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特集・コラム 2025-06-25

訪問介護の事業はひとりで開業できる?要求される基準や独立までの流れ、費用について解説

身体介護や生活援助を必要とするお宅に訪問して介護サービスを提供する訪問介護は、高齢者人口が増えていくにつれて、社会的なニーズが大きくなりつつある介護サービスです。

訪問介護の事業所を設立して、独立を目指す人も少なくありません。

しかし、いざ訪問介護で開業しようと思っても、どんな準備や審査が必要なのか把握できておらず、なにから手をつければいいのかわからない方もいるでしょう。

本記事では、訪問介護サービスによって提供できるサービスや独立開業するまでの手順、開業までにかかる費用、起業するなら利用しておきたい助成金について紹介します。

訪問介護事業所を立ち上げて、経営者として介護業界に携わりたい方は要チェックです。

訪問介護とは?提供できるサービスの種類

そもそも訪問介護とは、要介護認定を受けた利用者の自宅を専門知識をもったヘルパー(訪問介護員)が訪問して、以下のような介護サービスを提供する仕事です。

・身体介護:排泄介助・食事介助・入浴介助・体位変換・起床・就寝介助など
・生活援助:料理や洗い物・掃除・洗濯・買い出しなど
・通院等の乗車降車等の介助:要介護者の移動を送迎車でサポート

訪問介護はひとりでも開業できるの?

訪問介護の事業は、ひとりでは開業できません。その理由は、厚生労働省のガイドラインで訪問介護サービスの提供に必要な職員数について、以下の規定が定められているためです。

1.訪問介護職員等:介護福祉士・実務者研修修了者・生活援助従事者研修修了者など
2.サービス提供責任者:介護福祉士・実務者研修修了者・旧介護職員基礎研修修了者、旧ホームヘルパー1級課程修了者が従事するもの
3.管理者:常勤でもっぱら事業所管理業務に従事するもの

訪問介護職員等は常勤2.5人以上の人員、サービス利用者の40人に1人、もしくは50人の1人に対してサービス提供責任者を配置するほか、専従の管理者も配置しなければなりません。

また、3つの役割を兼任することはできないため、どんなに小規模な事業所でも最低でも3.5人以上の人員が必要です。

引用元
厚生労働省 老健局:訪問介護
日本ホームヘルパー協会:訪問介護員になるには

訪問介護で独立開業するにはどうすればいいの?具体的な流れを解説

訪問介護で独立開業するためには、「訪問介護事業所」を開設しなければなりません。ここからは、訪問介護で独立開業する方法について解説します。

1. 訪問介護事業所を開設するために必要な資格は?

訪問介護員になるには、介護職員初任者研修を受講することが必要です。さらに介護福祉士実務者研修を受けることで、訪問介護事業所に必要な「サービス提供責任者」の役割を担うことができるようになります。

介護福祉士実務者研修の過程を修了し3年の実務経験があれば、国家資格である「介護福祉士」を取得することが可能ですので、取得しておくとより望ましいでしょう。

引用元
厚生労働省 職業情報提供サイト jobtag:訪問介護のサービス提供責任者

2. 法人格を取得しよう|株式会社・NPOなど

介護保険事業は個人事業主では開業できません。「法人」であることが必須条件となります。続いては、個人で立ち上げることができる法人にはどのようなものがあるかを確認しておきましょう。

営利|株式会社

株主からの出資を集めて事業をおこなう株式会社です。株式を発行することで、返済期限のない資金を集めることができます。株式会社は決算報告をして、出資金の額に応じて利益を分配しなければなりません。

営利|合同会社

合同会社は資金や技術、労力などの出資者が経営もおこない、利益の分配も自由に決めることができます。「法人設立」を所轄の税務署に提出するだけで設立できるので手間や費用も少なくて済み、株式会社と比べると柔軟性を持たせた運営ができることが特徴です。

非営利|NPO

NPO法人は「非営利活動法人」の略称で、収益を分配することを目的としない社会貢献活動をおこなう法人です。NPOでは組織の構成員として理事3名・監事1名・社員10名が最低限必要となります。NPO法人を設立する際は、都道府県もしくは市区に必要書類を提出し、「NPO設立の認証」を受けなければなりません。多少手間がかかりますが費用はほとんどかからないうえ、税制上の優遇措置を受けることができます。

非営利|一般社団法人

一般社団法人は人の集まりを法人格として認めたもので、理事1人・社員2人以上が必要です。「法人設立」を所轄の税務署に提出して設立します。非営利法人であり、収益を上げた場合でも、理事や社員などの関係者に剰余金や残余財産を分配しないことになっているのです。非営利型が徹底されていると認められれば、税制上の優遇措置も受けることができます。

3. 事務所を設立しよう|設備に関する基準とは?

