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常勤換算
特集・コラム 2019-08-08

【介護の教科書】実はわかりやすい「常勤換算」

施設の先輩職員や上司に「常勤換算」についての説明をしてもらっても、 「なんとなくしかわからない」 「算出方法は機械的に覚えたけど、そもそも常勤換算が何かわからない」 といった方が、結構たくさんいらっしゃるようです。 確かにちょっとわかりにくい常勤換算ではありますが、人員基準に関係することはしっかり理解しておかないと、違反をした場合、行政から事業所に対して業務停止などの処分が課せられることがあります。 ここでは、ちょっとわかりにくい常勤換算をできる限りわかりやすく説明しますので、今までなんとなく取っ付きにくかった常勤換算に、少しでも歩み寄ってみてください。

常勤換算とは

「常勤換算とは、当該事業所の従業者の勤務延べ時間数を当該事業所において常勤が勤務すべき時間数で除することにより、当該事業所の従業者の員数を常勤の従業者の員数に換算することをいう」 ……難しい説明文ですね。 簡単に説明すると「ある事業所で働いている人の平均人数」です。もっと言うと「いつも何人くらいで働いてる?」という質問に対しての答えです。 ここで言う、働いている人というのは全従業員が対象であり、パートや正社員などの雇用形態は関係ありません。また、常勤・非常勤に関わらず、何人で働いているかを表したものです。ではなぜ「常勤」換算と言うのでしょうか。 これは、「常勤換算」が全従業員の労働時間を常勤の人が何人働いているかに換算した時の人数を示した数字だからです。

【用語の定義】 常勤:雇用形態に関わらず、フルタイムで働く人 勤務延べ時間数:勤務表上、サービス提供に従事する時間やその準備を行う時間

常勤換算の計算方法

常勤換算の以下の計算式で求められます。 常勤換算人数 = 常勤職員の人数 + (非常勤職員の勤務時間の合計 ÷ 常勤職員が勤務するべき時間) では、実際に数値を当てはめて計算してみましょう。例として「リジョブ訪問介護事業所」の常勤の所定労働時間が週40時間であるとします(所定労働時間は法定労働時間内であれば、各事業所が就業規則や雇用契約書で決定することができます)。同社では5人の従業員A~Eさんが働いており、その一週間の勤務時間は以下の通りとします。 Aさん:40時間(正社員・サービス提供責任者) Bさん:40時間(正社員) Cさん:32時間(パート) Dさん:25時間(パート) Eさん:16時間(パート) これらを式にあてはめると…… 2 + {(32+25+16)÷40}=2 + 1.825 = 3.825 ≒ 3.8 と、なります。

常勤換算

※計算で出た値の端数は、小数点第2位以下切り捨て

訪問介護事業所における運営規定では常勤換算で2.5人以上(サービス提供責任者含む)という基準値がありますが、それをクリアしているので人員基準を満たしていることになります。 また、職員の勤務体制等の規定に「指定訪問介護事業所ごとに原則として月ごとの勤務表を作成し、訪問介護員等については日々の勤務時間や職務の内容、常勤・非常勤の別、管理者との兼務関係、サービス提供責任者である旨等を明確にする」とありますが、都道府県は常勤換算2.5人がクリアされているかどうかを、この勤務表で確認しています。 常勤換算2.5人以上であるかどうかの算出方法は、実績のある事業所と実績のない事業所では異なります。基本、実績のある事業所では、前年度の週当たりの平均稼働時間で計算されますが、実績のない事業所では、月の稼働時間をもとに計算されます。ただし、都道府県によっては、実績のある事業所もない事業所も、1か月の稼働時間をもとに、常勤換算2.5人の基準が満たされているかどうかを確認しているところもあります。

その他サービスの人員基準

訪問介護事業所での人員基準は前項で紹介しましたが、この「人員基準」はサービスの種類によって異なります。介護・障害福祉サービスカテゴリでは次のとおり配置することが定められています。
常勤換算
上記の他にも、例えばデイサービス(通所介護)等でも人員基準設定があります。 管理者、生活相談員、看護職員、介護職員などの最低人数が決まっていますが、施設の利用者数(利用定員)や平均提供時間数によっても異なりますので、詳しくはデイサービスの記事をご覧ください。

違反の例

人員基準未満の場合は不正行為とみなされ、指定取消、営業停止、新規受け入れ停止などの然るべき処分が科されます。では、どのような行為が不正とみなされるのかを見て行きましょう。
◇サービス提供責任者が併設する事業所の仕事を兼務する
【訪問介護】 ◆人員が確保できていない時間帯に、実際には無い虚偽のサービス実施記録を作成し、介護報酬を請求する
【訪問介護】 ◇人員が足りない状態の営業日に、不在の職員が出勤したかのように加工した出勤簿を作成する ◆虚偽の個別機能訓練計画書を提出する

よくある質問・相談

ここでは、リジョブに寄せられるご意見の中から、常勤換算・人員基準関連のよくあるご質問・ご相談について回答していきます。

Q1.産休や育休等で休暇している従業員も、常勤換算の計算に含めますか?

A1.含めても、実際に勤務していないわけですから、勤務延べ時間数には含まれません。

Q2.相談員は常勤換算の人数に含めますか?

A2.相談員は介護職員ではないので、計算に含めません。

Q3.産休明けの常勤職員が、短時間勤務をしている場合は非常勤扱いになりますか?

A3.扱いとしては常勤扱いですが、計算上は常勤にしてしまうと常勤換算値が間違ってしまいます。実際に勤務した時間で計算してください。

Q4.どうしても常勤換算の方法がわかりません。

A4.どうしてもできない人には厚生労働省の「常勤換算計算シート(ダウンロード)」がありますので、それを利用してください。しかし、どういう理屈で計算しているのかは、理解しておいた方が心強いと思いますよ。

まとめ

常勤換算は運営規定の人員配置基準を満たしているかどうかの指標となります。 介護事業所を運営するのにかかる最大のお金は人件費ですから、人員を減らしてなんとか節約しようとする気持ちはわかりますが、人員配置基準を満たすことは絶対条件です。 故意であろうが過失であろうが、違反すると罰則があります。一度でも処分の対象になってしまうと、そのような情報はケアマネージャー等に伝わってしまい、「自分の施設に利用者やスタッフが来なくなってしまった」という話は少なくありません。 もし、あなたの職場で故意に虚偽の報告書を作っている(作らされている)というのであれば、その事業所の先はありません。次の職場を探し、一刻も早く転職することをオススメします。

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