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ヘルスケア 2024-03-11

心と体を解放する技法で総合的ヘルスケア・マネジメントを提供【もっと知りたいヘルスケアのお仕事 Vol.133/理学療法士・アレクサンダー・テクニーク国際認定教師 大橋しんさん】#1

ヘルスケア業界のさまざまな職業にフォーカスし、その道で働くプロにお仕事の魅力や経験談を語っていただく連載企画「もっと知りたい! ヘルスケアのお仕事」。

今回は、神戸市を拠点に活動している大橋しんさんにお話をお聞きします。大橋さんは、アレクサンダー・テクニークという心身技法をベースに、理学療法士としての知識や太極拳の技術を取り入れた総合的なヘルスケア・マネジメントを行っています。

前編では、大橋さんが活動のベースとしているアレクサンダー・テクニークのことや、ヘルスケアのお仕事の道のりを教えていただきます。

お話を伺ったのは…
株式会社フローエシックス代表 大橋しん さん

理学療法士、アレクサンダー・テクニーク国際認定教師、日本産業カウンセリング協会認定カウンセラー。ドイツでチェロの修業中にアレクサンダー・テクニークに出会い、帰国後アレクサンダー・テクニーク認定教師と理学療法士の資格を取得。救急病院、整形外科クリニック勤務を経て、2020年に独立。リハビリと太極拳を中心としたスタジオを開設する傍ら、音声配信やYouTubeチャンネルにてヘルスケア情報を発信している。『魔法のフレーズをとなえるだけで姿勢がよくなるすごい本』(飛鳥新社)など。

YouTube「大橋しん / ohashishin」

体験的学習から心身を解放して
パフォーマンスを高めるアレクサンダー・テクニーク

――まずは大橋さんが活動のベースにしている「アレクサンダー・テクニーク」について教えてください。

アレクサンダー・テクニークは、100年ぐらい前に考えられた仮説から生まれました。その仮説とは、している動作のなかに「意図していないのにしてしまっていること」が混じることで、パフォーマンスが落ちているんじゃないかということ。パフォーマンスを上げるために、余計な筋肉の緊張をはずす方法を学習できるようにしたのがアレクサンダー・テクニークなんです。

アレクサンダー・テクニークの学習は、自分に染みついてしまった動きのくせをはずし、余計な緊張のない動きを新たに獲得していくものです。理屈でできるものではなく、体験に基づいた動きの学習になるので、教師と一緒に取り組んでいく必要がある。だから基本的には、マンツーマンでのレッスンになります。

――実際のレッスンの流れを簡単に教えていただけますか?

最初は緊張が起きにくい寝姿勢になってもらい、教師は手を使って体に、声掛けを通して意識面に働きかけ、不調となっている動作や緊張に気づけるように導きます。そして改善していく方法を、体で学んでいくんです。

次第に座ったり立ったり、歩いたりと動作を広げていき、最終的には楽器を弾いたり、スポーツの動作をしたりと、実際に高めたいパフォーマンスにつなげていきます。

体に染みついた緊張は、動作の問題だけでなく、心も深くかかわっています。体と心は表裏一体で、別々のものが繋がっているというより、本当に1つのものなんです。だからレッスンを受ける方は、動作面での悩みや改善を求める方だけでなく、メンタル面に不調があって自分をどうチアアップしたらいいか見当もつかなくなっているという方もいます。

体の緊張をほどくと、どういう風に自分の行動や気持ち、頭の中にある言葉が変わっていけるのか。徐々に心まで改善させていくのも、アレクサンダー・テクニークの特徴のひとつです。

チェロの修練で出会ったアレクサンダー・テクニークを
仕事として成立させるため理学療法士の資格も取得

――それでは大橋さんがヘルスケアのお仕事を始めたきっかけを教えてください。

僕は20代の前半までチェロの勉強をしていて、ずっと背中に痛みを感じていたんです。楽器をしているとフォームをキープしなければならず、体を固めてしまいがちなんですよね。でもドイツの音楽学校でアレクサンダー・テクニークの授業を受けたとき、からだを動かしながら楽器を弾くという体験をしたところ、その日のうちに腰のつっぱり感が取れたんです。そこから、体の使い方というものに興味を持つようになりました。でも、その後しばらくは、アレクサンダー・テクニークを受ける側だったんです。