訪問介護事業所の事務室が必要な設備として定められています。事務室は事務机と椅子、書類棚などを置いたうえで、相談スペース、衛生スペースなどが確保できると理想的です。

4. 人員を確保しよう|管理者・サービス提供責任者・訪問介護員

訪問介護事業所には、ホームヘルパー(訪問介護員)のほかに「サービス提供責任者」と「管理者」が必要です。一人がそれぞれひとつに限り兼務することが可能で、3つの役割を兼務することはできません。

また、訪問介護事業所には常勤換算2.5人の訪問介護員が必要ですので、有資格者は全体で最低3人必要ということになります。利用者の体に触れる「身体介護」ができる資格である、看護師や准看護師などの資格でも訪問介護員として対応可能です。

5. 備品を揃えよう

訪問介護事業所の事務所では、訪問介護計画や介護保険の入力業務、連絡調整業務、相談業務などの事務がおこなわれます。事務机や椅子、通信手段である電話やパソコン、衛生管理用品などの備品をそろえましょう。

行政からの連絡はまだまだファックスで届く場合も少なくありませんので、電話はファックス兼用がよいでしょう。また、訪問のための自動車が必須となる地域もあります。

6. 指定申請書類を提出して審査を受けよう

訪問介護事業所を開設する際には、都道府県や市区に指定申請書類を提出して審査を受けなければなりません。以下のような人員基準・設備基準・運営基準を満たす必要があります。

【人員基準】※3つの役割を兼任することは不可
・訪問介護職員等:訪問介護に従事するスタッフが常勤で2.5人
・サービス提供責任者:サービス利用者40人に1人、もしくは50人に対して1人
・管理者:常勤でもっぱら管理業務に従事するもの1人

【設備基準】
・事務所(広さなどは定められていない)
・事務をおこなうための机と椅子が1つ以上
・電話やFAX、プリンターなどの備品
・タイムカード
・パソコン
・相談室、もしくは相談スペース
・感染対策の手洗い場や石鹸、消毒液、ペーパータオルなど
・鍵付き書庫(利用者ファイルを保存していくため)

【運営基準】
・内容・手続きの説明、および同意
・サービスの提供拒否の禁止
・受給資格等の確認
・要介護等認定の申請に係る援助
・心身状況等の把握
・居宅介護支援事業者等との連携
・法定代理受理サービスの提供を受けるための援助
・居宅サービス計画に沿ったサービスの提供
・居宅サービス計画等の変更の援助
・身分を証する書類の携行
・サービスの提供の記録など

ただし、指定申請書類の様式や要件は各都道府県や市区によって異なりますので、開設予定の自治体のホームページをチェックしたり問い合わせたりしてください。

引用元
厚生労働省:指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準

開業するためにはどんな費用がかかるの?

訪問介護事業所を開業するためにかかる費用には、どのようなものがあるのでしょうか。開業にかかる費用について解説します。

1. 法人設立費用|登記にかかる費用とは

訪問介護事業所を法人として登記する準備として、「定款認証手数料」と定款に貼付する収入印紙代がかかります。さらに、設立登記の際にも「登録免許税」が必要です。費用は法人の形式で異なります。株式会社では30万円程度、合同会社と一般社団法人では10万円程度の費用が必要です。NPOでは設立費用はほとんどかかりませんが、手続きに労力を要します。

2. 事務所の物件取得費用

訪問介護事業所を開設するためには事務室が必要です。事務室は六畳以上の広さを要しますし、狭くてもよいので相談室も必要です。事務室に自宅の一部を使う場合は費用を抑えることができますが、購入したり、賃貸したりして取得する場合には費用がかかります。都市部では10万円前後の賃料になります。また、車を使って訪問する場合には駐車場付きの物件か、近所に駐車場を借りることが必要です。

