【福祉現場のコロナ対策、どうしてますか?vol.3】訪問介護に必須の感染症対策。だからこそコロナ前より注意深く、念入りに #1
未曾有のコロナ禍。感染対策に頭を悩ませている介護・福祉施設は少なくありません。そこで、実際に働く方々に対策事例をインタビュー。コロナ対策のヒントを探っていきます。
今回は、訪問介護支援事業所「ケアプランニング結い」で、サービス提供責任者を務める池田陽子さんにインタビュー。前編は、訪問介護の現場で実際に使っている感染症対策グッズや、感染対策をスタッフ間で徹底するための周知方法について。後編は、会議や家族との面談など、対面で行っていた事務作業のコロナ対策についてお聞きします。
お話をうかがったのは…
ケアプランニング結い 練馬事業所
池田陽子さん
結婚・出産を経てホームヘルパーの資格を取得(その後、介護福祉士の資格も取得)。ケアプランニング結いに入社して現在10年目。サービス提供責任者として、自身のホームヘルパー業務に加え、スタッフの取りまとめや訪問介護計画書作成などに取り組んでいる。
物資が手に入らない! 慣れているはずの感染症対策に四苦八苦
──新型コロナウイルスの感染拡大初期、どのように対策を始めましたか?
訪問介護は生活の介助をする仕事です。入浴、トイレ、食事や歩行のサポートなど、利用者さまと接触する場面が多々あるため、もともと感染症対策には気をつけていました。仕事中の手洗い、消毒、グローブ、マスク着用などの対策は、コロナ前からルーティンとして行っていたんです。
初期のころは対策についての情報も少なくて不安もありましたが、「まずはいつもやっていることを徹底しよう」と、過度に心配しないように心がけました。
──コロナ禍でも落ち着いて仕事に臨めたのですね?
はじめは「感染対策をしっかりやっておけば大丈夫だろう」と思っていたのですが、予想外だったのが感染対策用品の不足です。マスク、消毒液、ハンドソープなど、今まであたり前に手に入っていたものが全てお店からなくなってしまって。ヘルパーさんはみんな自転車で動いているので、仕事の合間にあちこちのドラッグストアを探し回りました。一つでも足りないと感染対策に穴ができてしまうので、焦りましたね。
現在は不足することはなくなりましたが、グローブはコロナ前に比べてかなり価格が上がってしまい、一時は4倍近くにも。いまだに2倍くらいします。専門業者から通信販売で購入するのですが、まとめて頼んで送料を減らすなど工夫しています。
──コロナ禍で新たに取り入れた対策はありますか?
第一波の段階で飛沫対策が重要だとわかったので、利用者さまの体調や介助の内容によって、新たにゴーグルとフェイスシールド、ビニール製の使い捨てエプロンも使うようになりました。ただ、接触が多い介助ではフェイスシールドが利用者さんの体にあたってしまったり、入浴時は曇ってしまったり、使えないことも意外と多くて。そのぶん、マスクと介助後の手洗い、うがい、消毒をきちんと行っています。
それから、換気も徹底して行うようになりました。冬は利用者さまから「寒い」と言われたのですが、感染対策に必要だからと説明して、納得してもらいました。
マスクで表情が見えないから、ていねいな会話の積み重ねを重視
──第二波、第三波と状況が変わる中で、対策方法は変えていきましたか?
訪問介護の対策方法については、第一波の頃にほぼ整ったので、それ以降もとくに変えていないですね。先ほどもお話したように、コロナ前から感染症対策を行なっていたので、その延長線上というか、注意することが増えたという感じです。
変わったことといえば、ご自宅の床が尿などで汚れている利用者さま宅に行く場合、靴下に汚れ防止のカバーをつけるのですが、コロナ前はなぜつけるのか説明しにくいこともあって。今だと「コロナ対策なので」と言えば納得していただけるので、そこはスムーズになりましたね。
──コロナ禍になって、利用者さまから不安の声などはありましたか?
第一回目の緊急事態宣言中は、家族以外の人が自宅に入るのを避けたいということで、一時的にサービスをお休みする方もいました。ただ、宣言が解除されるころには、みなさん再開されていましたね。こちらが対策を徹底しているのを間近で見ているから、大丈夫と思ってもらえているようです。年末年始に感染者数が急増した時も、みなさま通常通りにサービスを利用されていました。
──コミュニケーションがしっかり取れていたことも安心につながったのでしょうか?
それはあると思います。コロナ禍でつねにマスクを着用するようになってからは、お互いの表情が見えにくくなってしまいましたが、それまでしっかり意思の疎通が取れていたのでとくに問題は起きていませんね。
ただ、新規の方の場合は難しいと感じることもあります。マスクだと滑舌が悪く聞こえてしまうので、利用者さまがどんな気持ちなのか想像しながら、こちらは身振り手振りもつけてはっきり話すようにしています。
ひとつひとつの会話の積み重ねが、いつも以上に大切だなと実感しています。
長引くほど気が緩むため、対策の周知徹底が重要に
──ヘルパーの皆さんの健康管理はどうのようにしていますか?
検温ですね。出勤前に37.5℃以上あったら休むのはもちろん、家族が発熱した場合も休んでもらい、PCR検査で陰性が確認できてから出勤してもらっています。熱はないけど体調が悪い時も、「遠慮しないで休んで」と声を掛けています。
休んだスタッフの担当業務は、私を含むサービス提供責任者の3人が、自分の利用者さんと並行して交替でシフトに入ってカバーします。やはりヘルパー側が健康な状態で介助してこそ、利用者さまの安心感や信頼感にもつながるので。
──コロナ禍になって1年以上。感染対策で見直した点はありますか?
長引くとどうしても気が緩んでしまうので、そこは気をつけています。ヘルパーは基本的に自宅から直接、利用者さまのご自宅に行くのですが、定期的に事業所に立ち寄ってもらい、業務内容の報告をしてもらうとともに、こちらからも再度の対策徹底をお願いしています。口頭だけでなく、注意喚起のしおりも作成してたびたび配っていますね。
それから、消毒液やグローブなどの補充回数にも気を配り、頻度が少ない人には使用量が適切か確認もしています。幸い、現在までスタッフに感染例はなく、ひとりひとりがしっかり対策してくれているお陰だなと、とても頼もしく思っています。
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ホームヘルパーという仕事柄、もともと感染症対策への意識がしっかり根づいていたという池田さん。コロナ感染対策においても、それまでの経験を生かし、着実に対策を実行している様子がうかがえます。
後編では、ご家族との定期的な面談や社内外の会議など、これまで対面で行っていた事務作業のコロナ対策についてお聞きします。
▽後編はこちら▽
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取材・文/池田 泉
撮影/高橋 進
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