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ヘルスケア 2023-05-21

「命は有限」を実感し、看護師からインストラクターへ【もっと知りたい「ヘルスケア」のお仕事Vol.98/パーソナルトレーナー・MIKKOさん】#1

「ヘルスケア業界」のさまざまな職業にフォーカスし、その道で働くプロに、お仕事の魅力や経験談を語っていただく連載企画「もっと知りたい! ヘルスケアのお仕事」。

今回お話を伺ったのは、パーソナルトレーナー・MIKKOさん。

もともと看護師をされていたMIKKOさん。病気になったのをきっかけに、インストラクターへ転向されました。なかでも人気なのが「もれ止めエクサ」のレッスン。著書「尿もれに効くうえ、お腹も凹む! 看護師考案のもれ止めエクサ」(KADOKAWA)も発売され、ますます注目を集めています。

前編では、そんなMIKKOさんの働き方や、この仕事のやりがいを伺いました。

命の有限さを伝えるべく、フィットネス業界へ。
健康な人が健康なままでいることの大切さを伝えたい

――もともと看護師をされていたんですよね。病気をしてインストラクターになられたということですが。

フィットネスに興味を持ったのは、長女を出産した時。骨盤を整えたくて、ピラティスを始めました。そしてちょうどその頃、病気が発覚したんです。看護師という職業柄、人が亡くなることは身近で見ていたのですが、いざ「自分が死ぬかも」となると、いろいろ考えてしまいました。身辺整理もしましたが、結果大きな病気ではなく、簡単な手術で終わったんですけどね。

でもその時から「生きているって貴重だ」「命って有限だ」とより深く考えるようになったんです。病気に限らず、交通事故で命を落としてしまうことだってありますから。だったら、元気に動ける体であるうちにしっかり運動して、今の体を楽しんで、さらに健康寿命を伸ばせるようなお仕事をしたいと思い、インストラクターになりました。

――今は完全にインストラクターに転向されたんですか?

最初は並行していましたが、今はそうですね。ただ、高齢者向けの体操教室などは、インストラクター以外に看護師もいないといけない場合があるので、そういう時に私が看護師として入ることもあります。

――インストラクターに転向して、大変だったことはありますか?

初めは、「教える」というのが大変でした。こればかりは経験を積むしかないので、参加してくれた方にご意見を聞いて、少しずつ改良していった感じです。

また、「参加者を集める」っていうのも最初は難しかった。インストラクターになりたての頃は、ほぼ素人同然なので、お金を払って習いたい人はそうそういません。まずはママ友に教えるところからスタートしました。

コロナ禍で恐る恐る始めたオンラインレッスン。
今では人気インストラクターに!

――現在はどんな方に教えていらっしゃるんですか?

対面レッスンは、行政がやっている体操教室と自主開催のレッスン。あとはオンラインでグループレッスンやパーソナルレッスン、YouTubeでのライブ配信を行っています。オンラインはコロナ禍で外出できなくなったのをきっかけに始めたんですが、最初はネット上に顔出しすることに抵抗があり、恐る恐るでしたね(笑)

――働き方としては、例えば、1週間でどれくらいのレッスンをお持ちなんでしょう?

だいたい対面が10本、オンラインが10本くらい入っていて、そこに不定期で開催しているレッスンが入ってくるので、全部で週25本くらいでしょうか。

子どもが2人いて、下の子はまだ小学生なので、子どものこともいろいろあるのですが、オンラインの場合は移動時間がなく、在宅でレッスンできるので助かっています。合間に家事もできますし、主婦にはありがたいです。

ただ、リビングを占領しちゃうので、家族に迷惑はかけていると思います。帰宅時も、「ただいま!」って声が入らないように、みんなそーっと忍者みたいに帰ってきます(笑)

――レッスンの時間も、その日その日で変わってきますもんね。

そうですね。朝早いものだと8:10〜、夜遅いものだと21:00〜。なので、毎日起きる時間も寝る時間も違っていて、よくないなと思いつつ……。

――心も体も元気で過ごすために、ご自身のケアとかリフレッシュはどのようになさっていますか?

栄養をバランスよくしっかり摂ること、睡眠の質を上げること。睡眠時間を増やすのは難しくても、質のいい睡眠を心がけるだけで随分違います。あと、日曜は運動をお休み。子どもとゲームをしたり、カラオケに行ったりして、家族の時間を大切にしつつ、リフレッシュしています。

対面レッスンもオンラインレッスンも
それぞれメリット・デメリットがある!

――対面レッスン、オンライレッスン、両方されていますが、それぞれのポイントや気をつけていることはありますか?

