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特集・コラム 2020-08-19

「レスパイトケア」で介護疲れによる共倒れを防ぐことの必要性

被介護者が増える日本の大きな問題が、介護疲れによる共倒れです。そんな中、介護する側が適度に休息を取れる「レスパイトケア」が注目されています。この記事では、介護疲れを救うレスパイトケアについてご紹介します。

介護を少しだけ休む「レスパイトケア」

「レスパイト(Respite)」とは、日本語に訳すと「小休止」を意味します。「レスパイトケア」は、介護を一時的に公的機関や民間のサービスに任せ、家族が休息を取れるようにするシステムのことです。介護ケアはもちろんですが、介護以外の家事や送迎などを手伝ってもらえるもの、精神的な支えになってくれるものもあります。

介護を代行するサービス

介護を代行するサービスには、デイサービスやホームヘルプ、ショートステイなどがあります。自分の代わりに、食事や入浴、トイレの介助などを任せられます。食事の準備などもお願いできることがあります。

送迎を代行するサービス

介護タクシーを利用して、病院や施設への送り迎えをお願いできるサービスです。また救援事業の届け出を行っている会社であれば、買い物の代行や病院の診察の順番取り、薬の受け取りなどもお願いできる場合があります。なお、こうした代行サービスは、介護タクシーの利用者のみ利用可能です。

家事を代行するサービス

「介護は問題ないけれど、食事を作ったり掃除をしたりする時間がない」「他の家族の世話ができない」という方の場合、家事を代行するサービスもあります。食事を作ることはもちろん、掃除や洗濯、庭の手入れなども行ってくれます。

また買い物が難しいという方は、食材配達や配食サービスなどを利用すると、買い物の負担を減らせます。また、子どもの保育園の送迎や寝かしつけなどを依頼できるサービスもあります。

なお、こうしたサービスは介護保険の適用外となるため、自費での負担が必要です。

一時的な入院

介護をする方がけがや病気で面倒を見る人がいない、介護疲れで精神的に追い詰められているなど介護を続けられないと判断された場合は、被介護者を一時的に入院させる措置を取ることもできます。これをレスパイト入院と言います。

受け入れる病院によって条件は違いますが、ショートステイなどのサービスが受けにくく、一定の医療管理や介護が必要となる方を対象としていることが多いようです。事前に予約や相談が必要な場合もあるため、まずは受け入れを行っている病院に相談してみましょう。

家族介護者の会に参加する

家族介護者の会は、地域が主催する「被介護者を持つ家族が集まって話す会」です。他の代行サービスとは違って、実務的な部分ではなく精神的な面をサポートしてくれます。

同じ悩みを持つ方々と情報共有をしたり、自分の悩みを打ち明けアドバイスをもらったりして、介護で疲れた心を楽にすることが目的です。会によっては、介護に関するセミナーや勉強会を行っていることもあります。

介護疲れによって起こっている問題

日本では介護人口が増えたことに伴い「介護疲れ」が問題となっています。特に高齢の親を高齢者が介護する「老老介護」は重要な問題で、介護疲れから無理心中や殺人事件につながることもあります。

厚生労働省が発表した2018年の「年齢階級別、原因・動機別自殺者数」(参考:https://www.mhlw.go.jp/content/H30kakutei-f01.pdf)を見てみると、介護疲れを苦に自殺している人の数は2万1,170人中230人。最も多いのは、60歳~69歳で60人でした。また警視庁の2018年の犯罪 罪種別 主たる被疑者の犯行の動機・原因別 検挙件数(参考:http://www.npa.go.jp/toukei/soubunkan/h30/h30hanzaitoukei.htm)では、介護・看病疲れによる犯罪が151件も起こっています。

さらにアクサ生命が2019年に行った「介護に関する親と子の意識調査2019」(参考:http://www2.axa.co.jp/info/news/2019/pdf/190809.pdf)によると、実際に親の介護で困ったことは「自分の精神的な負担」が62.0%と、家族が急に介護状態になることで精神的なストレスを感じる人が多いことが分かります。

このように、介護疲れは介護する方を精神的に追い詰め、犯罪に走らせてしまうことがあります。実際に介護疲れで事件を起こした人たちも、真面目な普通の人です。ある日、急に家族を介護しなければならなくなり、右も左も分からない状態で介護を始め、さらに介護のために仕事も辞めざるを得ない。それになのに、身内からは介護を拒否されたり怒鳴られたりして、それが限界を迎えたとき、家族を手にかけるという道を選んでしまいます。

介護に責任を感じている人は「介護に休みなどない」と考える人もいると思います。また日本の場合「冠婚葬祭以外で親の介護を休むなんて良くない」など、周囲が介護疲れを理解してくれないこともあります。

しかし介護を休むことは、悪いことではありません。むしろ介護を休むことで介護疲れをなくすことは、介護の継続につながります。

被介護者は、介護する者がいなければ生活できません。介護をする方が潰れてしまっては、元も子もないのです。介護をする方は、レスパイトケアをすることで、被介護者も助かるのだと考えましょう。

また介護をすると、被介護者だけでなく、介護施設やそのスタッフ、家族との調整を行わなければなりません。そうした関わり合いが面倒になると、孤立して介護を1人で抱え込み、誰にも相談できなくなる人もいます。こうした事態にならないよう、気軽に介護のことを相談できる人をつくっておくことも大切です。

リフレッシュだけでなく相談者も増やせる

レスパイトケアのメリットは、何よりも介護をしている方がリフレッシュできることです。普段の介護から解放されることで、介護をしていたときよりも自由になる時間が増えます。