仕事として考え始めたのは24歳ごろ。チェロでやっていくのは厳しいと現実的に考えるようになり、他の職業を探すなら自分が興味を持ったものにしようと思ったときに、アレクサンダー・テクニークが浮かびました。自分にとって「体がラクになった」という体験がすごく大きくて、「この仕事はきっといいことに違いないし、人も喜ぶことだろう」と思ったんです。

――そこからアレクサンダー・テクニークを教える側として学び始めたんですね。

そうですね。24歳でアレクサンダー・テクニークの教師になるトレーニングを始め、同時に太極拳も学びました。僕が習ったアレクサンダー・テクニークの先生は元器械体操選手で、体の使い方についての研究をしてらっしゃるのですが、そのベースが太極拳だったんです。「人に動きを教える教師になるなら、太極拳を知っておくのもいい」ということで学び始め、最初は固定観念から抵抗感があったんですが、始めてみると太極拳にも大きな影響を受けました。

アレクサンダー・テクニークを学びながら、どう活動していくかについても考えました。20年前ですからアレクサンダー・テクニーク自体知られていないし、将来的にこれでは食べていけないなと思って、理学療法士の資格をとることにしました。理学療法士として働きながら、現場でアレクサンダー・テクニークも活用できたらと考えたんです。

でも理学療法士として病院に就職してみると、なかなか難しかったですね。病院では堂々とアレクサンダー・テクニークを使うわけにいかなくて。2年ほど、ふつうに理学療法士として働いていました。

――アレクサンダー・テクニークを使ってのお仕事ができるようになったきっかけは?

縁あって院外の勉強会の席で、ある整形外科クリニックの院長と出会い、僕が考えていることを話したら興味を持たれて、クリニックに招いていただいたんです。個室を与えてくれて、「特命理学療法士」としてアレクサンダー・テクニークを使いながらのリハビリができるようになりました。そこでは8年間お世話になり、勤務している間に太極拳クラスと体の調子と動きを指導するレッスンを行うスタジオも設立しました。

コロナ禍での独立から4年、
総合的なヘルスケアで評判のスタジオに

――その後、独立された経緯を教えてください。

クリニックでの仕事が評判になり、出版の話をいただきました。その準備をしている間に、コロナ禍が始まったんです。クリニックも通常の業務態勢が取りづらくなったし、出版のことも決まっていたので、「なんとかやっていけるだろう」と思い、会社を作って独立することにしました。

医療で取りこぼされた人たちを、なんとかしたいという気持ちもありましたね。整形外科や心療内科に行っても、どうにもならないという人がたくさんいるのを現場でみてきました。そういった方々がたまたま僕のところに来てくれたわけですが、同じような方々は世の中にまだまだいるんだろうなと思って、もっとたくさんの人を診たいなと思ったんです。

――独立後、活動の仕方などに変化はありましたか?

独立直後は収入が減ったので、訪問リハビリのアルバイトなども掛け持ちしていました。でも本を出版後、ものすごい相談件数が殺到したんです。半年で500件くらい相談が来て、経済的にも回るようになったので、会社の運営も軌道にのりました。

会社は今4期目ですが、毎年1冊ずつ本やDVDを出してきたこともあり、名前を知ってもらえるようになってきたと感じます。

――改めて、現在の活動内容を教えてください。

メインの仕事は、自宅スタジオでの個人レッスンです。アレクサンダー・テクニークをベースに、それぞれの悩みに合わせてご相談にのっています。従来のアレクサンダー・テクニーク教師は、楽器演奏者や演劇関係などパフォーマーの相談を受けることが多いのですが、僕の場合は理学療法士の流れや、健康関連の本を出していることもあり、体の不調についての相談が多いです。整形外科的な悩みだけでなく、メンタル系の悩みや発達障害にかかわる悩みを抱えた方も多いですね。

太極拳と姿勢の教室も続けています。自分の太極拳スタジオとは別に、NHK文化センターや商業施設での講座もあり、毎月4つの教室で講座を開いているところです。どの講座も、たくさんの方にお越しいただいています。


次回後編では、大橋さんがヘルスケアのお仕事をするうえで大切にしていること、ヘルスケアのお仕事の心得をお聞きします。

取材・文/山本二季

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