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特集・コラム 2023-02-10

ガイドヘルパー(移動支援従業者)とは? どんな種類があるの? 資格の取得方法と取得のメリットを解説

介護の仕事をしたい人のなかには、ガイドヘルパー(移動支援従業者)を目指している人もいるのではないでしょうか。ガイドヘルパー(移動支援従業者)は、メリットややりがいが多く今後も需要が高まることが予想される業務です。

今回の記事でガイドヘルパー(移動支援従業者)についての基礎知識をつけ、資格取得を目指してみましょう。

目次
  1. ガイドヘルパー(移動支援従業者)とは? どんなお仕事なの?
  2. 移動支援従業者の種類と制度とは? 仕事内容を紹介
  3. 移動支援従業者になるには資格が必要?
  4. 移動支援従業者の資格を取得する3つのメリットとは?
  5. 移動支援従業者が活躍できる場所とは?
  6. 移動支援従業者のやりがい・魅力とは?
  7. 移動支援従業者の仕事はここが大変!
  8. 移動支援従業者に向いてる人はどんな人?
  9. 移動支援従業者は障害がある方の外出支援をおこなうお仕事

ガイドヘルパー(移動支援従業者)とは? どんなお仕事なの?

まずは、ガイドヘルパー(移動支援従業者)とはどんな仕事なのかを把握しておきましょう。なお、ガイドヘルパーは「移動介護従業者」というのが正式名称です。この記事では、以下「移動支援従業者」と表記します。

それでは、まず、移動支援従業者の概要について解説します。

障害があり一人で外出するのが困難な方に必要な介助をする

移動支援従業者とは障害があり、ひとりで外出するのが困難な方に向けて、必要な支援や介助を提供する者のことをさします。多くの介護資格のように介護保険制度にもとづいたものではなく、障害者総合支援法にもとづいた職業です。

具体的な仕事内容としては、移動支援や生活介護、手続きの代行などがあげられます。名前のとおり、まさにガイド(案内人)であり、ヘルパー(介助者)であるといえるでしょう。どのような障害を持つ方を対象にするかで種類がわかれており、仕事内容も種類によって若干異なるのが特徴です。

障害がある方は、ひとりで外出するのが困難であるがゆえに、余暇活動のみならず必要な外出まで制限されてしまうことが多いです。散歩や旅行を気軽に楽しむことはもちろん、障害の度合いによっては、病院や学校、勤務先への往復もままなりません。外出を支える移動支援従業者は、そんな障害がある方の生活を豊かにする、非常に重要な役割を担う職業です。

移動支援従業者の種類と制度とは? 仕事内容を紹介

移動支援従業者はどのような障害を持つ方を対象にするかによって、その種類がわかれています。ここからは、移動支援従業者は制度によってどのような種類にわけられているのか、そしてそれぞれの仕事内容について確認しておきましょう。

全身性障害者移動介護従業者|四肢の機能障害がある方のサポート

移動支援従業者のなかでも、四肢の機能障害がある方を対象としているのが、全身性障害者移動介護従業者です。全身性障害者とひとくくりにまとめられてはいますが、脳血管障害・事故の後遺症・脳性麻痺・ALSや筋ジストロフィーなど、その疾病は利用者によって異なります。移動支援のほか、必要に応じて生活介護もおこなうのが特徴です。

同行援護従業者|視覚障がい者(児)のサポート

移動支援従業者のなかでも、視覚に障害を持つ方を対象としているのが、同行援護従業者です。制度対象となる方は、同行援護アセスメント票の点数のほか、身体介護の有無によって決定されます。歩行の介助や誘導、生活介護のほか、道の状況などを口頭で解説する役割、必要に応じた代筆や代読などもおこなうのが特徴です。

同行援護従業者についてさらに詳しく知りたい方は、下記の記事もチェックしてみてください。

ガイドヘルパーの同行援護とは? 同行援護従業者になる方法と資格取得のメリットを解説

行動援護従業者|知的障がい者(児)・精神障がい者(児)のサポート

知的・精神的障害を持つ方を対象としているのが、行動援護従業者です。制度対象となる方は、「知的・精神的障害により行動上の困難が大きく常に介護を必要とする方」と定められています。

