ヘルスケア&介護・看護・リハビリ業界の応援メディア
介護・看護・リハビリ 2020-05-19

利用者の方の心を開くには? 介護福祉士の日常あるある#4【Q&A編】

よりよい介護環境とするために、利用者の方と仲良くなる取り組みを行ってきたというベテラン元介護福祉士の國廣幸亜さん。國廣さん曰く、利用者の方が大切にしているものや思い出を見つけて話すことが仲良くなるポイント。國廣さんが実際に利用者の方と仲良くなるために行ってきた取り組みと、その心構えを学んでみてはいかがでしょうか。

Q.心の距離が遠いと感じた利用者の方は?

A.物事に対して疑り深い方もいらっしゃり、心の距離をよく感じることもありました。例えば、一人きりで生活をしていたFさんは、ヘルパーが家のものを勝手に持って帰るのではないかと、物事に疑り深い方でした。初めてお会いした私に対しても同様で、介助のしづらさを感じていました。

ほかには、娘さん夫婦と同居のGさん。認知症の症状も進んでいたためか、会うたびに「あんた…誰だっけ?」と言われ、一緒に散歩をしているときに、「家に帰して! 助けてください!」と私を悪者扱いする方にもお会いしましたね。

Q.どうやって心の距離を近づけた?

A.利用者さんのことを知り、そして私のことを知っていただく取り組みを行いました。Fさんは、5時間という長時間の訪問だったためか、だんだんと打ち解けていただけるようになりました。料理をするときにほかの料理に使う食材を間違えて全部味噌汁に入れてしまうというちょっとしたハプニングがあったのですが、むしろ距離感を縮めるきっかけに。その味噌汁がなぜか美味しく出来上がったことで、2人で和み、結果として以前よりも心を開いていただけました。いろいろな時間を共有したことが功を奏したのか、現場を離れる頃に「あなたでよかった…」と言ってくださり凄く嬉しかったことを覚えています。

Gさんは訪問回数が増えていくにつれ、私に心を開いていただけるようになったのか、散歩中に、以前よりも笑顔を見せていただくようになりましたね。加えて、Gさんの娘さんが私との相談を介して、落ち着いた様子を受け、Gさんも安心していただけたのか、以前よりも笑っていただくようになりました。その結果、家事のやり方を積極的に教えていただくようになりましたね。

Q.利用者の方と仲良くなるのにうってつけのものは?

A.「その方が大切にしてきたもの」を話題にすることだと思います。ご家族、お仕事、自分史、趣味など、それぞれ長年大切にしてきたものを見つけ、質問したり、下調べしたりして、出来るだけ話題の幅を広げることがポイント。それから、関係が悪化してしまうことを避けることも意識していました。

Q.関係の悪化を避けるアクションは?

A.第一印象で「こういう人だ」と決めつけずに介助を行うことを意識しました。利用者さんが1人で物事をこなす方だと思い込み、あえて介助をしなかったら「体がしんどいのでもっと助けてほしいのに」と言われてしまったことがありました。「頑張る方だからこそ気にかけて欲しいのでは?」と思い直し、それからは声をかけて体調を聞いてみたり臨機応変な介助を心がけたりすることをしていました。さらに、私がどんな介護福祉士なのかを伝えて自身のことを知っていただくことも、良好な関係を築くのにうってつけだと思います。

Q.具体的にはどんなアピールをした?

A.私は時間をかけてやり方を覚えていくタイプだと伝えました。そうすることで、私の慎重な性格なことをご理解いただき、優しく色々なことを教えてくいただくことが以前よりも増えました。利用者さんは人に教えるなど、だれかの役に立ちたいという思いがあり、ヘルパーのペースを気づかってくださることもあるので、自分の性格や介助の仕方をきちんと伝えることも大切だと思います。

Q.利用者の方と仲良くなるために必要な心構えは?

A.利用者さんが普段通りに生活ができるようにサポートするという、本来の立場を忘れないこと! 「仲良くなる」「心を開いてくれる」というのは大切なことですし仕事がよりスムーズに行えるようにもなります。しかし、私たち介護福祉士のミッションは利用者さんを普段の生活を送れるようにサポートすること。「仲良く」を一番の目的に置くと「仲が良いとは言えないので良い援助ができていないんだ…」と仲の良さで仕事ができるか否かを間違って判断してしまうことも。

また、「仲良く」なりすぎてヘルパーが交代する時、利用者さんを必要以上に悲しませてしまったり、深入りしすぎて業務外のお願いをされたりすることも。介護福祉士としての役割を常に頭に置いて、良い距離感を保つという意識を持つことが一番大切だと思います。利用者さんの生活を支えようと努力した結果、心を開いてくださるようなことがあったのなら、それは介護士としての大きな前進の証。胸を張って良いことだと思います。

國廣さん流・利用者の方と仲良くなる秘訣3箇条

1.利用者の方の趣味や性格、大切なものなどを理解する

2.第一印象で利用者の方の性格を決めつけない

3.自分自身のことも伝える

取材・原文/井上桂佑(レ・キャトル)
イラスト/國廣幸亜

教えてくれたのはこの人!

國廣幸亜さん

訪問介護や介護老人保健施設、デイサービスなど多くの介護現場を渡り歩いたベテランの介護福祉士として活躍し、現在は自身の豊富な介護経験を題材にした漫画などを手がける人気の漫画家として活躍中。
所有資格:介護福祉士。

この記事をシェアする

編集部のおすすめ

関連記事

近くの介護福祉士求人をリジョブケアで探す

株式会社リジョブでは、介護・看護・リハビリ業界に特化した「リジョブケア」も運営しております。
転職をご検討中の場合は、以下の地域からぜひ求人をお探しください。

関東
関西
東海
北海道
東北
甲信越・北陸
中国・四国
九州・沖縄