介護タクシー事業に利用できる補助金にはどんなものがあるの?
独立開業する際に、まず気になるのが費用のことでしょう。開業資金は業種によって異なりますが、飲食店の場合、テナント賃借費用、内外装費用、機械や什器の購入などで約1,000万円は必要といわれています。
介護タクシーは自宅を事務所にすれば、比較的少ない資金ではじめられる業種ではありますが、それでも開業資金は必要です。この記事では、介護タクシーにどのような費用が必要になるか知っていただくために、開業資金の内訳と費用の相場、利用できる補助金や助成金制度について解説します。
介護タクシー開業にはどれくらい掛かるの? 利用できる補助金とは?
一般的に介護タクシーの開業資金は、350万円ぐらいといわれています。しかし、購入する車両の種類や事務所と駐車場を借りるか借りないかで開業資金は違ってくるのです。さらに、補助金や助成金制度を活用すれば開業資金を安く済ませることもできます。
ここでは、介護タクシー開業にどれくらい必要になる金額を明確にするために、介護タクシー開業にかかる費用と利用できる補助金制度について確認しておきましょう。
介護タクシー開業に必要な費用とは
介護タクシー開業では、車両の購入や事務所の準備、資格取得などに費用が必要になります。それぞれの費用の内訳と相場は、次のとおりです。
法人設立費用|介護保険タクシーサービスの場合
介護保険タクシーは利用できる人が要介護1以上の方に限られてはいますが、介護保険で利用できるタクシーサービスです。介護保険タクシー事業をおこなう場合は法人格の取得が必要で、法人格取得費用は法人の種類によって異なり、費用は次のとおりになります。
・NPO法人:数千円
・株式会社:約16万円
・合同会社:約11万円
車両関係費
車両関係の費用は、車両購入費用と車庫代です。介護タクシーに使う車両は、普通の軽自動車から介護者が車椅子やストレッチャーに乗ったまま利用できるワゴン車まであります。選ぶ車両の種類、また新車か中古かで費用がかなり違ってくるでしょう。
介護タクシーの車庫には以下の要件があり、車庫代は利用する地域や立地条件で異なります。
・車庫が原則として事務所に併設されていること
・車体の幅プラス1m以上のスペースがあること
・点検、整備、清掃のための清掃施設があること
・使用権限が3年以上あること
また、車両関係費の相場は以下の通りです。
・車両費:軽自動車 160万円~、ストレッチャー用のワゴン車 350万円~
・車庫代:地域によって異なる 約1万円
事業所の準備費用
介護タクシーの場合は、「使用権限が3年以上ある」「事務所と休憩・仮眠室があること」が事務所の設備要件となっています。介護保険タクシー事業の場合はさらに設備基準が追加され、「事務室と相談室などの設置」などの要件を満たさなくてはいけません。事務所の準備費用の相場は、以下の通りです。
・自宅を使用する場合:ほぼ無料
・事務所を賃貸する場合:賃貸料(約10万円)
資格取得費用|普通二種免許・介護職員初任者研修
介護タクシーを開業するには普通二種免許が必要で、介護保険タクシーの場合は介護職員初任者研修も必要です。「合宿免許」「通学免許」「一発試験」があり、「一発試験」であれば約4万円で取得できますが合格率はかなり低くなっています。
介護保険タクシーの開業に必要となる介護職員初任者研修は、通信教育のみでの取得はできず受講期間は1~1.5カ月です。資格取得費用の相場は、以下の通りとなっています。
・普通二種免許:約20万円
・介護職員初任者研修:約9万円
管理費用
介護タクシーの事務所やビジネスに必要となる費用で、具体的には以下のようなものがあります。とくに家具や器材はグレードによって価格が異なりますが、約20万円と考えておけばよいでしょう。
・事務用品(名刺、印鑑、コピー用紙など)
・設備費用(テーブル、椅子、電話、FAX、コピー機など)
・水道光熱費
・通信費
運転資金
支払いが滞ると、会社の信頼性が損なわれてしまいます。給与、燃料、消耗品などのために、人件費の6カ月分を目安に運転資金として用意しておくとよいでしょう。
運転資金の相場は以下の通りです。
・20万円×6カ月=120万円
介護タクシー事業に利用できる補助金制度を紹介
補助金は審査がありますが返済する義務はないので、補助金制度を活用すれば自己資金が足りない方でも介護タクシーを開業することが可能です。ここでは、介護タクシー事業に利用できる補助金制度をご紹介します。
地域公共交通確保維持改善事業費補助金
公共交通のバリアフリー化と、利用環境改善の支援を目的としている補助金制度です。タクシー事業者が車両および設備のバリアフリー化に必要となる費用の補助をするもので、福祉車両の導入での補助率は3分の1となっています。
