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ヘルスケア 2024-01-29

介護は自分の人生のリハーサル。寄り添い共感しようとする姿勢が大切【レクリエーション介護士/講師 小山久子さん】#2

ヘルスケア業界のさまざまな職業にフォーカスし、その道で働くプロにお仕事の魅力や経験談を語っていただく連載企画「もっと知りたい! ヘルスケアのお仕事」。

前回に続き、音楽健康法に基づいた介護現場でのレクリエーションの普及に尽力している「レクリエーション介護士」小山久子さんにお話をお聞きします。

後編では、小山さんの現在の活動内容や、これから介護をはじめとするヘルスケアのお仕事を目指す方へのアドバイスを教えていただきました。

お話を伺ったのは…
レクリエーション介護士/講師 小山久子さん

英語教師として約10年従事後、実母の介護をきっかけに日本福祉大学に入学。福祉を基礎から学びつつ、高齢者施設にて音楽レクリエーション担当職員として勤務する。音楽レクリエーションの実績から、大学や各種学校にて福祉レクリエーションの講師や行政による介護予防教室の講師を担当。2015年より、ユーキャンの「レクリエーション介護士講座」開発に携わり、通学講座担当講師を務める。

小山さんのブログ

高齢者とかかわる現場、仲間の育成にくわえ、
看取る家族に寄り添うターミナルケアもスタート

――改めて、現在の活動内容について教えてください。

定年後5年間ほどは、教育機関やレクリエーション介護士養成講座の講師として、人材を育てる活動をさせていただきました。育成に力を入れるようになったのは、私ひとりがどんなに頑張っても限りがあると感じ、同じように活動してくれる仲間を増やしたいという思いからでした。

でもやっぱり介護の現場が好きなので、2・3年前から現場の活動も並行していきたいと思うようになっていたところ、縁あってとある法人の10施設でレクリエーションを担当することになり、現在2年目になりました。もちろん育てることも大切なので、レクリエーション介護士講座や有資格者のフォローアップ研修の講師も続けています。

また2021年にターミナルケア、スピリチュアルケアを学び、ご家族の最後の関わり方についての相談対応もしています。

――ターミナルケアを始められた理由は?

私は両親ともに家で看取りましたが、看取りという「何もしない医療」の大変さを、身を持って感じました。ターミナルケアのなかでの様々な決断は、家族にとってとても重いものを残してしまいます。もちろん周りの方からは「家族に看取られてよかったですね」と言われますが、どこかで「これでよかったのか。もっと何かできたのではないか」と感じてしまうのです。

でも娘に「じゃあお母さんはどうして欲しい?」と聞かれたときに、やっぱり自分の部屋で家族がいて、普通の日常のなかで亡くなるのっていいなと思ったんですよね。

そこで、大切なのは看取る側の家族が、自分で納得できるかということだと気付きました。そのためには、誰かと話すことはとても大切なことです。ですから、最後のギリギリの相談もただ聞くだけの立場にいたいなと思って、ターミナルケアについて学ぶことにしました。

介護をする家族としての視点と
介護スタッフとしての視点から伝えたいこと、
伝えられることで誰かの役に立ちたい

――介護のお仕事をするうえで大切にしていることは何ですか?

目の前におられる方が今どのような状態であっても、
1,私たちの人生の先輩であること

2,輝かしく役目を持って活動しておられた歴史があること
3,その方のアルバムの最後のページを共に作らせていただくという、光栄な瞬間に立ち会っていること
それらを忘れないことが大切だと思っています。

――講師活動をするうえで大切にしていることを教えてください。

介護者は精神的に疲れています。直接的に介護している方も、施設などに託した方も、それぞれに疲れておられます。そこで、介護家族に向けて講演するときは、心に訴えるだけでなく、具体的な方法を提示することが大切です。

私はよく「3つのH」といいます。「Warm Heart(温かい心)」「Cool Head(冷静な頭)」そして「Humor(ユーモア)」。

「Warm Heart」とは、介護をする相手に優しい気持ちを持つことはもちろん、大切なのは介護者が自分にも優しくなること。とくにご家族で介護されている場合、一生懸命になりすぎて、自分の体調を顧みずに、精神的にも肉体的にも追い詰められる方がいます。「あなたが倒れたら病人が2人になるんですよ、だから自分に優しくなってください。あなたは十分やっていますよ」ということを、一番に伝えたいと思っています。

