ヘルスケア&介護・看護・リハビリ業界の応援メディア
特集・コラム 2020-08-11

社会福祉士の行動規範とは? どんな内容が書かれているの?

福祉・介護の業界においては、福祉・介護に携わる人間の行動規範を定めた倫理綱領があります。看護者ならば「看護者の倫理綱領」、精神保健福祉士ならば「精神保健福祉士の倫理綱領」などです。それぞれの職種ごとに行動規範が細かに規定されています。

今回ご紹介するのは、福祉業界の一職種である社会福祉士の倫理綱領についてです。社会福祉士の倫理綱領の概要はもちろん、倫理綱領で示されている行動規範について詳しく解説します。

社会福祉士の行動規範とは?

社会福祉士における行動規範とは、一体どのような規定があるのでしょうか。また、ほかの職種の行動規範とはなにが違うのかを説明します。

倫理綱領に基づいた社会福祉の実践について示したもの

「行動規範」というのは、あるものごと、ある仕事などにおいて、どのように行動すべきか、またはなにをしてはならないか、ということを示したものです。社会福祉士として働く場合も、この行動規範にしたがって活動することが求められます。

社会福祉士における行動規範は、倫理綱領にもとづく社会福祉活動の実践について示されたもので、社会福祉士はこの行動規範を基準として行動および考え方を実践しなければなりません。

倫理綱領とは?

1995年、公益社団法人日本社会福祉士会は社会福祉士の活動における倫理基準を示した「ソーシャルワーカーの倫理綱領」を採択しました。のちに、この綱領は2005年に改定がなされています。

社会福祉士は、社会的・身体的・精神的に弱い立場にある人を対象にして支援活動をおこなうのが仕事です。そのため、福祉や医療に関する深い知識を有していることはもちろんですが、支援対象者と関わるうえでの高い道徳心(モラル)も求められます。

この倫理綱領には、弱い立場にある人に対してどのように行動をすべきか、どのような思考を持つべきかについて示されているものです。また、社会福祉士として基本となる倫理観、仕事上の責任とはどういうものかといった点についても明確に示されています。

1.「人間の尊厳」 / 社会福祉士は 、すべての 間を、出自、人種、性別、年齢、身体的精神的状況、宗教的文化的背景、社会的地位、経済状況などの違いにかかわらず、かけがえのない存在として尊重すること。
2.「社会正義」 / 社会福祉士は、差別、貧困、抑圧、排除、暴力、環境破壊などのない、自由、平等、共生に基づく社会正義の実現をめざすこと。
3.「貢献」 / 社会福祉士は、人間の尊厳の尊重と社会正義の実現に 貢献すること。
4.「誠実」 / 社会福祉士は、本倫理綱領に対して常に誠実であること。
5.「専門的力量」 / 社会福祉士は、専門的力量を発揮し、その専門性を高めること。

倫理綱領の「価値と原則」の項目では、以上のように記されています。

行動規範にはどんな内容が書かれているの?

倫理綱領に示されている行動規範は、具体的にどんな内容なのかを確認しておきましょう。項目数が多いので、ここではおもな項目のみをご紹介します。

1. 利用者に対する倫理責任|利用者との関係や説明責任など

利用者に対する倫理責任では、「利用者との関係」や「説明責任」などについて示されています。

・社会福祉士は、利用者と私的な関係や性的な接触を持ってはならない。
・社会福祉士は、利用者との専門的援助関係を基礎としてパー トナーシップを尊重しなければならない。
・社会福祉士は、自身の専門職の立場を私的な事柄に利用してはならない。
・社会福祉士は、利用者から正規の報酬以外の報酬(金銭や物品などを)受け取ってはならない。
・社会福祉士は、自身の専門職上の義務および利用者の権利を明確に説明したうえで援助をしなければならない。
・社会福祉士は、利用者の支援の目的のためにのみ個人情報を使用することができる。
・社会福祉士は、支援を目的とする場合であっても、利用者の承諾なしに個人情報を使用してはならない。
・社会福祉士は、業務上、必要範囲を超えて情報収集をしてはならない。
・社会福祉士は、利用者に対 して肉体的または精神的な苦痛・損害を与えてはならない。

