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特集・コラム 2020-05-01

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策! 介護業界が直面する課題と今できる取り組み

猛威をふるい続ける新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ですが、緊急事態宣言から3週間ほど経過した今もなお緊迫した状況が続いています。
介護業界は、高齢者や基礎疾患のある方など、新型コロナウイルス感染症に対してハイリスクといわれる利用者を多く抱えており、実際に複数施設でクラスター(集団感染)が発生し現場はひっ迫しています。
まだまだ手探り状態が続く新型コロナウイルス感染症対策ですが、介護業界の中で今やるべきこと、取り組めることを整理していきましょう。

まずは徹底的な衛生対策! チェックリストで感染対策を可視化しよう

まず介護施設においては、基本的には政府側の休業要請には入っていませんが、利用者のほとんどが高齢者やなんらかの基礎疾患をもつ方であるため、休業するか否かで頭を抱える事業所も多いことでしょう。実際に介護施設でクラスターが発生した愛知県名古屋市では3月に126の介護施設に休業要請を出しました。

規模の大きな施設は休業しているところもありますが、利用者にとって介護施設は生活の一部であり、休業してしまうと行き場をなくす方も多いことから、各施設一部サービスの休止や縮小などの工夫をしながら運営を続けている状況です。

政府からは感染対策として、3密(密閉・密集・密接)を作らない取り組みや飛沫感染予防の指導がありましたが、介護の場合は通常の施設よりもさらにこまかな配慮が必要となります。
横浜市作成の介護事業者向けチェックリストが明確でわかりやすいため、そちらを添付して説明します。

新型コロナウィルス対応状況チェックリスト(施設系・居住系サービス用)
新型コロナウィルス対応状況チェックリスト(通所系サービス用)
新型コロナウィルス対応状況チェックリスト(訪問系サービス用)

出典元:横浜市介護事業者向け新型コロナウイルス関連情報

上記のエクセルシートはダウンロードできる形式になっているので是非活用してほしいのですが、このようにチェックリストにしていくことで対応策を可視化する効果もあります。
主な対応内容を箇条書きにしてまとめてみると、下記のようになります。

事業所内での対応

・十分な換気
・消毒の徹底(主にトイレやドアや床などの共有部)
・消毒液の設置と使用の呼びかけ
・廃棄物処理についての確認(とくに人が使ったもの)
・衛生用品の管理
・施設内団体プログラムやイベントの中止
・職員間の情報連携

職員への対応

・出勤前、および出勤後の職員の検温と、組織での健康状態の把握
・職員に同居家族がいる場合、家族の健康状態の確認
・時差出勤や会議の削減で3密の防止
・飲食時など、事業所休憩室で他の職員との距離をたもつ
・マスクや消毒液使用を徹底
・不要不急の外出自粛

利用者への対応

・来所前および来所時の検温(訪問の場合は訪問時に検温)
・マスクや消毒液の利用
・利用者の発熱時の隔離および、その際に対応した職員の管理
・自主的な来所自粛の場合、訪問介護や電話でのフォロー

つきそい家族・業者への対応

・荷物の受け渡しは玄関もしくは決められた区画でおこなう
・施設内に立ち入る際は検温をおこなう
・マスク着用、手指消毒の徹底
・やむをえない場合をのぞいて面会を制限
・個人宛の荷物は極力送付してもらう
・ボランティアや実習生の受け入れを中止

基本的なことではありますが、注意する項目が非常に多いため、つい見落としてしまうようなこともあります。チェックリストにして可視化することですべての職員が把握ができますので、まずはリスト化して事業所内で共有し、現場の混乱を避けましょう。

不足する衛生資材と再利用について

そもそも、マスクをはじめとした衛生資材が現在不足傾向にあります。
下記、全国ホームヘルパー協議会の衛生資材状況の調査結果を見ても明らかです。

出典元:全国ホームヘルパー協議会 新型コロナウイルス感染症によるホームヘルパー業務への 影響等に関する緊急アンケート集計結果

1カ月ほどで備蓄がなくなってしまう事業所が過半数をしめており、新型コロナウイルス感染症については長期の対応が見込まれることから、衛生資材の管理についても再利用含め検討が必要です。

厚生労働省からマスクや防護服の再利用への例外的取り扱いについて通知が発令されています。
下記厚生労働省からの通知文に、実際に衛生資材を再利用する際の消毒の仕方や留意点がこまかく記載されていますので確認しておきましょう。

厚生労働省
サージカルマスク、長袖ガウン、ゴーグル及びフェイスシールドの 例外的取扱いについて

今利用できる新型コロナウイルス感染症関連の資金対策

緊急事態宣言の解除が見込めない今、感染症対策だけではなく事業所の運営自体も長い目線で考える必要があります。
職員の生活がかかっていることはもちろんですが、その施設が唯一の介護施設であるエリアの場合、そこが存続できないとなると利用者にとっても死活問題となってしまうのです。
そのため、半年~1年先まで見越した資金計画を整理しましょう。
返済義務のない助成金を中心にいくつか紹介していきます。