なかでも、「障害支援区分が3以上かつ行動関連項目の合計が10点以上である者」に限定されているのです。知的・精神障害といってもその種類はさまざまであり、行動援護従業者には利用者にあわせた対応が求められます。

そのため、業務内容も移動支援や生活介護のみならず、外出前後の衣服の着脱・危険を回避するための援護・問題行動への対処・コミュニケーションの支援など、非常に多岐にわたるのです。

なお、行動援護従業者については、下記の記事でより詳しくお伝えしています。

知的障害者をサポートするガイドヘルパーとは?|行動援護従業者の仕事内容と目指す方法を紹介

強度行動障害従業者

知的・精神障がい者には、自分や他人の体を傷つける・命の危険にかかわる行動を取るなど、「強度行動障害」を持つ人も少なくありません。そのような方の介護をおこなうのが「強度行動障害従業者」です。

行動援護従業者と混同されやすいですが、移動支援従業者ではなく、外出に限らず日常的な生活すべてのサポートをおこないます。

移動支援従業者になるには資格が必要?

移動支援従業者になるには、どのような資格が必要なのでしょうか。移動支援従業者になるための資格要件について詳しく解説します。

かつて移動支援従業者として働くためには、各都道府県が指定する養成研修を修了しなければなりませんでした。各市町村が資格要件を定めるようになった現在でも、以前の流れを受け継ぎ、養成研修の修了を資格要件のひとつにあげている自治体は少なくありません。

あくまで資格要件を満たすひとつの方法にとどまるため、各自治体の資格要件をチェックして、自分にあった方法を選択するのが大切です。養成研修は移動支援従業者の種類ごとにわかれているので、希望する就業内容にあったものを選ぶようにしましょう。

全身性障害者移動介護従業者養成研修

この従業者として就業したい方は、全身性障害者移動介護従業者養成研修を受けましょう。受講することで、移動支援従業者としての基礎的な知識や技術のみならず、移動支援従業者制度そのものや全身性障害者の疾病について学べます。

修了までの目安期間は3日程度、かかる費用は3~4万円程度です。介護職員初任者研修・実務者研修・介護福祉士などの有資格者は、一部科目が免除されるため、より短期間かつ安価に取得できます。

同行援護従業者養成研修

この従業者として就業したい方は、同行援護従業者養成研修を受けましょう。一般課程と応用課程の2種類があり、一般課程修了者または移動支援従業者養成研修視覚障害課程の修了者のみが、応用課程を受講できます。

同行援護従事者として働くためには一般課程のみの受講で構いませんが、サービス提供責任者になるためには応用課程を修了せねばなりません。受講することで、一般課程では同行援護についての基礎知識を、応用課程では具体的な交通機関の利用などを、それぞれ学べます。

修了までの目安期間は一般課程3日、応用課程2日程度です。

行動援護従業者養成研修

行動援護従業者養成研修を受講することで、生活介護や移動援護のみならず、知的・精神的障害がある利用者への適切な対応を学べます。問題行動の引き金となる刺激からの離し方、問題行動が起こった場合の対処法、言葉だけでないコミュニケーションのとり方などは、とくに行動援護従業者ならではの必要知識です。

終了までの目安期間は3日程度、かかる費用は3~4万程度。都道府県によって異なりますが、一般的に受験資格などはとくに設けていません。

介護福祉士が移動支援従業者として働くには?

介護福祉士が移動支援従業者として働く場合、視覚障がい者(児)の施設・事業所などで1年以上働いた経験がある人は、同行援護従業者の資格があると認められます。

また、視覚障害者施設での経験がなくても、上記のような移動支援従業者の資格を取る際に免除される科目があるので、無資格の人よりも低額かつ短時間で取得が可能です。

移動支援従業者の資格を取得する3つのメリットとは?