2. 実践現場における倫理責任|ほかの専門職との連携や綱領の遵守など

実践現場における倫理責任では、「ほかの専門職との連携・協働」や「実践現場と綱領の遵守」などが示されています。

・社会福祉士は、他の専門職と連携を図り、所属する施設や機関におけるサービスの質の向上や開発について積極的に提案しなければならない。
・社会福祉士は、福祉分野における法律や制度に関する知識を積極的に学び、その専門性を発揮できなければならない。
・社会福祉士は、ほかの専門職との連携・協働にあたり、連絡や調整の役目を担わなければならない。
・社会福祉士は、現場においてほかの社会福祉士が倫理綱領を熟知するように働きかけなければならない。
・社会福祉士は、現場において倫理綱領に反することを実践してはならない、またそれを許してはならない。

3. 社会に対する倫理責任|社会への働きかけなど

社会に対する倫理責任では、「社会への働きかけ」「ソーシャル・インクルージョン」について示されています。

・社会福祉士は、弱く、不利益な立場にある利用者が、選択と決定の機会を行使できるような環境を作るために働きかけなければならない。
・社会福祉士は、利用者がサービスを受けられる権利を擁護し、その代弁活動をしなければならない。
・社会福祉士は、福祉計画や社会政策の影響力を認識し、地域福祉の活性化と増進に参加しなければならない。
・社会福祉士は、国際社会における文化的違い・社会的違いを尊重し、人種・民族・国籍・宗教・性別・障害などによる差別をなくすための活動を支えなければならない。

4. 専門職としての倫理責任|専門職の啓発や社会的信用の保持など

専門職としての倫理責任では、「専門職の啓発」「社会的信用の保持」「専門性の向上」などが示されています。

・社会福祉士は、自ら社会福祉士を名乗り、専門職として働くことの自覚を高めなければならない。
・社会福祉士は、自身が獲得している専門的な能力を利用者や市民、またはほかの専門職に対して知らせ、社会福祉士の役割の啓発に努めなければならない。
・社会福祉士は、個人としてだけでなく専門集団の一員として責任のある行動を取らなければならない。
・社会福祉士は、ほかの社会福祉士が倫理綱領に反する行動を取った場合、必要に応じて所属機関や日本社会福祉会に報告し、適切な行動・処置を取るように働きかけなければならない。
・社会福祉士は、社会福祉士に対する不当な批判や扱いに対し、その不当性や間違いを明らかにし、社会にアピールし、仲間を支えるように努めなければならない。
・社会福祉士は、互いに情報を共有し合い、研修や勉強会などの機会を活かして、常に専門性を高めるように努力しなければならない。

今回ご紹介した行動規範は、倫理綱領のなかの一部分となります。社会福祉士の行動規範をすべて知りたいという方は、公益社団法人日本社会福祉士会のホームページから確認してみてください。

社会規範は支援サービスのお仕事に欠かせない行動の基準についてまとめられたもの

倫理綱領の行動規範を読むと、社会福祉士という仕事はいかに高いモラルと積極性・専門職としての自覚が必要になるかがわかります。社会福祉士の仕事は「自分対利用者」の関係から始まり、同じ社会福祉士の仲間との連携や協力、専門職のアピール、地域社会・国際社会への貢献など、幅広い視野と規範にもとづいた行動が求められるのです。

非常に厳しい行動規範であるということは、それだけ専門性が強く、やりがいのある仕事であるともいえます。社会福祉士という仕事に関心のある方は、ぜひ倫理綱領を読み、その行動規範や専門性について学んでみてはいかがでしょうか。

出典元:
公益社団法人日本社会福祉士会 倫理綱領
日本ソーシャルワーカー協会 社会福祉士の倫理綱領

この記事をシェアする

編集部のおすすめ

関連記事

近くの社会福祉士求人をリジョブケアで探す

株式会社リジョブでは、介護・看護・リハビリ業界に特化した「リジョブケア」も運営しております。
転職をご検討中の場合は、以下の地域からぜひ求人をお探しください。

関東
関西
東海
北海道
東北
甲信越・北陸
中国・四国
九州・沖縄