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特集・コラム 2020-07-25

「カイロプラクター」は体のゆがみを矯正して健康に導く仕事|ヘルスケアの仕事図鑑

ヘルスケアとは、健康を維持することや向上するための活動および健康管理のことです。私たちの周りには、ヘルスケアに関わるさまざまな仕事があります。そのひとつである「カイロプラクター」は、どのような仕事を行うのでしょうか。詳しく見ていきましょう。

ゆがみを直すことで体調を良好にする「カイロプラクター」

カイロプラクターとは、体に直接触れて体の不調を整える技術と知識を持った専門家です。脊髄や筋肉、骨格などを診断し、それらの異常を治すことによって体を正常に戻します。また、治療だけでなく健康維持や病気の予防なども行っています。

彼らの行う施術は、カイロプラクティックという技術を用いています。そのため、施術を行う人をカイロプラクターと呼びます。この項目では、カイロプラクターの仕事内容や普及状況について解説します。

カイロプラクターの仕事内容

カイロプラクターの仕事内容は、大きく分けて「施術」と「総合指導法」の2つがあります。

・施術

カイロプラクターの仕事としてまず思い浮かぶのが、施術です。体に直接触れて体のゆがみや痛みを軽減します。そのためには、まず問診で症状や既往歴などを確認することが重要です。聞き取りを行い、患者の今の状態を確認します。そして、実際に体を触って関節や筋肉、神経の動きを診て原因を探り、どのように施術を行うかを決めます。

症状に対する説明や施術方法を分かりやすく説明した後は、いよいよ実際の施術です。手技療法を用いて、一人ひとりに合わせた施術を行います。症状や施術方法によっては、超音波器といった機器を用いる場合もあります。いずれにしても、カイロプラティックの施術は痛みを伴わないものが主流です。

・総合指導法

脊椎や骨盤のゆがみは、普段の日常生活における癖や生活習慣が原因となることも少なくありません。施術で一時的に症状が良くなったとしても、普段の生活が変わらなければ症状がまた悪化するリスクも高くなるでしょう。

そのため、カイロプラクターは施術後に総合指導法と呼ばれる生活指導を行っています。具体的には、バランスの良い食事やサプリメントの提案などを行う栄養指導、家でもできる運動やストレッチなどを指導する運動指導、質の良い睡眠のために必要なことを指導する睡眠指導などです。

日本での普及状況

日本では、カイロプラクティックは現代医療として認定されていません。ただし、カイロプラクティックが違法というわけではなく、代替医療の一環として法的に許容されているのが現状です。

日本カイロプラクターズ協会によると、カイロプラクターには世界保健機構(WHO)が定めた国際基準が示されています。このWHOのガイドラインに沿ったプログラムを学び、日本カイロプラクターズ協会登録試験を合格した人は、2020年2月の段階で570人となっています。

ただし、日本ではカイロプラクターの法的資格制度が確立されていないこともあり、WHO基準を満たさないカイロプラクターも多数存在しています。また、あん摩マッサージ指圧師や柔道整復師などの医療資格とカイロプラクターの資格の両方を持って活躍している人も、全体の約20%を占めています。

カイロプラクターと関係性の深いカイロプラクティックとは?

ここで、カイロプラクターと関係性の深いカイロプラクティックについて整理しておきましょう。

・カイロプラクティックとは

カイロプラクティックとは、道具を使わずに手技を用いて施術を行う技術のことです。施術方法は施術する人によって違うものの、主に体のゆがみや痛み、機能を改善することで自然治癒力を高めることを目的に行っています。脊椎や神経、骨格などを重点的に治療していきます。

・カイロプラクティックの歴史

カイロプラクティックは、1895年にダニエル・デービッド・パーマーが始めたことが最初であるとされています。日本人で初めてカイロプラクティックを学んだのは森久保重太郎という人物で、その後、河口三郎が1916年に日本にカイロプラクティックの技術と知識を持ち帰りました。彼はその後「脊椎骨調整術(カイロプラクティック)営業取締規則」という日本初のカイロプラクティックの規制を作るために尽力しました。

1960年には、カイロプラクティックの開業が自由になったことで全国に広まります。2005年にはWHOによるカイロプラクティック・ガイドラインが完成、翌2006年には日本語版のガイドラインが完成しました。2014年からは、きちんと資格を取得しているカイロプラクターを周知するために、日本カイロプラクティック登録機構がカイロプラクター名簿を毎年厚生労働省に提出しています。

・海外と日本のカイロプラクティックの違い

カイロプラクティックの技術は、世界保健機構(WHO)ガイドラインにて教育基準が決められています。世界では約100ヶ国にカイロプラクティック技術が普及しており、うち45ヶ国では医療専門職として認知されています。また、アメリカでは「補完療法(西洋医学ではない民間療法や自然療法)」として、多くの人がカイロプラクティックを利用しています。

一方、日本では法的資格の整備が進んでおらず、カイロプラクティックの資格は民間資格となっています。また、薬や手術などを用いない治療を行うことから、医療とは別の「医療類似行為」とされているのが現状です。

そのため、技術が未熟なカイロプラクターによる事故も発生しています。カイロプラクティックは、主に脊髄に対して治療を行うため、間違いが起きれば重大な事故になる可能性が高い施術です。資格がなくてもカイロプラクターを名乗れる日本では「信用できるカイロプラクターなのか」を見極めるのは、非常に難しくなっています。

ただし、日本でも「特定の病気にはカイロプラクティックを行ってはいけない」「危険な手技は行ってはいけない」「もし治療をしても症状が改善しない、もしくは悪化したなどの場合は、施術を中止すること」などが、厚生労働省より通知されています。

カイロプラクターになるには?