ここまで、移動支援従業者の概要や資格について見てきました。つづいては、移動支援従業者の資格を取得するメリットを紹介します。

1. 仕事の幅が広がり、介護への理解が深まる

移動支援従業者の資格を得ることにより、新たにできる仕事が増え、活躍するシーンをひろげることが可能です。すでに他の介護業務にたずさわっている人も、移動支援従業者のための勉強をすることで、介護への理解が一層深まります。

2. ひとりひとりに合った介護を実践できる

移動支援従業者は、利用者と1対1で向き合って支援をおこなう仕事のため、より利用者に適した介護を実践しやすくなります。通常の介護現場のような「1対多」では実現が難しかった、こまやかな気配りや介助もおこないやすいです。

3. 比較的短期間で取得できる

移動支援従業者の資格は、短期間で取得できるのが特徴です。前でも触れましたが、すでに取得している資格によってはさらに免除される科目もあるので、数ある介護関連の資格のなかでも比較的取得までの負担が少ないといえます。

移動支援従業者が活躍できる場所とは?

ここからは、移動支援従業者が活躍できる主な就業場所について説明します。

訪問介護事業所や公的機関など

移動支援従業者の就職先としては、訪問介護事業所、社会福祉協議会のような公的機関、障害者施設・高齢者施設などの施設が挙げられます。利用者からの要望があった際に派遣されたり、勤め先によっては他の介護業務と並行しておこなわれたりする場合もあります。

登録ヘルパーとしてパートタイムで働く道も

移動支援従業者の仕事は、フルタイムで正職員として働くほか、パートタイムで自分の好きなときに従事できる、登録ヘルパーとしての勤め方もあります。ただし、多くの場合時給制で、自分が働きたいときに必ずしも仕事があるとは限りません。

希望に沿えるとは限らない点には注意しつつ、短時間でもいいから移動支援従業者として仕事をしたいという方は、選択肢に加えてみてはいかがでしょうか。

移動支援従業者の仕事を探している方は、ぜひ下記のページで自分に合いそうな仕事を探してみてください。

介護・看護・リハビリの求人・転職・募集│リジョブ

移動支援従業者のやりがい・魅力とは?

ここまでの内容から、移動支援従業者という仕事への興味がさらに高まってきた方もいらっしゃるのではないでしょうか。移動支援従業者のやりがいや魅力についてお伝えしましょう。

利用者に外出の喜びを味わってもらえる

利用者のなかには、外出するという行動をあきらめている人も多いです。しかし、移動支援従業者が付き添い、援護することによって、自分も外に出られるんだという喜びや外出の楽しさを味わってもらえるようになります。

言葉では伝えられない人もいますが、表情などから喜んでもらえていることが伝わると、自分の仕事が利用者の役に立てたことを実感でき、やりがいを感じられるでしょう。

体への負担が少なめ

移動支援従業者の仕事は、外出のサポートがメインのため、ほかの直接的介護に比べて肉体的な負担が少なめです。利用者の体を抱えるなどの身体介護をする機会は少ないので、力に自信のない方でも務めやすいでしょう。

需要が高く将来性もある

移動支援従業者は現在も需要が高く、高齢化が進んでいくなかでこれからも必要とされる機会の多い、将来性が高い仕事です。今から資格を取得してもまったく遅くないので、ぜひ取得を検討してみてください。

移動支援従業者の仕事はここが大変!

移動支援従業者は、大きなやりがいと魅力にあふれた仕事だということはおわかりいただけたのではないでしょうか。しかし、その反面、大変なことがあるのも現実です。移動支援従業者の業務を遂行するにあたって、どんな点が大変なのかについて見ていきましょう。

障がい者に理解のない人がいる

障害のある方も暮らしやすいような社会制度が整えられてきてはいますが、障がい者に対する理解のない人がいるのも、また事実です。家や施設を出れば、障がい者に非協力的な人や、障がいに理解のない人もいるため、悪意を向けられたり、心ない言葉を言われたりしてしまう可能性も、残念ながらあるといえます。

