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介護・看護・リハビリ 2021-04-02

ひとりひとりのご要望をできる限り受け入れたい 介護リレーインタビュー Vol.9【介護士 徳永千恵さん】#1

介護業界における職種や仕事内容について詳しくご紹介するべく、実際に介護現場で働く方々にインタビューする本連載。

今回お話しを伺ったのは、地域に根ざした特別養護老人ホーム「くみのき苑ゆらら」で働く、介護士・特養副主任の徳永千恵さん。食事、入浴、排泄などの介助に関わる仕事全般を担う介護士として勤務されています。前編では、介護業界に入るきっかけや介護士の魅力や大変だと感じたこと、後編では、人に接する仕事をする上で日々心がけていることや今後の目標についてお話を伺いました。

《プロフィール》

徳永千恵さん…義母のパーキンソン病発症を機に、ヘルパー2級の資格を取得。高齢者の在宅介護や障害者のガイドヘルパーを経験後、社会福祉法人ラポール会 くみのき苑ゆららに入社。介護士・特養副主任として介護全般に携わるほか、技能実習生の育成を行う。介護職歴20年。

介護業界を目指したきっかけ

身内の介護を目の当たりにして、役に立ちたいと思った

左から3人目が徳永さん ※コロナ前に撮影しています。

――介護業界を目指したきっかけは何ですか?

高校生の時に祖母が認知症になり、当時は介護保険制度がなく、重度の認知症になると精神科病院での入院が主流になっていました。お見舞いに行くと祖母が徘徊するという理由でベッド柵に四肢を紐で縛られていて。体格のよかった祖母はガリガリに瘦せ、入院3か月で亡くなってしまいました。あの光景は今でもはっきり覚えています。現在であれば、身体拘束は禁止されているので、本当に残念なことです。

以来、もともと人のお世話をするのが好きだったのもあり、介護の仕事に関心を持つようになりました。社会人になってしばらくはOLとして働いていましたが、義母が50代後半にパーキンソン病を発症。いずれは寝たきりになると診断されたのを機に、将来、義母の介護に役に立つのではと思い、ヘルパー2級の資格を取得しました。

――介護業界に入って、最初はどのような仕事をされたのですか?

当時は子どもがまだ小さかったので、子どもたちが学校に通っている間に働ける在宅ヘルパーとして勤務しました。1日に複数の利用者宅を訪問して生活援助や身体介護、全身性障害・視覚障害・知的障害の方のガイドヘルパーなどを行っていました。利用者さんはひとりひとりこだわりや価値観が違います。ヘルパー時代にさまざまな方と関わったことで、可能な範囲でご要望に添った援助ができるようになりました。

――在宅ヘルパーから、介護士に転向された理由は何だったのですか?

在宅訪問は、1日に多いときで5件~6件あり、次の利用者宅へ短時間で移動するのがとても大変でしたが、それでも介護の仕事は続けたかったため、移動をしなくてもよい施設勤務に転職しようと考えたんです。新聞広告に掲載されていた「くみのき苑ゆららオープニングスタッフ募集」をみつけ、すぐに応募し、現在に至ります。

介護士の仕事内容と特養副主任の役割

常にアンテナを張り、何事も迅速に対応する

《ある一日の仕事の流れ(早出のシフトの場合)》

早出(7:00~16:00)、日勤(9:00~18:00)、遅出(11:00~20:00)といったローテーションのため、日々違うシフトで勤務しているそう。

――徳永さんの仕事内容を教えてください。

出勤後、職員同士で利用者さんの情報共有を行ったら、他の介護士と同じように食事、入浴、排泄、移乗、移動などの介助、ベッドシーツなどリネン類の交換、掃除をします。

特養副主任の業務としては、施設全体の会議や各フロアの会議に参加するほか、特養全体のシフト作成などをしています。ふだんはシフト制のため、事務作業は月に2〜3回フリーの時間をいただいたときに行っています。また、新卒や中途採用の社員の育成をはじめ、ゆららでは2019年6月から技能実習生を受け入れていまして、その実習生と留学生が独り立ちをするまでの育成に携わっています。

――業務は多岐に渡りますね。技能実習生は日本に介護を学びに来ているのですか?

はい。日本で介護の技術を学び、それを母国に広げるという目的で来られている方々なんです。今はフィリピンから来られている方です。

――技能実習生に教える難しさとかありますか?

まず、教科書を見ながら介護はこうするんだよと、座学から始めたんですが、ちょっとしたニュアンスがなかなか伝わらなくて困ることもありました。今のフィリピンから来ている4人の実習生は、母国でも看護を行っていた方なので、ある程度のことはわかっていたためにやりやすかったんですが。

ただ、私が教えたことを忠実に守ってくれるんですが、何でも私の真似をしちゃうので、私の言葉も真似するんですよ。たどたどしい日本語を使うなかで私の大阪弁がうつってしまって。「そうしたらダメですよ」というところを、私もついつい「そうしたらあかんで〜」とか出てしまうので、それを真似てしまうのが反省点でもあるんですけど(笑)。みんな明るくていい方ばかりで、自分の娘と同じくらいの方もいるので、かわいいなと思いながら指導しています。

――特養副主任という立場になって意識の変化はありましたか?