前述したように、カイロプラクターが行うカイロプラクティックは、民間療法であり代替医療として取り扱われているため、法的資格はありません。ただし、カイロプラクターには知識と技術が必要不可欠なため、まずはそれらを身に付ける必要があります。

そのためには、カイロプラクターを養成するスクールに入学して課程を修了し、卒業する方法が一般的です。代表的な養成校には、「東京カレッジオブカイロプラクティック」があります。このスクールでは、WHOが定めた教育基準に合わせて基礎医学やカイロプラクティック学、臨床実習を4年間で学びます。国際機関認定校であることから、カイロプラクターとして確かな技術と知識を身に付けることができます。

東京カレッジオブカイロプラクティック以外にも、カイロプラクターを養成する学校は全国各地に存在しています。カリキュラムや修了期間、費用はスクールによって大きく差があります。詳しくはスクールに直接問い合わせて確認しましょう。

また、カイロプラクターは資格制度が確立されていないこともあり、技術を学ばないまま開業する人もいます。技術や知識のないまま施術を行い、健康被害をもたらすケースが社会問題化しています。カイロプラクターを目指すのであれば、しっかりした養成機関で学ぶようにしましょう。

カイロプラクターのキャリアメイキング

カイロプラクターの将来設計には、次の3つの方法があります。

雇われて働く

カイロプラクターとしてキャリアを積み上げるのであれば、まず施術院やカイロプラクティック専門サロンなどに勤めると良いでしょう。活躍場所は他にも、整形外科や鍼灸院などがあります。雇用形態は正社員やパートと、自分の生活に合わせて選ぶことができます。ただし、あん摩マッサージ指圧師や柔道整復師に比べると求人が少ない傾向があります。

開業する

カイロプラクターのキャリア形成として、次に考えられるのが開業です。施術院などで働いてキャリアを積んだ後に独立するケースと、資格取得後すぐに開業する場合があります。資格取得後すぐの場合、患者さんが来ない日が何日も続くことも考えられ、経験を積むことが難しいでしょう。開業を考える場合には、ある程度経験を積んでからの方が安心です。

専門性を身に付ける

近年増えてきているのが、スポーツ分野や美容分野に特化したカイロプラクティックです。スポーツトレーナーとして活躍する人も増えてきており、前述の東京カレッジオブカイロプラクティックでは、スポーツトレーナーを育成するプログラムを学ぶことができます。また、美容的観点からカイロプラクティックを行う「美容カイロエステティック」も誕生しています。

さらに今後活躍の場を広げるのであれば、高齢者分野に注目してみましょう。超高齢社会に突入した日本では、今後ますます高齢者が増加します。アクティブシニアと呼ばれる介護を必要としない高齢者は8割を占めており、これからも健康に過ごそうと考えている人が多いでしょう。カイロプラクティックは人間の持つ自然治癒力を高める目的のもと施術を行うため、高齢者の健康維持にも役立ちます。

おわりに

世界的には医療専門職として活躍しているカイロプラクター。日本では法的資格の整備は進んでいないものの、施術の有効性については研究が進められており一定の効果が得られることが科学的に証明されています。超高齢社会に突入した日本において、自然治癒力を高め健康の維持・向上に役立つカイロプラクターの仕事は、これから需要が高まる職種と言えるでしょう。

参考元:
カイロプラクティックの定義|日本カイロプラクターズ協会
「カイロプラクター」の職業解説|13歳のハローワーク
日本カイロプラクティック登録機構(JCR)
カイロプラクティック|厚生労働省
カイロプラクティックサロン|J-Net21
カイロプラクティックとは|全国健康生活普及会
JCR登録者数の状況(PDF)|日本カイロプラクティック登録機構
無資格者によるあん摩マッサージ指圧業等の防止について|厚生労働省
変わる高齢者像 -アクティブシニアの出現-|総務省
美容カイロエステティックとは|全国健康生活普及会
医業類似行為に対する取り扱いについて|厚生労働省
カイロプラクティックの歴史|日本カイロプラクターズ協会
補完・代替医療とは|NPO法人 日本ホリスティック医学協会
未経験歓迎のカイロプラクティック・カイロプラクターの求人・転職・募集|リジョブ
カイロプラクティックサロンを開業するには!?|01ゼロイチ
社会福祉法人 日本視覚障害者団体連合
Business Journal

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