3. 人件費

常勤のホームヘルパーの人件費は月18~25万円が相場です。管理者を除き3人の有資格者が必要となりますので、月60万円前後の人件費が必要になります。介護報酬は翌月請求で支払いはさらに翌々月になりますので、開業から2~3カ月間の人件費はあらかじめ用意しておく必要があるでしょう。

4. 設備・備品費|車両も必要に

訪問介護事業所の事務所では、訪問介護計画や介護保険の入力業務、連絡調整業務などの事務がおこなわれますので、事務スペースにひと部屋が必要です。また、相談に応じるためにプライバシーに配慮した相談スペースも設置しましょう。

忘れがちなのが衛生管理のための設備です。トイレとは別に、洗濯室または汚物処理室といった衛生スペースを設け、手洗い場にはお湯が出る設備を用意しておきましょう。ビルの一室を借りた場合、トイレが共有だと衛生設備を整えるための出費が膨らんでしまいますので注意が必要です。訪問する際に使う車両の確保も必要となります。

自己資金でまかなえない場合は融資・助成金を利用しよう!

自己資金で訪問介護事業所の開業費用を用意できない場合には、国からの融資などを利用する方法もあります。どのような融資があるのか、確認しておきましょう。

日本政策金融公庫|新規開業・スタートアップ支援資金

新規開業・スタートアップ支援資金は、日本政策金融公庫がおこなっている制度です。これから新たに事業を始めるものや、事業を始めてからおおむね7年以内のものを対象とした創業関連融資のなかのひとつです。

この制度のうち、国民生活事業部で取り扱っている新規開業資金は、個人企業や小規模企業向けの小口融資で、平均700万円の融資がおこなわれています。

引用元
日本政策金融公庫:新規開業・スタートアップ支援資金

ソーシャルビジネス支援基金

ソーシャルビジネス支援基金は、日本政策金融公庫がおこなっている、NPO法人かNPO法人以外の保育サービス・介護サービス事業等を営む方、もしくは社会的課題の解決を目的とする事業を営む方が利用できる融資制度です。

事業をおこなうために必要な設備資金、および運転資金の用途に使用でき、設備資金にあてる場合は20年以内、運転資金にあてる場合は10年以内の返済期間が定められています。

融資限度額が7,200万円で、うち4,800万円が運転資金と設定されています。また、NPO法人とNPO法人以外で融資の利率が異なる点が特徴です。

引用元
日本政策金融公庫:ソーシャルビジネス支援資金

介護労働環境向上奨励金

介護労働環境向上奨励金は、訪問介護事業所などの労働環境を改善し、心身の負担の軽減する取り組みをおこなった事業者が利用できる奨励金です。

新たに訪問介護事業所を開業し、職員のための労働環境整備をおこなう場合も利用できます。

介護労働環境向上奨励金には2つの種類があります。

・介護福祉機器等助成:介護福祉機器の導入・運用によって労働者の負担を軽減し、労働環境の改善が見られた場合に支給される助成金(費用の最大1/2、300万)
・雇用管理制度等助成:雇用管理改善に向けた制度の導入・実施によって一定の効果が得られた場合に支給される助成金(費用の最大1/2、100万)

いずれも、計画を各都道府県の労働局に提出、計画に沿って導入・運用を実施。導入効果や職員の定着状況などを評価したうえで、助成金が降りるかどうかが判断されます。

引用元
厚生労働省:介護労働環境向上奨励金のご案内

訪問介護の事業でスムーズな開業を目指そう!

訪問介護事業所を開業するためには、会社を作って法人となることが必要です。介護職員初任者研修だけでなく介護福祉士実務者研修も受けて、サービス提供責任者の役割も担えるようにしておくとよいでしょう。

ただし、1人では訪問介護の事業所を開業できません。介護職員等で2.5人・サービス提供責任者1人・管理者1人が必要で、3つの職員を兼任することはできないためです。

また、訪問介護事業所を開設するためには、事務室の賃料・人件費・開業手続きなど費用がかかり、開業してから介護報酬が支払われるまでの2〜3カ月間の運転資金を準備しておくことが必要です。

日本政策金融公庫の新規開業・スタートアップ支援資金やソーシャルビジネス支援基金などのスタートアップのための融資を利用して、スムーズな開業を目指しましょう。

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