広げた第一人者である塩川満章さんが1972年に開業したカイロプラクティックの院です。現在は長男である塩川雅士さんが、二代目を継いでいます。

前編では、塩川雅士さんがカイロプラクターを目指したきっかけや、アメリカで取得したドクターオブカイロプラクティック(D.C.)の称号について伺います。称号を得るために、1日15時間勉強しても苦しくはなかったという塩川さん。それはカイロプラクティックの哲学に魅了されたからだといいます。また帰国した日に父・満章さんから「明日からスクールの講師となり、スクール生に教えてください。教えないなら、私はカイロプラクターを辞める」と宣言された出来事についても伺いました。

今回、お話を伺ったのは…

塩川雅士さん

「塩川カイロプラクティック」院長/米国政府認定カイロプラクター

1980年、東京都生まれ。17才で渡米後、2004年パーマーカイロプラクティック大学を優等で卒業。D.C.の称号取得。米国ナショナルボード合格。日本カイロプラクティックリサーチ協会(JCRA)役員。2005年からカイロプラクターを育成する学校の運営と講師に携わり、現在、年間約300時間の講義やセミナーなどの活動を全国で精力的に行っている。

カイロプラクティック第一人者の父の施術に感動

塩川さんの父である満章さん。1972年にアメリカのパーマー大学を卒業した際の写真

――カイロプラクターになろうと思った理由を教えてください。

高校1年のときに、たまたま見た父の患者さんの姿に衝撃を受けたことがきっかけです。来院したときは痛みに顔をゆがめ、杖をつきながら歩くのがやっとだった患者さんが、10分ほどの施術を経て笑顔で帰っていく姿を見て、感動してしまって。カイロプラクターを目指すと100%決めたわけではありませんでしたが、これが最初の衝撃で、段々とカイロプラクターの道を考え始めました

実は中学のときくらいまで、父が何をしているのかよく分かっていなかったんです。父はカイロプラクティックをアメリカから日本に広げた第一人者で、仕事が終わったあとの時間や休憩時間には全国各地から訪れる先生達にカイロプラクティックについて教えていたため、ほとんど家にいませんでした。さらに母も受付の仕事を任せられていて多忙だったため、中学から双子の弟とともに寮に入っていたんです。父との接点はほとんどありませんでした。

――高校生になって初めて、お父さんの仕事を目の当たりにしたんですね。

中学の頃はサッカーをしていた私や、チームメイトのサポーターとして体のケアをしてくれている姿を見たことはありましたが、本格的に分かったのはそのときですね。父にカイロプラクターの道に進むかもしれないと話したところ、「その道に進むのであれば、アメリカの大学に通うことになるから、アメリカに留学して、まずは英語の力を身につけたほうがいい」と言われて。翌年には双子の弟とともに、アメリカに留学しました。

――その後は、高校を経てカイロプラクティックの大学に進まれた、と。

留学時にお世話になったホストファミリーの家が、カイロプラクティック発祥の地といわれているアイオア州にあったり、ホストファミリーもカイロプラクティックの関係者だったり。今から考えると、父に仕組まれていたのかもしれませんが(笑)、そこからスムーズに、カイロプラクティックについて学ぶ気持ちも固まりました。アメリカのカイロプラクティックの称号である「D.C.(ドクターオブカイロプラクティック)」を得るために、パーマーカイロプラクティック大学に進学。アメリカではカイロプラクティックが法制化されているため、この資格がなければカイロプラクターを名乗ることができません。さらに開業するためには国家資格も必要になります

「カイロプラクティック哲学」に魅せられ、毎日15時間の勉強にのめり込む日々

カイロプラクティックの哲学の原書。日本語訳して出版される際の、翻訳を塩川さんが担当した

――大学ではどのようなことを学ばれたのでしょうか?

手技はもちろん、法律、検査などカイロプラクターになるために必要な座学と実技のすべてを学びました。日本では解剖実習というと医学生がやるものというイメージがあるかもしれませんが、アメリカのカイロプラクターになるための大学では毎日のように解剖実習を行い、医学部よりも多くの時間が設定されているほどです。大学の後半になってくると、一般のクリニックでの実習も行います。全課程で4200時間の授業があり、朝6時半から15時までみっちり学校で学びました。

また学校で学ぶ以外にも、国家資格や、期末テスト、毎日のように行われるテストクイズに備えての勉強もしないといけないので、学校から帰ったら2時間くらい仮眠して、17時から24時くらいまで毎日勉強をしていましたね。1日15時間は勉強をすることが当たり前でした。

――勉強漬けの毎日ですね。嫌になったことはありませんでしたか?

