ヘルスケア&介護・看護・リハビリ業界の応援メディア
介護・看護・リハビリ 2021-01-08

【今さら聞けない!? 介護のお仕事の基本vol.25】認知症の夕暮れ症候群「家に帰らなくては…」への対処法

業務範囲も働く場所も幅広いのが介護職。利用者・入所者の事情や背景も様々で、介護技術だけでなく、人間力も問われるお仕事です。ですが、現場では忙しく、困ったことがあっても聞く人がいない…ということも多いのでは? 当企画では、そんな時に役立つ知識をケースごとにご紹介。今回は、認知症にまるわる困りごとを取り上げます。

「そろそろ家に帰らなきゃ…」と出ていこうとするDさん。「家はここ」だと言っても伝わらない方への対処法は?

現在、グループホームで生活しているDさん。認知症のため、そのことをしばしば忘れてしまいます。今日も夕方になってソワソワしだしたので、職員が「どうしたの?」と声をかけると、「そろそろ家に帰らなくては。お邪魔しました。」と玄関へ向かって歩き出しました。「Dさんの家はここですよ。」と声をかけても聞かずに外に出ようとします。

出ていかないように腕をつかんで引き留めるといった対処では、Dさんに今いる場所への恐怖心を植え付けてしまいかねません。そうならないためにはどのように対処するのがいいのかを見ていきましょう。

ポイント1:「ここが家」を押しつけない

夕方になるとそわそわして帰ろうとする言動は、認知症にはよくある症状です。夕方に多く起こることから、「夕暮れ症候群」「夕方症候群」と呼ばれています。この場合、今いるところが自分の居場所・自宅とは認識できていないので、「ここがあなたの家です」と説得しても上手くいきません。強引に「ここが家」だと納得させようとした場合、言い争いになって振り切って出ていこうとしたり、追い詰められてパニック状態になったりということも…。慌てず冷静に次の対応を試みましょう。

ポイント2:帰りたい理由・思いを受け止める

まずは、なぜ帰りたいのかを聞いてみましょう。「家に帰る」と言い出す理由は人によって様々ですが、共通していることは、今いる場所に不安や孤独感、焦りなどを感じているという点です。帰りたい理由や思いを話してそれを受け止めてもらうことは、安心感につながります。落ち着きやすいように、できれば、座ってお茶でも飲みながら…と誘導できるといいですね。

ポイント3:その場に引き留めるきっかけをつくる

帰りたい理由を聞く過程でまだ落ち着かないようであれば、その方が楽しく話せそうな話題に話を切り替えていきましょう。「じゃあ、帰る前に○○について教えてください。」というように、例えば、料理上手な方なら「この前話していた煮物の上手な作り方、ちょっと教えてほしいんです」、旅行好きな方なら「今度旅行に行きたいんですけど、おすすめの場所を教えてください」のような声かけはいかがでしょうか。座ってお茶でも飲みながら話しているうちに、家に帰ろうとしていたことから気がそれ、落ち着くのを待ちましょう。

「夕暮れ症候群」の利用者へやってはいけない3つのこと

1.嘘をつく
2.怒る
3.無視をする

帰宅の途中の子どもたち、夕飯の支度をする香り、段々と暗くなっていく空。認知症でなくとも、夕方の雰囲気に感傷的になることはありますよね。

上に挙げた3つの行動は、不安や孤独感、焦りといったのマイナス要因を増幅させてしまいます。まずは、落ち着いた声と対応で本人の気持ちに寄り添い、安心感を持ってもらえるように心がけましょう。Dさんのように生活環境が変わった方なら、これまで愛用していたものを部屋に置くなどすることが、安心感や居心地の良さにつながることもありますよ。

文:細川光恵
参考:「こんなときにはどう言葉をかけたらいい? 介護の言葉かけタブー集」誠文堂新光社

監修

中浜 崇之さん
介護ラボしゅう 代表/株式会社Salud代表取締役/NPO法人 Ubdobe(医療福祉エンターテイメント) 理事/株式会社介護コネクション 執行役

1983年東京生まれ。ヘルパー2級を取得後、アルバイト先の特別養護老人ホームにて正規職員へ。約10年、特別養護老人ホームとデイサービスで勤務。その後、デイサービスや入居施設などの立ち上げから携わる。現在は、介護現場で勤務しながらNPO法人Ubdobe理事、株式会社介護コネクション執行役なども務める。2010年に「介護を文化へ」をテーマに『介護ラボしゅう』を立ち上げ、毎月の定例勉強会などを通じて、介護事業者のネットワーク作りに尽力している。

この記事をシェアする

編集部のおすすめ

関連記事