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介護・看護・リハビリ 2022-03-06

長年の介護士生活で感じたキャリアの悩み。「でもやっぱりこの仕事が好き!」の理由とは?/介護リレーインタビューVol.29【介護士・長谷川佳乃さん】#2

介護の世界で働く方々のインタビューを通して、介護業界の魅力、多様な働き方を紹介する本連載。

前編に続き、介護老人保険施設「デンマークイン若葉台」で働く介護士・長谷川佳乃さんからお話を伺います。

在宅復帰に向けてリハビリに励む利用者様に対して、日常生活上のケア業務を行う長谷川さん。後編では、長い介護士人生の中でキャリア形成に悩んだエピソードなどをお聞きしました。

キャリアへのモヤモヤを乗り越えて。異動先で介護の新しい魅力を発見

「デンマークイン若葉台」で主任介護士として働く長谷川佳乃さん。

——長く介護士を務める中で、ご自身のキャリアについて悩むことはありましたか?

実は数年前、介護士の仕事を退職するか悩んだことがあります。看護学校へ通い、ナースとして、介護の現場に改めてチャレンジしてみたいなと思って。けれど家庭との両立を考えるとすっきりと思い切ることができず、とはいえ、看護師免許を取るなら年齢的に最後のチャンスだという焦りもありました。最終的に入学試験は受けたものの、なんとなくモヤモヤとした状態で勉強したせいもあってか、不合格という結果だったんですけどね。

——なぜ看護師への転身を考えたのですか?

例えば「摘便」など、介護職には禁止されている医療行為があります。私はせっかちな性分なので(苦笑)、その都度、看護師を呼ばなければならないのをもどかしく感じていました。医療と介護で線引きされていることに対して、ある種の悔しさもありました。だったら、自分でどちらも出来るようになればいいんじゃないかと思ったんです。

それに、介護士としてキャリアが長くなるにつれて、当時の職務へ「慣れ」が出てきてしまっていたのかもしれません。その頃は介護依存度の高い方のケア業務を担当していたんですが、自分自身のさらなる向上や、新しい何かを学ぶという刺激に飢えていたように思います。

「これからもずっと、介護士として最前線で働き続けるのが夢です」と語る長谷川さん。

——停滞しているような感覚があったわけですね。その状況を打破したきっかけは?

上司へ他部署への異動願いを出しました。すると、施設内で唯一未経験だった、現在の職場「在宅復帰支援」のフロアへ異動できることになりました。それが4年前の話です。

——今の職場へ異動して、心境の変化などはありましたか?

在宅復帰に向けて頑張る方々をサポートするという今の業務は、想像以上に楽しいものでした。利用者様とは、日々の成果を喜び合うだけではなく、思い通りに回復せず落ち込む相手に寄り添う時もあります。そうやって色んな感情を分かち合った皆さんが、希望通りご自宅に帰っていく姿を見るたび、大きなやりがいを感じています。「やっぱり私は介護士の仕事が好きだ!」と実感しますね。

現金なものですが、看護師への未練は綺麗さっぱりなくなっちゃって(笑)。老健という施設の楽しさ・醍醐味を、今は存分に味わっているところです。

——転職することなく、さまざまなケア業務の経験を積めるのは嬉しいですね。

そうですね。同じ施設内で知見を広げられるのは「デンマークイン若葉台」で働く大きなメリットだと思います。

私自身は、認知症専門フロアでの勤務歴が一番長いんですよ。認知症の方と接する際は、少し対応を間違えるとその日1日お相手が不穏になってしまうこともあるため、自分の言動に細心の注意を払う必要があります。同じ介護士という職種であっても、このように気を張る毎日が苦手だというスタッフもいて当然のこと。人それぞれ、向き不向きってありますよね。

でも当施設なら、働きやすい職場環境はそのままで、自分に合った業務を探すことができます。同期入社はもちろん、私より長く勤めているスタッフが何人もいますし、はじめて介護職に就く人でも続けやすいんじゃないかな。事務局のバックアップ体制にはいつも感謝しています。

地域連携で気づいた老健の可能性。利用者様からいただいた学びを大切に

インタビューには事務局長の齋藤哲生さん(左)も同席。スタッフが長く働ける職場づくりのため、キャリア相談の他にも介護ロボット導入などを通して、業務の効率性や利便性を追求したいと話してくれました。

——多くの利用者様と接する中、思い出に残るケースなどはありますか?

以前、自宅で最期を迎えたいという強い希望をお持ちの利用者様がいらっしゃいました。その方は独居でお体の調子も悪かったため、従来なら病院や施設でお看取りするのが一般的です。けれどこのケースでは、ご本人の意思を尊重し、私たちと地域のケアマネや訪問介護など他職種が連携することで、残りわずかな在宅生活を見守ることになりました。

少し難しい性格の方で、普段は訪問ヘルパーが家に上がっても、ケアを拒否されることが多くありました。けれど当施設でのケアはいつも気持ち良く受け入れてくださって、亡くなる直前もこちらへショートステイで滞在されました。伸びきった髪やヒゲを整えさせてもらい、スタッフとのお喋りもすごく楽しんでもらえてね。そして「ありがとう」と笑顔で帰宅された2日後、ご自宅で亡くなられました。

訃報を聞いた際、寂しいという気持ちももちろんありましたが、利用者様が望む形の「人生の旅立ち」に関われたことに対して、すごく感慨深い気持ちになりました。何物にも代えがたい、大きな気づきと学びをいただいたように思います。

——在宅看取りは、超高齢化社会の課題の1つでもありますよね。

地域の福祉職が連携し、ご本人の希望を叶えることができた好事例だったと思います。利用者様を「元気に自宅に帰す」ことだけが、老健の役割・目的ではない。それぞれの想いに寄り添い、いかに「その人らしい最期」をサポートするかが重要なのではと、改めて考えさせられた良いきっかけでした。

「法人としても地域連携を強化していきたい」と語る事務局長・齋藤さん。近隣のシニア世代を対象とした交流の場「わかばカフェ」を定期開催するなど、地域に開かれた施設づくりを実践しています。

介護の世界を目指す方へのメッセージ

私が思う介護の魅力は、人間同士の「つながり」です。利用者様とともに笑い、涙し、心と心の関わり合いが感じられる介護士は本当に面白い仕事。人間が好きな人ならきっと楽しめると思います。ケアについては分からないことがあっても大丈夫。研修制度や資格補助など、会社がフォローしてくれます。ぜひチャレンジしてみてください。


在宅復帰支援の介護業務が楽しくて仕方がないと話す長谷川さん。「介護のプロフェッショナルになるためには、学ぶことがまだまだたくさんあります!」と目を輝かせていました。いくつになっても自分の成長のために頑張ろうと思える、介護士という仕事の引力を感じたインタビューでした。

取材・文/黒木絵美
撮影/高橋進

Information

デンマークイン若葉台
住所:東京都稲城市若葉台3–7-1
TEL:042-331-3030

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