嫌になったことはなかったのですが、微生物学などカイロプラクティックと関係性が低いような座学だと頭に入ってこず、なかなか点数があがらない時期がありました。しかしカイロプラクティックの哲学という学問を勉強したことによって、それまで学んできたすべてがリンクしたんです。すべての学びは楽しさに変わっていき、カイロプラクティックの哲学を1人でも多くの人に早く伝えていきたいという情熱がわいてきました

――カイロプラクティックの哲学とはどんな内容なのでしょうか?

カイロプラクターの役割とは、神経の流れを阻害しているものを整えて、神経を通じて体の状態を脳にしっかり伝えることで、人間の治る力を引き出すことにあります。そしてその目に見えない力を追求していくことが、カイロプラクティックの哲学になるんです

たとえば、指先を切ってしまったとき。その瞬間から傷口の深さやそこに付着しているばい菌の種類や数の情報が、指につながっている神経を通して脳にまで伝達されます。そして脳を通じて、血液を止める組織やばい菌の量に応じた白血球が送られる。そうすると傷が自然に治っていくわけで、これが人間の生まれ持った力です。つまり神経と脳がしっかりとつながっていて、コミュニケーションを取ることができるのが1番の健康状態を保つ秘訣になります。カイロプラクターの仕事は骨のゆがみや配列の乱れを整えることによって、そのなかにある神経の流れを阻害しているものを整え、情報が脳にきちんと伝わる状態にすることなんです。

――その目に見えない力を追求していくことが、カイロプラクティックの哲学にあたるわけですね。

はい。人間に自然治癒力があることは知っていても、そこに100%信頼を持っている人は少ないです。ましてや院に来る人はなんらかの痛みや不調を抱えています。自分の体は弱い、遺伝的な問題があるなどと思ってしまって自分の体にそんなに素晴らしい力があることに気付いていない人が多いんです。その人たちが自分の体の内側に意識を向け、自分の力を信じてもらうことがカイロプラクティックの真の目的だといえます

またすべての症状や病気には意味があると気付かせてくれるのも、カイロプラクティックの哲学のひとつの考え方でもあります。病気や症状は体が無理をしていたり、食生活が乱れていたりする際のシグナルのようなもので、決して悪いものではないというのがカイロプラクティックの考え方です。カイロプラクティックの哲学について学んだあとは、早くこのことを多くの人に伝えていきたいという思いが強くなり、仕事というより、自分の使命という認識に変わっていった気がします。

「明日から教えてください。やらないなら私は辞める」衝撃的な父の言葉

塩川さんが得たD.C.の称号。日本には300人ほどしかこの称号を持つ人はいない

――日本に戻られてから、大変だったことや苦労されたことはありますか?

アメリカから帰ってきた日に、父から「明日からスクールで生徒さんに教えてください」と言われたことです。その頃、塩川ではスクールを運営していたので、そこで教えるようにと。僕は驚いてしまって、もっと臨床経験を積んで、技術力を高めた上で教えたいと言ったのですが、それは許してもらえませんでした。そのときに「おまえが教えないのであれば、明日から私はカイロプラクターをやめる」と父に言われたんです。今までの人生のなかで唯一、父からかけられたきつい言葉だったと思います。家族会議が開かれて、母からは「もう、何でもいいから、教えるっていいなさい!」と(笑)。

――なるほど(笑)。家族の一大事ですね。

父の剣幕に圧倒され、教えることを心に決めたんです。でもここからが大変でアメリカでは当然、すべての用語や内容を英語で習っていましたから、まずはそれを日本語に訳す作業が必要になります。19時に仕事が終わったら、毎日23時くらいまでかけて教材作りをしていました。今となっては笑い話ですが、最初の頃に教えていた生徒さんに講義が終わって「何か質問ありますか?」と聞いたら「ひと言も分かりませんでした」なんて言われたこともありましたね。

ただ今振り返ってみると、自分が教える立場を経験していて本当に良かったと思うんです。教えていなければ、あんなに勉強していなかったのではないかと。父も学びたいと訪ねてきた人には、惜しみなく教えてきた人だったので、そのことによって自分が成長していることに気付いていたんだと思います


後編では塩川カイロプラクティックが50年以上、愛されてきた理由を掘り下げます。塩川カイロプラクティックでは、医師提携によるレントゲン撮影などを通して、神経を阻害している要素を科学的に見つけ出す検査を行っているといいます。後編もお楽しみに!

Information

塩川カイロプラクティック
住所:東京都中央区銀座8-3-10トミタビル6F
TEL:03-5568-2020

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