どちらも共通しているのは「ちゃんと見る」ということ。実際やってみてわかったのは、オンラインだと画面上で全員を一度にチェックすることができるので、インストラクター側からすると、すごくやりやすい。ただ、やっぱり平面になるので、立体的にチェックするのは難しく、生徒さんに「反対側がどうなっているか見たいので、ちょっとカメラの位置を変えてみてください」ってお願いする必要があります。

でも、これが対面なら、私が回り込んで見ればいいだけ。逆に私が生徒さんに見せたいポーズがある時も、生徒さん自身が見たい角度で見てもらえます。必要があれば、私が生徒さんの体を直接触って指導することもできる。どちらにもメリット・デメリットがありますね。

あとはコミュニケーション。これは対面とオンラインで随分変わります。対面はコミュニケーションがとりやすい反面、仲良しグループで参加している人、一人で参加している人で、どうしても差が出やすくなるんですよ。グループで参加している人たちは、「先生、これはどうするの?」って質問しやすいけど、一人で参加している人は声をかけにくい、とかね。なので私は、皆さんが平等に参加できるように、気をつけないといけません

――どのようになさっているんですか?

クラスに知り合いがいなくて一人で参加している人には、私自身が「知り合い」になるようにしています。そうすれば、話しかけやすくなりますし、「生徒さんの中に知り合いはいないけど、先生が知り合いだから寂しくない」って思ってもらえるかな、と。また、私を通して、知り合いを作ってもらえるように、生徒さん同士を繋いであげることもできますしね。

逆に、オンラインの場合は全員が一人なので、その辺りの心配はないのですが、人によっては最初から最後まで一言も発せず、ただただ受動的なレッスンになってしまう可能性があります。そうなると「YouTubeとか、動画を見ながら運動するのと変わらないじゃん」ってなりますし、もったいないです。

だから、オンラインの時は、レッスン前、オンラインルームに入ってこられた時に必ず「おはようございます」って声をかけたり、レッスン後、わかりづらかったところや感想などを一人一言しゃべってもらうようにしたりして、オンラインとはいえ、その時間、その空間に参加したということをしっかり感じてもらえるように心がけています。何より、わからないことがあるままモヤッとした気持ちでレッスンを終えてほしくないですしね。

自分がいいと思うことに共感してくれる仲間が増え、
皆さんの健康寿命を伸ばすお手伝いができることが、
この仕事のやりがい!

――この仕事のやりがいはなんですか?

私がいいと思ってお伝えしていることを、同じようにいいと思ってくださる人が参加してくれるので、楽しいです。自分が持っている知識や技術を提供すると、皆さんが尿もれや頻尿、腰痛などのお困り事を解消できたと報告してくださいます。

私のレッスンに参加してくれる人は、若い人より、ご年配の方や、ちょっと体に心配事がある人が多いんです。そういう人達は、健康に対する意識が高まっているので、価値観も近い。もともと皆さんの健康寿命を伸ばしたいと思って始めた仕事なので、私の活動が少しでも皆さんのお役に立てていると思うと、それだけですごく嬉しいです。

――ちなみに、看護師だった経験が、現在の仕事に生かされていると感じることはありますか?

体調面の相談をされることはよくありますね。内容によっては、相手が看護師だから話しやすい、相談しやすい、ということもあるようです。「最近こういう状況で、この間検査を受けて、こういう結果が出たんだけど……」って言われた場合、看護師の経験から、それを理解してあげることができますから。私は治療に関して具体的なアドバイスすることはありませんが、お身体の不安を抱えながら教室に参加するのではなく、状況をわかってもらえた上で参加しているという安心感があるようです。

また、生徒さんご自身が話しているうちに「何がわからなくて困っているのか」「何を不安に思っているのか」に気がつき、「話しただけで、なんとなく考えがまとまった」とスッキリされることも多い。そのような時に看護師時代に身につけたコミュニケーションスキルが役立っているように思います。


「人は誰しも死ぬ」というのは、当たり前だけど、いざ自分ごととして考えるにはハードルが高すぎる内容です。だからこそ、まずは「元気な今、何ができるか」ということを考えて行動することが大切。看護師もインストラクターも、人の健康をサポートするお仕事ですが、特に、健康な人を健康なままいられるようにサポートするインストラクターのお仕事は、高齢化が進む現代の社会において、ますます注目されていく気がしました。

後編では、人気レッスン「もれ止めエクサ」のメソッドや、未来のインストラクターに向けたアドバイスを伺います。

取材・文/児玉知子
撮影/喜多二三雄

 

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