雇用調整助成金(返済不要)

従業員を抱えている場合、すぐに申請すべきは雇用調整助成金(厚生労働省管轄)です。
今回の新型コロナウイルス感染症の影響の受け、事業活動を縮小せざるをえなくなった事業主が、雇用維持のための休業手当に要した費用を助成してくれます。
通常よりも条件が緩和され、2020年4月1日~6月30日の緊急対応期間中は、全ての業種について特例措置が実施されています。助成率については下記になります。

出典元:厚生労働省 雇用調整助成金

・申請方法
こちらは、最寄りの労働局、もしくはハローワークの管轄となっています。
申請について、動画で解説もされていますので、厚生労働省のホームページで確認してみましょう。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/pageL07.html

持続化給付金(返済不要)

休業や利用者の激減で大幅に売上が落ち込んでいる場合、持続化給付金(経済産業省管轄)も申し込みましょう。

・給付条件
新型コロナウイルス感染症の影響により、売上が前年同月比で50%以上減少している事業者もしくは個人事業主。

・支給額
法人…上限200万円、個人事業主…上限100万円。
ただし、昨年1年間の売上からの減少分が上限。売上減少分の算出方法としては下記になります。

前年の総売上(事業収入)-(前年同月比▲50%月の売上げ×12カ月)

・申請方法
こちらの申請の詳細については、下記に明記されています。
令和2年補正予算成立次第申し込み窓口開設予定のため、すぐに申請できるよう昨年との売上比較を事前に準備しておきましょう。

出典元:経済産業省 持続化給付金 に関するお知らせ

新型コロナウイルス感染症特別貸付

こちらは日本政策金融公庫管轄の融資です。
新型コロナウイルス感染症の影響を受け、一時的な業況悪化があり、次の1または2のいずれかに該当し、かつ中長期的に業況が回復し、発展することが見込まれる方であれば貸付を条件つきですが無利子で受けることができます。返済は必要ですが、無利子でまとまったお金を調達可能です。

1. 最近1カ月の売上高が前年または前々年の同期と比較して5%以上減少している方
2. 業歴3カ月以上1年1カ月未満の場合等は、最近1カ月の売上高が次のいずれかと比較して5%以上減少している方

詳しくは下記日本政策金融公庫のサイトから確認してください。

出典元:日本政策金融公庫 新型コロナウイルス感染症特別貸付

そのほか、緊急時における金融施策が各自治体から出ています。自治体によって内容が異なりますので、各種融資について在籍する自治体のホームページを確認しておきましょう。
また、銀行や保険会社なども無利子の融資を開始しています。
いずれも申請に時間がかかりますので、資金繰り計画に応じて早めに検討しましょう。

介護従事者への支援

4月10日、介護施設を運営する複数の事業者が連名で政府に「危険手当」についての要望書を提出しています。
従事者への手当、マスクなどの衛生資材の支給や、雇用調整助成金の条件緩和措置、新型コロナウィルス感染症罹患者や濃厚接触者用の臨時介護施設の創設などを要望しています。

医療機関同様に、感染リスク最前線で働く介護施設やそのスタッフへの支援はまだまだ足りていません。
そのため、自治体が国の支援を待たず、自治体予算で各方面への支援を進めています。

注目すべきは福岡県福岡市の『高齢者、障がい者介護従事職員への特別給付金』です。
高齢者や障がい者の介護施設,デイサービスなどの通所施設,ホームヘルプやケアマネジャーなどの事業所1施設当たり15~150万円を給付し、感染リスクの最前線で働く人々を少しでも労い、安心して働いてもらいたいという意図での給付です。

このように、自治体独自で支援に取り組むケースもありますので、在籍する自治体の情報は随時確認しておきましょう。

訪問介護と電話の活用で利用者と家族のフォローをしよう

介護施設は食事や入浴の介助もあることから、医療機関同様に新型コロナウイルス感染症のリスクが高い業種となります。実際に複数の介護施設でクラスターが発生したこともあり、事業の縮小やサービスの休止が求められています。
しかし、介護サービスは介護保険があることからこまかなルールがとり決められており、そのせいでリスクを増長させてしまうことも多くありました。

そのため政府から、「新型コロナウイルス感染症に係る介護サービス事業所の人員基準等の臨時的な取扱いについて」という形で特例措置が出されています。

新型コロナウイルス感染症に係る介護サービス事業所の人員基準等の臨時的な取扱いについて

今回、介護保険の適応となる介護サービスに、政府が特例で措置をだしています。
新型コロナウイルス感染症を防止するために必要最低限のサービス提供した場合、介護報酬で定められた時間を満たせないケースや、介護サービス提供に必要な面談や会議等をどうしたらいいのかなど、現場でどのように取り扱うべきか明確になりましたので一部を紹介します。