小規模事業者持続化補助金
商工会議所の管轄区域内で事業をおこなっている「小規模事業者」と、必要要件を満たした「特定非営利活動法人」を対象者とした補助金制度です。「小規模事業者」などの生産性向上と持続的発展を目的としています。販路開拓や業務効率化に必要となる費用の3分の2(上限50万円)が補助される制度です。
神奈川県|福祉タクシー車両導入促進事業費補助金
障がい者や高齢者が利用できる移動手段を確保し、移動しやすい環境を整えることを目的とした補助金制度です。神奈川県内を運送している福祉有償運送事業者などが対象となります。福祉タクシー用の車両購入費用の一部が補助されますが、補助金額は条件によって異なるのが特徴です。
具体的には新車を購入した場合、1台あたり30万円(中古車購入は対象外)、改造車両を購入した場合、1台あたり12万5,000円が支給されます。
千葉県|千葉県福祉タクシー導入促進事業
千葉県内に営業所があるタクシー事業者と、タクシー事業者に貸与するリース事業者を対象とした補助金制度です。補助金額は、新車の福祉タクシー車両購入する際に本体や搭載する機器類の整備にかかった費用の3分の1か基準額の低い額の範囲内となります。
基準額は、スロープを装備する場合に車両1台当たり60万円、リフトを装備する場合に車両1台当たり80万円です。
事業運営に利用できるおすすめの助成金を紹介!
補助金制度は対象が車両に限られることが多いですが、助成金制度であれば事業運営に使えるものもあります。また、補助金とは異なり、必要要件も満たせば支給され返済の必要もありません。ここでは、介護タクシーの事業運営に使えるにおすすめの助成金制度をご紹介します。
地域雇用開発助成金
雇用機会が著しく不足している地域を対象とした助成金制度のため、使える地域は限定されているのでご注意ください。たとえば、東京では三宅村や八丈町などが対象地域となっています。
対象地域で事業所を設立し地域に住む求職者を雇い入れる場合、その事業主に対し、事務所にかかった費用と対象となる労働者の増加数に応じた助成金が支給され、支払われる助成額は48~ 960万円です。
おもな支給要件は次のとおりです。
・雇い入れに関する計画書を作成し、労働局長に提出する
・施設や設備の設置・整備は計画期間内におこなう
・計画期間内につねに雇用する雇用保険の被保険者を3名(創業の場合は2名)以上雇う
キャリアアップ助成金
非正規雇用労働者のキャリアアップを目的とした取り組みを実施すると支給される助成金です。キャリアアップ助成金には、「正社員化コース」「賃金規定等改定コース」「健康診断制度コース」などがあります。「正社員化コース」では有期雇用労働者を正規雇用労働者として雇用または直接雇用した場合に、該当者1人あたり最大57万円が支給され、申請は20名まで可能です。
おもな支給要件は以下の通りです。
・雇用保険適用事業所の事業主であること
・事業主は雇用保険適用事業所ごとにキャリアアップ管理者を置いている
・キャリアアップ計画を作成し、労働局長に提出していること
必要な資格や流れを押さえてスムーズな開業を目指そう!
ほかの業種に比べると比較的に開業資金は少ない介護タクシー事業ではありますが、それでも車両購入や事務所の準備には多額のお金がかかります。今回は介護タクシーの開業に必要な費用と活用できる補助金と助成金をご紹介しましたが、住んでいる地域や状況によって申請できるものとできないものがあるので、調べておくようにしましょう。
また、補助金と助成金は申請したからといってすぐに支給されるものではなく、介護タクシー開業には資格の取得も必要です。開業までの流れを確認し、余裕のあるスケジュールを組んでスムーズな開業を目指しましょう。
引用元:
トヨタドライビングスクール東京 普通二種
三幸福祉カレッジ 介護職員初任者研修
国土交通省 地域公共交通確保維持改善事業
国土交通省 地域公共交通バリア解消促進等事業 バリアフリー化設備等整備事業
国土交通省 補助金のご案内(タクシー関係)
令和元年度補正予算 日本商工会議所 小規模事業者持続化補助金
神奈川県 福祉タクシー車両導入促進事業費補助金
神奈川県 神奈川県福祉タクシー車両導入促進事業費補助金制度の創設について
千葉県 令和2年度千葉県福祉タクシー導入促進事業
千葉県 令和2年度 千葉県福祉タクシー導入促進事業費補助金交付要綱
厚生労働省 地域雇用開発助成金(地域雇用開発コース)
厚生労働省 過疎等雇用改善地域一覧
厚生労働省 キャリアアップ助成金
厚生労働省 キャリアアップ助成金のご案内