【今さら聞けない!? 介護のお仕事の基本vol.35】医療行為以外で介護職ができる救命処置/AEDの適切な使い方
介護の現場でよくある困りごとの対処法をご紹介する当企画。今回は、「救命処置」を取り上げます。ご高齢の人を相手にする介護職にとって「救命処置」は覚えておきたい知識です。ですが、現実にはうる覚えな人も多いのでは? この機会に、ぜひ見直してみて。
いざというときのために、AEDを適切に使えるようにしておきたい!
常に高齢者と接する介護職にとって、利用者や入所者の「急変」はいつ遭遇してもおかしくない事案です。基本的な救命処置は、介護職はもちろん、一般の人でもできるもの。介護の現場で働く身としては、いざというときのために救命処置のやり方を身につけておくと安心ですね。
「急変」とは、心停止、呼吸停止、ショック状態、意識障害と、これらに準ずる重篤な状態のことを指します。遭遇したらまずは、反応を確認(【今さら聞けない!? 介護のお仕事の基本vol.27】利用者が急変! まずは何をすればいい?)しましょう。 反応がない場合は、すぐに応援を呼び、119番通報とAEDの手配を頼みましょう。その上で、呼吸が弱かったり、していなかったりする場合は、AEDの到着まで、気道の確保と胸骨圧迫(【今さら聞けない!? 介護のお仕事の基本vol.29】利用者の急変に備える/気道の確保と胸骨圧迫のやり方)を行います。
今回は、AEDの適切な使い方を詳しくみていきましょう。
ポイント1: 救命処置は時間との勝負! 迷ったら装着!
利用者・入所者が倒れて意識を失っている場合、その原因を介護職が判断するのは困難です。心停止や心臓のけいれんなのか、それとも失神やてんかん発作、あるいは脳卒中なのか…。自分の中で原因が分からない状態だと、AEDを使う必要があるのか迷ってしまうこともあるでしょう。
ですがAEDは、ケースから出してふたを開け、電源ボタンを押せば、あとはAEDが電極パッドの貼り方から電気ショックが必要かどうかまで、すべて音声で教えてくれます。つまり、AEDを装着することで、心停止しているか否かがはっきりと分かるのです。結果的には電気ショックが必要なかったとしても、AEDを使う意味は十分にあります。
電気ショックを行った場合の成功率は、1分遅れるごとに約7~10%低下すると言われています。まさに時間との勝負なのです。いざというときは、迷わずAEDを装着しましょう。
ポイント2:AED使用の手順を覚えておこう
AEDは、ポンプ機能を失ってしまった心臓に電気ショックを与えて、正常なリズムを取り戻させる医療機器です。いざというときに慌てないためにも、基本の使用手順をおさらいしましょう。
STEP① AEDをケースから出して、急変者の頭の横に置く
STEP② ふたを開けて電源を入れる(自動で入るものもあり)
STEP③ 音声の指示に従って電極パッドを貼る
STEP④ 解析中は体に触れない(音声指示あり)
STEP⑤ 音声指示に従ってショックボタンを押す(自動充電される)
STEP⑥ 充電完了の合図後、誰も急変者に触れていないことを確認
STEP⑦ ショックボタンを押す
STEP⑧ 電気ショック完了後、音声指示に従う
(「ただちに胸骨圧迫を開始してください」など)
AEDは電源さえ入れれば、あとは音声でガイドしてくれます。救急隊が到着したら、救命処置の内容とAEDによる電気ショックの回数などを伝えられるよう、落ち着いて対処しましょう。
AEDの使用における2つの心得
1. 呼吸停止はもちろん、あえぎ呼吸のときは迷わず使う
2. 定期的な点検を忘れずに
繰り返しになりますが、救命処置は時間との闘いです。呼吸が止まって脳への酸素供給が3分間途絶えると、重い後遺症が残ることもあります。呼吸が止まっているときはもちろん、あえぎ呼吸(心停止直前に見られるしゃくりをあげるような呼吸)が見られるときは、迷わずAEDを装着しましょう。
また、電源さえ入れればあとは音声ガイドに従えばいいAEDですが、それもAEDが正常の作動してこその機能です。インジケーターの確認や消耗品の交換などの日常点検は欠かさないようにしましょう。念を入れて、厚生労働省の推奨するサポートサービスを利用してもよいでしょう。
監修・中浜さんの「実際にこんなことありました!」
街中でもAEDを設置しているところが増えてきました。さまざまな場面で目にすることが増えてきましたよね。介護施設にも設置しているところが増えていますが、私の身近では、実際には使用したことがない職員が8割以上でした。
入居型施設では、年間最低でも3回は消防訓練を行わなければならないことになっています。しかし、AEDの講習は必ずやらなければならないと決まっているものではありません。
実際には、介護職の中にも「AEDの講習を一度も受けたことがない」という人は相当数いると思います。また、一度は受けたことがある人でも、実際に使わない期間が長くなると忘れたりして、扱いに自信がないという人もいるでしょう。介護の現場でも、講習をしっかり受けて職員誰もが使えるよう、周知することが大切なんです。
AEDの講習は、消防署の方やAED納品業者さんにやっていただくことができます。AEDの取り扱いに不安を感じるなら、消防訓練などの機会に所属する事業所や施設の上長に、AED講習も受けられないか相談してみるのはいかがでしょうか。
文:細川光恵
参考:「介護現場で使える 急変時対応便利帖」株式会社翔泳社
監修
中浜 崇之さん
介護ラボしゅう 代表/株式会社Salud代表取締役/NPO法人 Ubdobe(医療福祉エンターテイメント) 理事/株式会社介護コネクション 執行役
1983年東京生まれ。ヘルパー2級を取得後、アルバイト先の特別養護老人ホームにて正規職員へ。約10年、特別養護老人ホームとデイサービスで勤務。その後、デイサービスや入居施設などの立ち上げから携わる。現在は、介護現場で勤務しながらNPO法人Ubdobe理事、株式会社介護コネクション執行役なども務める。2010年に「介護を文化へ」をテーマに『介護ラボしゅう』を立ち上げ、毎月の定例勉強会などを通じて、介護事業者のネットワーク作りに尽力している。