通所リハビリテーションの休業による訪問リハビリテーションへの変更

介護予防通所リハビリテーション事業所が休業し、代替サービスとして「既に計画上サービス提供をおこなうこととされていた介護予防訪問リハビリテーション事業所が、当初計画されていたサービスに上乗せしてサービス提供を行う」場合には、代替サービス分を別途、介護予防訪問リハビリテーションとして算定することが可能になりました。

訪問介護の特定事業所加算

「定期的な会議の開催やサービス提供前の文書による指示・サービス提供後の報告」について、新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、電話、文書、メール、テレビ会議などの「対面をともなわない代替手段」による開催が可能になりました。
そのため、電話でも介護保険の加算項目としてカウントされます。
他のサービスにおける「定期的な会議」開催についても同様に考えてよいとの見解であるため、3密の機会を大幅に抑えることができます。

サービス時間の短縮・延長についての加算

「20分以上45分未満の生活援助」について、外出自粛要請等の影響により、例えば週末前の買い物が混雑のために時間がかかるなどして、実際の生活援助時間が45分を大きく超えた場合には、利用者に「『45分以上の生活援助』の報酬を算定する」旨を説明し、請求前に同意が得られる介護支援専門員(ケアマネジャー)が必要と認めたことを条件に「45分以上の生活援助」の報酬を算定することが可能になります。この場合、保険者からの求めに応じて、訪問介護計画・居宅サービス計画に必要な変更が必要です。
そのほかにも最低限の介助をおこなった場合、最低時間の20分に満たない場合でも20分としての計算が可能になっています。

こういった対応により事業所もリスクを減らしながら運営を続けることができ、介護保険も今まで通り適応できるので、経営面からいっても活用すべきでしょう。

場合によっては、電話での確認のみは不十分だと感じるケースもあるようですが、感染リスクをふまえた当面の対処法としてはベストです。
デイサービスの休止・利用自粛などで、家庭内でストレスを抱える利用者やその家族も多く、少しでも工夫してサービス提供を続けることで、家族内のストレスも緩和することができるでしょう。
この介護サービスについての臨時的な取り扱いについては、詳しくは下記厚生労働省のサイトにて掲載されています。

厚生労働省
「新型コロナウイルス感染症に係る介護サービス事業所の人員基準等の臨時的な取扱いについて」のまとめ

オンライン面会でリスクのないコミュニケーションを

老人ホームなどの入居型介護施設の場合、入居者の孤立も避けなくてはいけません。
現状、外部からの面会は新型コロナウイルス感染症のリスクが高まってしまうため、各事業所で中止しているところが多いです。
新型コロナウィルス感染症の拡大が進んだ2月から面会に制限を設けている介護施設も多く、このままいくと家族に数カ月会えないという可能性もじゅうぶんにありえます。

入居者だけではなく、家族側が不安に思うことも多いため、電話や、画面上でオンライン面会できる制度を整えていきましょう。大きな施設の場合は事業所でタブレット端末を導入するなど対処をすすめているところもありますが、小規模事業所の場合は、LINEなど無料通話アプリを活用したり、居住者個人のスマホで利用方法をレクチャーすることで費用をかけずに取り組んでいる施設も見られます。

また、インターネット接続がいらず、簡単に扱える製品もあるので、そういったものを活用をしていくのもよいでしょう。
たとえば、SIMカード内蔵型見守りカメラ「みまもりCUBE」は、現在新型コロナウイルス感染症の影響により、入居者との面会を禁止とした介護施設に無償提供をすすめています。

出典元:みまもりCUBE

IT系サービスの企業からもこういった支援をしているところが複数ありますので、こういったサポートをうまく活用しながら、利用者やその家族が安心できる環境作りを目指しましょう。

現在、切実に介護を必要としている方は多くいらっしゃいます。
感染リスク最前線にいるからこそ慎重な対応が必要となりますが、自治体や近隣の介護サービス事業所とも連携をとり、介護サービスの崩壊を防いでいきましょう。

出典元:
東京都防災ホームページ
公益社団法人 全国有料老人ホーム協会
サージカルマスク、長袖ガウン、ゴーグル及びフェイスシールドの 例外的取扱いについて
福岡市 高齢者・障がい者介護従事職員への特別給付金(新型コロナウイルス感染症対策)
厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部障害福祉課
緊急事態宣言後の障害福祉サービス等事業所の対応について
埼玉県 新型コロナウイルス感染症について(介護保険事業者向け)

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