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介護・看護・リハビリ 2020-06-13

介護業界で働く――病院介護と施設介護の違い

介護業界で働く人の勤務地は特別養護老人ホームや老健施設などの介護施設がほとんどです。しかし、介護の仕事ができる場所は介護施設だけありません。病院の中には精神科や整形外科など多くの科で、入院患者の介護するために介護士が働いています。しかし、同じ介護の仕事でも、介護施設と病院では仕事内容は大きく異なります。

基本的環境の違い

病院 介護施設
運営(管理運営業務元) 医療法人 社会福祉法人・民間会社
目的 治療・回復・退院 生活・支援
対象 病気や怪我の方 要介護者
医師体制 常駐 不在
(施設種別によっては常駐)
看護師体制 多数 少数
一人当たりの床面積(居室) 狭い 広い
費用 病院の治療内容により異なる

病院と介護施設の最も大きな違いは、その利用目的です。病院は重度の病気や怪我の入院患者に対して「治療・回復・退院」を目的として技術を提供しますが、介護施設では要介護者(高齢者)に「心身ともに自分らしく生き生きとした生活」を送ってもらうことを目的としています。

職員数については、病院ですから当然医師や看護師の体制はしっかりしており、患者の病状が急変しても、すぐに対応できる状況であることがわかります。設備に関しても病院には診察室や処置室、手術室など治療に重点を置いたものが配置されています。

また、病院の場合はお見舞いとして患者のご家族が来院することはよくあることですが、デイサービスのような介護施設の場合、あまり利用者のご家族がくるようなことはありません。

仕事内容の違い

病院と介護施設では目的設定が違うわけですから、当然仕事内容も異なります。病院と介護施設における介護士(ケアワーカー)の仕事の違いは以下の通りです。

病院 介護施設
看護・介護計画 標準化 個別のケアプラン
主な業務 看護助手・看護補助 食事・排泄・入浴などの介助
レクリエーション なし あり
利用者の呼称 患者 利用者・入居者・入所者

病院での介護職員の仕事の多くは看護師の補助的なことや医療をする上でのサポートを行います。例えば、患者が検査に行く時に付き添ったり、医療用機器の洗浄をしたりなどがそうです。もちろん、介護施設のような食事介助、排泄介助、食事介助なども行いますが、基本業務は看護師の補助です。そのため、看護師との連携は必要ですし、看護師と介護士がお互いに尊敬し相談できる立場に居る必要があります。

介護施設では自分で考えて行動することが必要ですが、看護補助として働く病院ではどちらかというと医師や看護師に指示されたことをするといったイメージでしょう。

また、介護施設では季節のイベントや誕生日会、毎日のレクリエーションなどを催しますが、病院ではそのようなサービスはほとんどありません。病院の目的はあくまでも治療ですので、患者とのコミュニケーションを必要とはしていません。そのため病院で働く介護士はレクリエーションで頭を悩ませる必要はないと言えるでしょう。

考え方は人によって違うと思いますが、「仕事は介護施設の方がハードで辛いけど、病院での介護は単調なのでおもしろくない」という考え方の人が多いようです。が、病院では食事はベッドで食べるため「病院では食事の際の移乗がないから楽」だと考える人もいます。

給与や福利厚生の違い

<給与>
介護施設は民間会社や社会福祉法人によって運営されており、病院は医療法人によって運営されています。そのため介護スタッフとして働く場合の給与は介護施設より病院の方が高いことが多いようです。基本給や時給については、それほど給与差はありませんが、夜勤手当などの各種手当におおきな差がある場合が多いです。
しかし、病院で働く介護士は出世できずに、ずっと現場で働く状態の人がほとんどのようです。介護施設では勤続年数や能力によっては施設長になったりエリアマネージャーになったりなど出世することがありますが、病院勤務ではそれがありません。定年まで働くのか、一生続ける仕事としては考えていないのかによって、どっちで働くか考える必要があります。

<福利厚生>
病院で働く際のメリットはなんと言っても福利厚生面が一番です。地域や内部規則によっても異なりますが、医療費の自己負担が免除されたり、病院関係のサービスが使えるなどの事例があります。介護施設にはない利点があるので、ある程度はチェックが必要です。

一時的な高収入や好待遇を求める場合は病院で働くことが良いでしょうし、介護士としてのスキルを身につけたい、お年寄りと触れ合うことが好きなので利用者とコミュニケーションを取りたいと思い人は介護施設で働くのが良いでしょう。自分自身が仕事に何を求めるのかを冷静に分析して就職活動をすることが必要です。

注意点

<病院での介護は介護実務経験にならない可能性>
介護関連の資格を取るためには、「実務経験」が付きまとってきます。介護福祉士の受験資格もそのひとつで、3年以上の実務経験(在職期間が1,095日以上、実働日数が540日以上)が必要と決まっています。介護士の多くはこの介護福祉士の受験資格を得るために、頑張って3年間の実務経験をするわけですが、病院で介護職をする場合は実務経験に含まれない可能性があるのです。

病院で3年間介護の仕事をしたとしても、看護助手として働いているわけだから介護の実務経験には含まれないという考え方です。ただし病院によっては、介護の実務経験としてくれるところもありますので、就職する前に病院側に確認するようにしておきましょう。

<治療目的の介護施設もある>
介護施設は治療目的ではなく生活支援が目的とお話してきましたが、介護施設の中にも治療目的の施設があります。介護保険施設のひとつである介護療養型医療施設(療養病床)がそうです。
一般病棟などの医療機関に併設せれている場合が多く、介護保険が適用できる医療施設なのです。(※詳しくは「介護療養型医療施設とはをご覧ください)

<個人情報の取扱い>
介護施設も同様ですが、医療施設は特に個人情報の取扱いに注意する必要があります。取扱いをしっかり身に付けるには、厚生労働省の「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイドライン」が良いでしょう。Q&A(事例集)も記載してあるので参考にしてください。

実際に経験した人の意見

実際に病院で働いた経験のある人が、病院で働くことについてどう思っているのかを見ていただきましょう。もちろん、個人の感想なのであなた自身が同じように思うかはわかりませんし、ご意見の裏付けを取ったわけでもないので、「こう思う人もいるんだなぁ」ぐらいの感覚でご覧ください。

病院で働く人の考え方
良い点 悪い点
・ケアプランは看護師さんがやってくれるので助かります。
・食事のための移乗が必要ない
・レクの内容で頭を悩ませる必要がない
・指示があるので、やる事を考える必要がない
・サービス残業がない
・責任が必要ない
・病人を相手にするという緊張感がある
・給料が良い
・仕事が単調
・看護助手とは言っているけど、ほぼ雑用(一日の半分は掃除をしてる感じ)
・介護士が主体となって働けない
・患者とゆっくり会話ができない
・入浴を一人3分程度で済ませないといけない……
・介護士を「お手伝いさん、雑用」と考えている看護師がほとんどなので卑屈になる
・出世が望めない
・感染が不安……
・夜勤は体力仕事

 

まとめ

病院介護と施設介護は、同じ介護職であっても内容が全然違います。どちらで働くべきかを悩んでいる人は「給与面」「やりがい」「将来性」などを考慮して、自分自身が何を求めているのかを分析した上で決めるべきだと思います。

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