自由になった時間は外食をしたり、買い物に行ったりなどリフレッシュの時間に使いましょう。介護でなかなかできなかった趣味に没頭するのも良いかもしれません。介護する側がリフレッシュすることで、介護疲れを癒やし、今後も介護を継続できるようになります。

またレスパイトケアは、外部の人に介護などをお願いできるため、外部とのつながりができます。そのため、介護の悩みを相談できる場所が増えることもメリットです。

レスパイトケアをお願いするデイサービスやホームヘルプは、介護のプロです。普段の介護で悩んでいることがあれば相談してみましょう。こうしたプロとの信頼関係を築くだけで、精神的に楽になりますし、次回のレスパイトケアの際にも依頼がしやすくなります。

レスパイトケアの依頼方法と主な依頼先

レスパイトケアをお願いするには、まず市区町村に申請して要介護認定を受け、続いて指定居宅介護支援事業者のケアマネジャーにケアプランを作成してもらう必要があります。ケアマネジャーがその後の介護を大きく左右するため、要望を聞いて的確なアドバイスやプランを提案してくれるケアマネジャーを選ぶことが大切です。

ケアマネジャーを選定してケアプランを作ったら、レスパイトケアを依頼できる介護事業者を選びます。

レスパイトケアをお願いできるところは「デイサービス」「ホームヘルプ(訪問介護)」「ショートステイ」の3つがあります。ケアマネジャーにどこが適しているのかを相談しましょう。なお、この3つのサービスを依頼する際には介護保険が適用されます。

デイサービス

被介護者を1日預かってくれるサービスです。施設への送り迎えの他、食事や入浴、体操やレクリエーションなども行ってくれます。中には夜間料金が別途設定されており、宿泊可能なデイサービスもあります。

利用できるのは要介護1から5の方で、介護認定を受けていればほとんどの方が通えます。ただし、要介護度によって通える日数が決まっており、それを超えると介護保険の適用外となるため注意が必要です。

デイサービスは主に民間企業によって運営されており、サービスの内容は施設によって違います。どのようなサービスを受けたいのか、費用はどのくらいなのかを比べながら、通いやすいところを選びましょう。

デイサービスの利点は、1日介護から解放されることです。空いた時間を使って、思い切り羽を伸ばしましょう。

ホームヘルプ(訪問介護)

資格を持った介護員が自宅に来て、自宅で介護を行うサービスです。普段自分が行っているトイレや食事の介助、着替えなどを任せられます。また調理や洗濯などの家事の他、通院などにも付き添ってもらえます(家事については、要介護者に必要なもののみ)。

こちらも要介護1から5の方を対象としており、介護認定を受けている方であればほとんどの方が利用できます。

ホームヘルプも事業者によってサービス内容が違います。また訪問する介護員との相性が非常に大切になるため、信頼できる介護員を派遣してくれるのか、きちんと見定めた上で事業所を決めるようにしましょう。

ホームヘルプの場合、時間で料金が決まります。1時間や2時間程度の短時間でのリフレッシュを希望する方は、ホームヘルプの利用がおすすめです。

ショートステイ

ショートステイは、宿泊型の介護サービスです。基本的なサービスとしては、デイサービスと同じで、食事や入浴の他、レクリエーションやリハビリなどをして過ごします。最大30日まで預けられるため、出張や旅行、冠婚葬祭などの際に利用すると良いでしょう。利用できる方は、デイサービス、ホームヘルプと同様、要介護1から5の方です。

長期間プロが見ながら入居をするため、自分たちでは気付かないようなことに気付いてもらえたり、その後の介護についてアドバイスをもらえたりすることもあります。また、長い間介護から離れられるため、その分リフレッシュ効果も高いです。

ショートステイは老人ホームなどの大きな施設がサービスの一環として行っていることが多く、非常に人気のサービスです。そのため、ゴールデンウィークや年末年始などの大型連休は、なかなか入居できないこともあります。

おわりに

レスパイトケアは、介護する側にも介護される側にもメリットがあります。「介護を休むことは悪」ではなく「介護を続けるためにレスパイトケアを利用する」と考えましょう。

参考元:
介護に疲れたときに利用したい、「レスパイト・ケア」というサービス|介護のコラム
介護疲れを癒すレスパイトケア!タイプ別におすすめサービスを解説|ミンナノミライ
H30自殺の概要資料5 付録|厚生労働省
介護で疲れる前に知っておきたい負担軽減法|LIFULL 介護
Newsweek
平成30年の犯罪|警視庁
意外と便利!介護タクシーの救援サービス|介護タクシー案内所
レスパイト入院|東海中央病院
レスパイト入院|京都中部総合医療センター
レスパイト入院|育生会横浜病院
レスパイト入院について|多摩丘陵病院
レスパイト入院について|七尾病院
kidsline(キッズライン)
レスパイトケアが介護職に与える影響とは?|ケアキャリSEARCH
介護のストレスを軽減させる レスパイトケアの重要性とは?|シニアのあんしん相談室
知ってる?「レスパイトケア」あなたの介護疲れを癒すサービス|介護のお仕事研究所
介護について話し合う、家族会とは?|安心介護
介護サービスの基本「デイサービス」とは? サービス内容から働く魅力、デイケアとの違いまで|介護のお仕事研究所
「要介護2」ならデイサービスは週何回? 要介護度(要支援1~2・要介護1~5)別の利用サービスまとめ|介護のコラム
ホームヘルプサービス(居宅介護等事業)|横浜市
訪問介護(ホームヘルプサービス)で「受けられること」「受けられないこと」|あずみ苑
訪問介護とは?サービスの利用方法と費用|LIFULL 介護
介護サービス完全ガイド|ゼロからわかるサービスの種類と利用方法

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