【もっと知りたい「ヘルスケア」のお仕事 Vol.18】壱番館フォルトゥーナ 志水剛志さんが伝える柔道整復師/整体師の魅力とは
ヘルスケア業界のさまざまな職種にフォーカスし、その道で働くプロにお仕事の魅力や経験談を語っていただく『もっと知りたい「ヘルスケア」のお仕事』の企画。
「壱番館 フォルトゥーナ」で院長を務める志水剛志さんに、前回は柔道整復師を目指したきっかけや、現在に至るまでの経緯をお聞きしました。今回は、志水さんが柔道整復師になって感じたお仕事の魅力、これからヘルスケア業界を目指す人たちへのアドバイスを教えていただきます。
人に必要とされたくて始めた仕事。だから感謝されることが嬉しい
―柔道整復師として接骨院に勤めた後、整体をメインに開業されたそうですが、志水さんが感じるお仕事の魅力は何ですか?
接骨院時代は、お客様との距離の近さが一番いいところだなと感じていました。保険診療ができることもあり、地域に密着して、通い続けていただけるので、何かあれば相談できる「かかりつけ医」的なポジションがとれるんですよね。
柔道整復師は、骨折・脱臼・捻挫・打撲・挫傷などの怪我を、自然療法でいかに早く治していくか、というところが一番の本業。「病院に行って特に問題はないと診断されたけど、痛みがある」っていうのが、僕らの範囲になるんですよね。
だからこそ、お客様の生活や人間性など、しっかり入り込まないと見えないところまで汲み取って、一緒に改善に向かって歩いていくっていうのが大事なところです。そして、それができるのが、柔道整復師の魅力だと思います。
でも、接骨院でも整体院でも、お客様から「ありがとう」と言われたときが一番うれしいですし、そこは変わらない魅力ですよね。僕自身、人から喜んでもらいたい、必要とされたいという気持ちから始めた仕事なので、お客様に喜んでもらえたら、すごく報われます。
―柔道整復師を目指していたときと、お仕事にしてからのギャップはありましたか?
まったくないですね! もっと人の役に立ちたいですし、もっと必要とされるためにはどうしたらいいんだろうっていうのは、今でも常に考えています。好きなことを仕事にできた時点で、純粋にうれしい、楽しいという気持ちしかありません。
―つらいなと感じたこと、苦労したことは?
苦労したことは、いっぱいありますよ。
でも一番は、やっぱり開業したてで、半年間お客様がいなかったときですかね。元の接骨院からも遠いし、保険診療だったのが自費診療になったので価格も違うから、前院のお客様に来てくださいとも言いづらくて…。
―どうやって乗り越えたんですか?
いいウェブ会社の社長さんとの出会いがあって、外反母趾のサイトを作ったんです。
最初の接骨院も外反母趾で有名で、そのころから僕は「距骨」に注目していたんですけど、それをおもしろいって言ってくれたんですよね。それで、当時はヘルスケア業界的に骨盤調整の全盛期だったんですけど、「まだ知られていない距骨を、第二の骨盤にしよう!」と。そうして作ってもらったサイトを見て、お客様が来てくださるようになりました。
だから、僕は「外反母趾」に二度も救われているんですよね(笑)。ここまできたら、外反母趾とか、足周りで困っている人たちのために、人生をかけなきゃいけないなって思っています。
テーマを決めて深く掘り下げること。それが自分の強みになる
―柔道整復師、整体師を目指している方にアドバイスをお願いします。
柔道整復師や整体師って、全身を見る仕事なんですよね。お医者さんですら、パーツで専門がわかれているのに、柔道整復師・整体師はいろんなものを見なきゃいけない。だから、早く自分の専門性というか、こだわれるテーマと出会えるといいんじゃないかと思います。自分は、この仕事を通じて、何を届けたいのかっていうところが、すごく大事になる。それが見つかると、他との差別化にもなりますから。
あとは、ちょっと古いと思われるかもしれないんですが、ひとつのところでしっかり勤め上げるっていうのも、大事だと感じています。今は、1年働いて技術だけ学んだら、次に行くっていうのが増えているんですよね。手数は多いんだけど、浅いなと感じます。そのお店が生き残ってきた歴史だったり、働き方、技術っていうのを深く学んで、しっかり使いこなせるようになるには、1年では難しいですよね。
今は、オンラインでも直接でも、学ぶ場はいくらでも増やせます。本質まで掘り下げて、こだわれるか。学んだことを、しっかり自分の中でアップロードして、自分自身の価値として高めていく。これができるかが、重要だと思います。
―志水さんが仕事をするうえで大切にしている3か条を教えてください!
1. 謙虚・勤勉
この業界は、学ぶことがたくさんあります。でも、いろいろ学んでいくと、こじらせてしまうことがあるんです。頭でっかちになっちゃうというか。そうなると、外からいろんな意見を言われたときに、「でも」とか「だって」って言うようになってしまう。
「これが一番いいんだ」じゃなくて、いろんなものを吸収したほうがいいんですよね。それぞれに、いいところはある。そういうふうに吸収していける謙虚さと、学び努力し続けられる勤勉さがないと、施術者としてはダメだと思います。
2. チャレンジ
とくに今は、業界内での変化が速いですから、昔ながらのままを維持しようとするのは、ゆっくりと後退しているのと同じだと思うんです。だから、変化に対してチャレンジし続けることが大切だと思います。
3. 出会いを大切にすること
運命が変わるときって、人との出会いが大きいと思うんです。僕も、出会いがなかったら、ホテル内で働くなんて夢にも思わなかっただろうし、自費診療をやりたいとも思わなかった。困っていた時に、いろんな人に出会えたから、今があるんです。だから、止まっていてもしょうがないと思うんですよね。本を読むっていうのも、疑似的な出会いになると思います。いろんな影響を受けて、動き続けることも大切なんじゃないかなと思います。
接骨院をはじめ、整体院、リフレクソロジーなど、同じ地域にもたくさんのヘルスケア業が混在する今。仕事として成功させるためには、他と差別化ができる自分の強みを持つことが大切なんですね。次回は、志水さんの手技&技術をご紹介します。
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【もっと知りたい「ヘルスケア」のお仕事 Vol.18】壱番館フォルトゥーナ 志水剛志さん流 柔道整復師/整体師の手技&技術>>
取材・文/山本二季
撮影/片岡 祥
教えてくれたのは…
「壱番館フォルトゥーナ」院長 志水剛志さん
柔道整復師。笠原接骨院にて副院長として従事するとともに、整体の知識・技術も習得。2007年に独立し、整体院を開業。2008年に整骨院を開院、2010年に株式会社壱番館を設立し、ホテルスパとの業務提携をスタート。2016年、日本距骨調整協会を設立。「距骨」の重要性を伝えるため、執筆、商品開発など幅広く活動中。著書に『MAG MOOK 距骨を整えれば不調が治る!』(マガジンハウス)など。