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介護・看護・リハビリ 2025-03-15

介護美容を知らずにこの世を去るなんてもったいない!【介護リレーインタビューVol.53】介護美容まき家 代表 長内麻紀穂さん#2

お話を伺ったのは…
介護美容 まき家
代表 長内麻紀穂さん

青森県出身。大学卒業後、千葉県の広告代理店に営業担当として6年間勤務。在職中に介護美容と出会い、専門学校でスキルを学ぶ。2022年に退職し、介護施設で働きながら介護職員初任者研修を取得。同年9月に『介護美容まき家』を開業する。

前編に続いて、介護美容まき家の代表、長内麻紀穂さんにお話を伺います。介護美容まき家を立ち上げ、高齢者を美しくするための事業を始めた長内さん。
後編では、オンラインコミュニティ「介護美容DAO」に参加し運営にも携わるようになったこと、介護美容を実践する中で感じたこと、これからの展望についてご紹介します。

全国の仲間とつながった「介護美容DAO」

眉を整え、口紅を塗るだけでみるみる明るい表情に。これぞ美容の力!

――長内さんは介護コミュニティの運営スタッフでもあるんですよね?

全国の介護美容に携わっている人たちとつながれるオンラインコミュニティが『介護美容DAO』です。私は2023年3月に創設されたときに入会して、同じ年の10月、運営にジョインしました。最初はメンバーの一人だったんですが、今は運営にも携わるようになりました。

――何人くらいの方が登録されているんですか?

2025年3月1日現在、300人です。日本最大規模なんですよ。実際に介護美容の仕事をしている方はもちろん、この仕事に興味があって勉強したい方も登録しています。
介護美容のことをもっとたくさんの方に知ってほしいし、介護美容に携わる方も増やしたい。いろいろな想いを共有できるコミュニティです。

――介護美容の認知度を上げる活動の1つなんですね。

介護を専門としている方の中にも、認知症や要介護の方は「美容に興味がない」とか「美容の施術を受けられない」という誤解があるんですよね。
確かに健康で若い方の美容はきれいになることが目的ですが、高齢者はきれいになることだけではなくて、生きることに前向きになってもらえるんです。これを伝えるのが本当に難しくて。

――長内さんが実際に体験した高齢者の変化はありますか?

当時102歳だった女性のケースですが、食欲がなくなってどんどん痩せていってしまったんです。ご家族から介護美容のご依頼があって、ネイルケアをしました。ネイルを塗ってきれいになった指先をご覧になりながら「もっと食べたら、もっときれいになるかしら」っておっしゃったんですよ。そのあと食事量が増えて体重も増えていったそうです。お孫さんから「本当にありがとうございました」と言ってもらえたのは嬉しかったですね。

――きれいになったら前向きになれることに、年齢は関係ないんですね

その通りです。病気も関係ないですよ。おとなしくて無気力に見えていたパーキンソン病の女性に化粧道具を渡したら、目にも留まらぬ早さでファンデーションを塗り始めたんです。近くにいたリハビリ担当の職員もビックリしていました。

――みなさんきれいになりたいんですね。

そうなんです。きれいになると行動も変わるんですよ。
「もう何でもいい」が口癖で、あきらめグセがついていた当時90歳の女性がいました。足のトリートメントをしながら、ずっと前向きな言葉をかけ続けていたんです。半年くらい経った頃でしょうか。「足が軽くなったから買い物のあと、いつもより遠回りしてきたのよ」って。少しずつ運動量が増えていったんですね。デイサービスでも他の利用者さんに積極的に話しかけて、おしゃべりを楽しむようになったそうです。ファッションショー企画にも参加して、サングラス姿でランウェイを闊歩していました(笑)。

――嬉しいことばかりですね。

介護美容は嬉しいことばかりなんです。介護美容をする前と後では表情も身体の動きも違います。その瞬間を間近で見られること、ご本人やご家族に感謝してもらえることが、最高に嬉しいですね

諦めなければ、いつか結果が出ます!

デイサービスでレクリエーションを行う長内さん。参加者の気分の盛り上がりが伝わってきます。

――今までにピンチだったことは何ですか?

ピンチというほどのことはありませんが、強いて言えば介護美容を始めて2年くらい、売上がまったく立たなかったことでしょうか。

――売上ゼロでも辞めなかったのはなぜですか?

介護美容を知らないまま、この世を去ってしまう人がいるのはもったいない!という想いです。純粋にそう思っています。
学校に通い始めた頃から「辞める」という考えは毛頭なかったので、「どうしたら続けられるか」しか考えていませんでした(笑)。

――介護美容に携わるようになって、よかったことはなんですか?

毎日、仕事が楽しいことです。心から人の役に立っている実感があります。
あとは、コミュニティを通じて仲間と出会えたことも大きいですね。自分ひとりでは目指せなかったことも、仲間がいれば可能性がどんどん広がります。

――すごいバイタリティですよね。その原動力は何ですか?

介護美容を仕事にしたいのに、肝心の働ける場がありません。学校を卒業しても仕事にできない人がたくさんいます。高い学費を払っただけの人が大勢いるんです。まず、私が業界を引っ張れる存在になることで、尻込みしている人の背中を押せるのでは…と思っています。全国で介護美容が広がってくれると嬉しいですね。

――これから、どんな風に仕事を進めていきたいですか?

まず、ここ神奈川県で地固めをして、私の実家がある青森県でも営業活動を始めたいと考えています。受け入れられるか、玉砕するか分かりませんが(笑)。
誰にも「美容」という選択肢があって、命が尽きるまで心躍っていられるような社会をつくりたいですね。

――介護美容を目指している方にアドバイスをお願いします。

辞めなければ、いつかは結果が出ます。介護美容は本当に素晴らしい仕事ですが、想いだけでは続けられない厳しい業界でもあります。まずは時間、お金、環境など続けられる環境を整えながら、能力やスキルを磨いてください。あなたを必要としている人が必ずどこかにいるはずです。

長内さん流! 介護美容を続けるためのポイント

1.ネットワークやコミュニティを通じて仲間を作る。

2.壁にぶち当たったら、「どうしたら続けられるのか」という視点で考える。

3.目標を定めたら期限を決めて行動に移す。

 

撮影協力/シェフズデイサービス茅ヶ崎(シェフズデイサービス 茅ヶ崎 |地域密着型通所介護 シェフズデイサービス)
撮影/森 浩司

Information

介護美容まき家
介護美容DAO
住所:神奈川県茅ヶ崎市共恵1-1-5 BLD NAGASHIMA 301

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