【今さら聞けない!? 介護のお仕事の基本 vol.21】汚部屋寸前なのに、片付けさせてくれない! どう声かけする?
訪問介護、デイケア、老人ホームなど、業務形態もサービス内容も幅広い介護のお仕事。特に一人現場の訪問介護では、どうしよう…と思うことが起きても対処法を同僚や先輩にその場で聞くわけにもいかず、困ることもあるのではないでしょうか。当企画では、そんな困りごとの対処法をご紹介します。
物があふれ、異臭もするBさん宅。「今のままでいい」と、片付けに前向きになってくれない…。
奥さんに先立たれ、今は一人暮らしのBさん。週2回、訪問介護ヘルパーが居住清掃と調理介助に入ることになりました。担当ヘルパーが訪問すると、家の中は物があふれていて、中には腐ったような臭いを発するものもありました。
まずは片付けることを提案しましたが、「別に今のままでもいいんだけど…」と乗り気ではありません。衛生上もよくないので、いらない物から処分しましょうと話しても、「どれがいらない物かよく分からないし…」「面倒だ…」と。
Bさんの了承を得られないままでは、片付けを始めることもできません。こういう場合、どう対応するのがよいのかを、ポイントをおさえながら見ていきましょう。
ポイント1:これ以上物が増えたらどうなるかを伝える
「足の踏み場がなくなる」「扉が開けられなくなる」「虫が湧いてしまう」など、物がこれ以上増えてしまうとどうなるかを、分かりやすく伝えることから始めましょう。具体的にどうなるかを伝えることで、「家の中を歩きづらくなるのは困るな」「外に出られなくなるのは困るな」「虫が湧いたら嫌だな」など、利用者自身が具体的なイメージをしやすくなります。その困るイメージを、片付けの動機につなげられるといいですね。
ポイント2:部分的な片付けから始める
そうはいっても、いきなりすべてを片付けたり、捨てたりするのには難色を示す利用者もいるでしょう。その時は、「通路だけでも確保しましょう」「扉が開くようにスペースをつくりましょう」「食べ物関係のものだけは捨てましょう」のように、部分的な片付けを提案するとよいでしょう。
部分的に少しずつでも生活が快適になることを実感してもらえれば、片付けることへの抵抗感=「今の生活空間が変化すること」も受け入れてもらいやすくなるでしょう。
片付けられない利用者へ言ってはいけない2つの言葉
1.「散らかっている」
2.「汚い」
利用者が内心では片付けたいと思っていたとしても、いきなり「散らかっているから片付けた方がいい」「汚いから捨てた方がいい」と言われたらどう感じるでしょうか。「もったいない」「捨てられない」と思って捨てられずにいるうちに、家の中が物だらけになってしまった…というケースはよくあります。毎日生活している場所を、他人から「散らかっている」「汚い」と言われるのは誰しも気分のいいものではありませんよね。中には、昔からこういった生活スタイルをしてる方もいるかもしれません。声かけには配慮が必要なので、注意をしましょう。
文:細川光恵
参考:「こんなときにはどう言葉をかけたらいい? 介護の言葉かけタブー集」誠文堂新光社
監修
中浜 崇之さん
介護ラボしゅう 代表/株式会社Salud代表取締役/NPO法人 Ubdobe(医療福祉エンターテイメント) 理事/株式会社介護コネクション 執行役
1983年東京生まれ。ヘルパー2級を取得後、アルバイト先の特別養護老人ホームにて正規職員へ。約10年、特別養護老人ホームとデイサービスで勤務。その後、デイサービスや入居施設などの立ち上げから携わる。現在は、介護現場で勤務しながらNPO法人Ubdobe理事、株式会社介護コネクション執行役なども務める。2010年に「介護を文化へ」をテーマに『介護ラボしゅう』を立ち上げ、毎月の定例勉強会などを通じて、介護事業者のネットワーク作りに尽力している。