事前の予定と行動が合わなくなることがある

移動支援従業者の仕事を行ううえで、事前に綿密な計画を立てておく、という人もいるでしょう。しかし、利用者の要望に合わせて行動するため、立てておいた計画と当日の行動がずれてしまうこともあります。

いつも計画通りにいくとは限らないため、臨機応変にスケジュールを立てなければいけなくなることは覚えておきましょう。

神経を使い強い緊張のなかで仕事をする必要がある

移動支援従業者の仕事は、自分ひとりで行動するものではありません。同行する利用者が危険を避け、目的地まで安全にたどり着けるようサポートすることが主な業務です。そのため自分ではなく利用者の周囲にこそ気を配る必要があり、勤務中は常に強い緊張感のなかで仕事をしなければなりません。

提供できるサービス外の要望もある

移動支援従業者が提供できるサービスは、国の制度で定められています。たとえば、通勤や通学、通院といった外出は、買い物やレジャーといった余暇の外出ではないため、サービスを提供できないケースもあります。

しかし、利用者が移動支援従業者のサービス範囲を明確に理解していないと、定められた範囲外のサービスを要望することもあります。そういったケースに直面した場合、利用者の理解を得られるように、きちんと説明して断ることも必要です。

移動支援従業者に向いてる人はどんな人?

移動支援従業者のやりがいと魅力、大変な点を知ることで、自分が移動支援従業者として働けるのか考えてしまう人もいるのではないでしょうか。どんな人が向いているのか、詳しく見てみましょう。

人と交流するのが好きな人

移動支援従業者は、利用者とコミュニケーションを取り、要望を汲み取ってサポートをする仕事です。そのため、人と交流するのが好きで人に合わせてコミュニケーションを工夫することができる人は向いているといえるでしょう。

臨機応変な対応ができる人

移動支援従業者の大変な点で、「事前の予定と行動が合わなくなることがある」ということを前述しました。外出のサポートはすべて予定通りに行えるわけではないので、予想外の出来事が起こった際にも、冷静に臨機応変な対応が求められます。

方向感覚が優れている人

利用者の目的地をすべて事前に訪れておくことは難しく、自分が行ったことのないところへの外出を希望されることもあります。そのため、方向感覚が優れている人も移動支援従業者に向いているでしょう。

行ったことがない場所へ向かう際、土地勘に自信がなくても、地図を確認して案内できる人であれば問題ありません。

社会貢献がしたい人

社会貢献がしたい、と考えている人には、移動支援従業者はぴったりの仕事といえるでしょう。困っている人を助け社会貢献がしたい、という人には特におすすめです。

移動支援従業者は障害がある方の外出支援をおこなうお仕事

移動支援従業者はさまざまな障害がある方に対して、外出時の支援や介助をおこなうお仕事です。どのような障害を持つ方を対象にするかによっていくつかの種類にわかれており、それによって仕事内容も若干異なります。移動支援従業者として就業するためには、各市町村が定める資格要件を満たさなければなりません。

養成研修を修了するのがメジャーな方法ですが、各市町村の資格要件をしっかり確認し、自分に合ったものを選ぶようにしましょう。移動支援従業者は障害のある方の生活を豊かにする、やりがいのあるお仕事です。介護や福祉に関心のある方などは、ぜひ目指してみてはいかがでしょうか。

引用元
厚生労働省:障害者等の移動の支援について
厚生労働省:6 同行援護について
厚生労働省:行動援護に係る報酬・基準について ≪論点等≫
千葉県:障害福祉に関する研修
三幸福祉カレッジ:全身性障がい者ガイドヘルパー 養成研修
未来ケアカレッジ:同行援護従業者養成研修
籐仁館医療福祉カレッジ:神奈川県・東京都・埼玉県知事指定 行動援護従事者養成研修
広島県:(参考資料 3) 同行援護従業者等の取扱いについて(平成30 年3 月31 日までの経過措置)
福岡県:居宅訪問系サービス従業者の資格要件
東京都福祉保健局:全身性障害者移動支援従業者養成研修課程(通学形式)

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