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介護・看護・リハビリ 2020-10-13

【今さら聞けない!? 介護のお仕事の基本 vol.14】自分でできるのに「食べさせて」と甘える利用者への接し方は?

高齢化がますます進む日本社会。介護サービスを利用する人も増え続ける中で、介護のお仕事への注目も高まっています。当企画では、介護職が現場で直面しがちな困りごとの解決方法をご紹介します。

自分でできるのに「食べさせて」と求めることが増えたRさん。どう対応する?

食事も着替えも自分でできるRさんですが、最近、「着替えさせて」「食事を食べさせて」と求めることが増えてきました。この日も「食事を口に運んでくれない?」と声をかけてきたRさん。担当の介護職は、できることは自分でやった方が利用者自身のためになるという思いから、「自分でできるはずですよ。」と返したところ、「他の人は手伝えて、私のことは手伝えないってこと?」と怒ってしまいました。

介護職へ甘えたがっていると思われるRさんのこの言動。RさんのADL(日常生活の動作)を維持する観点だけで考えると、『自分でできることは自分で』は正解ですが、それではRさんの気持ちが置いてきぼりに…。どう対応するのがよいのか、ポイントをおさえていきましょう。

ポイント1:できない理由を確認する

自分でできるにもかかわらず「食べさせて」などと介助を求めてくる利用者。単なるわがままと受け止めがちですが、こうした言動にはそうさせている原因が隠れています。考えられるのは、「さみしい」「かまってほしい」という心的要因と、肩が痛くて手を動かすのが苦痛といった身体的要因の二つ。まずは、どちらか見分けるためにも、「なぜ、できないのか」という理由を聞いてみましょう。

ポイント2:甘えたい気持ちを受け止める

できない理由が、心的・身体的どちらの理由だったとしても、利用者の甘えたい気持ちは一度受け止めた方が落ち着きやすいでしょう。「『今日は』お手伝いしますね。」と受け止めた上で、「次からは自分でやりましょうね。」などと、次回以降は自分でやることを促せるといいですね。その時に、自分でやることの意義や、本当に自分でできなくなるといかに困るかなど、自分でやった方がよい理由を伝えると利用者も納得しやすいでしょう。

ポイント3:身体的理由への対応を提案する

「肩が痛くて手を動かせない」「手に力が入らない」など、身体的理由を訴えている場合は、受診をすすめましょう。この時、受診を拒むようであれば、この訴えも甘えの可能性が高いといえます。ポイント2同様、甘えたい気持ちを受け止め、身体の不調を気遣ったうえで、次回以降は自分でやることを促しましょう。

「甘えたい」利用者へやってはいけない2つのこと

1.理由も聞かずに「自分でできるはず」と突き放す
2.自分ですることの意味を伝えない

年を重ねるとともに身体が思うように動かなくなってきたり、若いころとは変わっていく生活スタイルに寂しさや不安感を抱えたりしている高齢者は少なくありません。「甘え」を単なるわがままとしてとらえるのではなく、まずはその気持ちに寄り添う気持ちを持てるよう心がけるとよいでしょう。その上で、利用者自らが何かをやろうと思い立つ『気持ちのスイッチ』がどこにあるのか、行動を観察しながら探っていきましょう。これは介護の仕事の大切な部分であり、また醍醐味を感じられる部分でもあります。日々の業務は忙しいものではありますが、その過程を楽しんでやれればいいですね。

文:細川光恵
参考:「こんなときにはどう言葉をかけたらいい? 介護の言葉かけタブー集」誠文堂新光社

監修

中浜 崇之さん
介護ラボしゅう 代表/株式会社Salud代表取締役/NPO法人 Ubdobe(医療福祉エンターテイメント) 理事/株式会社介護コネクション 執行役

1983年東京生まれ。ヘルパー2級を取得後、アルバイト先の特別養護老人ホームにて正規職員へ。約10年、特別養護老人ホームとデイサービスで勤務。その後、デイサービスや入居施設などの立ち上げから携わる。現在は、介護現場で勤務しながらNPO法人Ubdobe理事、株式会社介護コネクション執行役なども務める。2010年に「介護を文化へ」をテーマに『介護ラボしゅう』を立ち上げ、毎月の定例勉強会などを通じて、介護事業者のネットワーク作りに尽力している。

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