そうですね。入社当時は、施設で働くのが初めてだったので、一から学ぶために施設経験のある先輩に介助方法とかいろいろ教えてもらっていて、わからなかったら何でも聞くようにしていたんです。副主任になってからは、聞かれる立場なので、わからないことは何でもすぐに自分で調べて答えられるようにしています。部下からの相談等にもできる限り対応するようにし、上司から依頼されたことは常に迅速に対応する事を⼼がけています。

また、利用者さんひとりひとりのご要望をできる限り受け入れたいという思いは、当初の頃から今でも変わっていないです。

――これまで部下の方からお仕事の相談はありましたか?

介護の現場では、介護者の腰に負担がかかる動作がたくさんあるので、疲労の蓄積でぎっくり腰になる方がたくさんいるんです。それで以前、13名の介護士のうち4名が腰痛になってしまい、入浴介助など大変な介助を、元気な職員がフォローしなければならず、その職員たちから「どうして私たちは1.5倍働かなければならないの」っていう声があがってしまったんです。自分たちもいつ腰痛になるかわからないという訴えがあったので、このままでは本当に大変なことになると思い、私の息子が理学療法士をやっていましたので、腰痛予防に関することを相談して、体操や正しい移乗方法を教えてもらいました。

ゆららでは、移乗介助はご利⽤者様によっては2⼈で⾏います。その方法は二人のタイミングが合わないと、どちらかに負担がかかってしまい、それで腰痛になったりするんです。息子の病院では3人体制でやっているそうですが、ゆららは人員配置的に無理でしたので、フレックスボードを教えてもらって、さっそく施設長に現状をお伝えして、フレックスボードを購入してもらったんです。以前よりは、腰痛で介助ができないという職員は減りました。

――何でもすぐに行動に移されていて対応が早いですね。他にも徳永さんが気づいて改善されたことはありますか?

そうですね(笑)。今、技能実習生の育成をしているのですが、ラポール会で技能実習生や外国人を受け入れるのは初めてだったんです。そのため、まず介護職種の技能実習指導員の講習を受け、そのテキストを元にどうやって実習生を指導していったらいいのか指導内容を自分で作成して取り組みました。何か気づいたことや困ったことがあったら、すぐに調べたりして仕事が円滑にできるように心がけています。

介護士の魅力と大変なところ

喜ばれている姿を見ると、やっていてよかったと思う

――どんなときにやりがいを感じますか?

介護に携わる方は皆さん同じことを言うと思うんですけれど、介護は本当に大変な仕事なんですね、でもご利用者様やご家族様より労いのお言葉を頂いた時はやっぱりうれしく、やっていてよかったなと思います。

また、育成・指導した職員がそれぞれの現場で活躍しているのを見ると「よかった〜」とホッとします。技能実習生は習得するのが早く、日本人職員と同様の取得期間で夜勤業務開始まで半年もかかりませんでした。技能実習評価試験に4人が合格した時は本当にうれしかったです。

――心に残っているエピソードを教えてください。

日々、いろんなことがありますが、現在は新型コロナウイルス感染予防の為、実施できていませんが、ご利用者様と初詣、花見、水族館、動物園などに行ったことですね。そのときの喜ばれている姿はとても印象に残ります。

それと、ゆららの屋上に農園があるんですけど、そこではさつまいもや大根、じゃがいも、にんにく、みかんなどを栽培していて「収穫祭」というのをするんです。ご利用者様と収穫して、さつまいもだったら大学芋やスイートポテトを厨房で作ってもらって、ご家族様も一緒に召し上がっていただくのですが、ご利用者様の笑顔を見られるのがうれしく思いますし、ご家族の方は施設に預けられているため、そういうときしか関われないため、すごく喜んでくれています。それを見ると私たちも嬉しくなります。

介護士・特養副主任として、現場の仕事以外にも多くの業務をこなしている徳永さん。目の前の課題を先延ばしにせず、すぐに取り組むことをモットーにされていました。次回は、高齢者や障害者の方に接する上で心がけていることや今後の目標についてお話を伺いました!

▽後編はこちら▽
【人事のホンネ】安心して楽しい日々を過ごせる場所にする 介護リレーインタビュー Vol.9【介護士 徳永千恵さん】#2>>

取材・文/ながいまき

Store Data

社会福祉法人ラポール会 特別養護老人ホーム くみのき苑ゆらら

住所:大阪府堺市東区南野田454-2
電話:072-289-1100
サービス提供時間:365日 24時間

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