「Cool Head」というのは、行政の制度などはできるだけ勉強して、使えるものは使い倒しましょうということです。そのときにはクリアな頭を持って、冷静に判断して情報を集める。介護は、根性と愛情だけではできませんし。まして突然始まれば混乱してしまうものです。でも、知識があればすぐに動ける。パニックにならずに済みます。知識として冷静に情報を集めることの大切さを知って欲しいです。

また「Humor(ユーモア)」とは、面白いのではなく面白がる気持ち、楽しいのではなく楽しむ気持ちを忘れないことが大切です。そして介護者には、「介護される人はあなたのことが好きだからそばにいるんですよ。あなたはそばにいるだけで十分ですから、できること、できないことは判断しないでください。焦らず、諦めずにそばにいて関わってください」と伝えています。

私は認知症の母を13年そばで支えた介護家族としての視点と、介護現場での職員としての視点を持っています。その双方向からの言葉として上述した内容を講演でお伝えすると、「これでいいんですね」「自分を認められた気持ちがしてうれしいです」と、講演後に涙される方も多いんです。私の経験からの言葉が役立ったと感じて、とてもうれしいです。

できる時に、できる人が、できることをする。
そんな社会を作っていきたい

――現在力を入れている活動、今後取り組んでいきたいことを教えてください。

私たちはみんな年を取り、体のどこかが悪くなったりして弱っていきます。私は、その介護される方、介護をする方、そして介護職員として関わる方それぞれに伝えたいことがあります。

介護されるご本人に対しては、長い人生を一生懸命生きてきた方々が毎日楽しいと思って暮らせるお手伝いをし、「共に人生のアルバムの最後のページを作りましょう」という姿勢を持ちたいと思っています。

そして介護者であるご家族には、介護されるご本人の笑顔を見せることで、「楽しく暮らしているな、よかったな」と安心していただきたい。また介護職員には、お世話をする方のそばにいることを「選ばれた者の幸せ」と思えるような環境を作りたいと思っています。

サポートされる人もする人も、「ありがとうね」「いえいえ、お互い様ですよ」と声を掛け合えるような関係を作ること。できる時に、できる人が、できることをする。そんな社会を作っていきたいというのが、私の目標です。

――介護を始めヘルスケアのお仕事を目指す方が学んでおくといいことは?

高齢者のヘルスケアでは、失っていくものに寂しさを感じる人に、寄り添う気持ちが大切です。自分から捨てるのではなく、もぎ取られていくように失っていく。その寂しさをわかることはできなくても、共感し、受け止めること。そういった意味で、共感と受容の心を学ぶことは必要だと思います。

わからないことを「わかる」と思うのは傲慢なことなので決してしてはいけないけれど、少しでも「共感したい」「受け入れたい」と謙虚に思うことが大切です。そのうえで、自分にとって大切なものを喪失することを想像してみてください。

あなたの大切な人は誰ですか? あなたの大切なものは何ですか? あなたの大切な活動は何ですか? あなたの大切な思い出は何ですか? それがなくなったらどんな気持ちでしょうか。そういうことを考えてみると、 少し共感をしたり受容したりできるのではないでしょうか。

――レクリエーション介護士に興味を持っている方に何か伝えるとしたら?

まずは、介護におけるレクリエーションは、普通の概念のレクリエーションとは少し違います。介護に特化したレクリエーションは、ただのお楽しみやイベントではなく、日々の生活を楽しむということ。例えば、テーブルにお花をちょっと添える、それもレクリエーションになるという考え方です。

だから歌や体操が下手でも、しゃべるのが苦手でも大丈夫です。「みなさんと一緒に作り上げていく」という気持ちが大切です。もちろん現場には、音楽が好きな人も嫌いな人もおられます。体操が好きな人もできない人もおられます。それぞれの好きなこと、得意なことを見つけて、60分のレクリエーションのうち5分でもいいから、その人のことを「すごい!」と言って差し上げられるようなプログラムを考える姿勢を持つことを意識して欲しいです。いろいろなことにアンテナを張って、自分自身が雑学になっていけたらいいですよね。

――最後に、これからヘルスケアの仕事を目指す人たちへアドバイスをお願いします。

高齢者の日常は、遠い先かもしれませんが、いずれ必ず自分が歩む道です。だから「介護は自分の人生の終盤戦のリハーサル」と考えると、経験させていただけることに感謝ができるのではないでしょうか。初めて経験するよりも、一度経験しているほうが、少しは心がまえができると思います。

また、ある人の最期に関わるということは、あなたがその人にとって、とても大切な人だからです。選ばれた人であることにプライドを持って、仕事をしていただきたい。「自分が選ばれた人」だということを、いつも心にとどめて欲しいと思います。

取材・文/山本二季

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