「人生100年時代」も活躍できるトレーナーに必要なこととは【もっと知りたい「ヘルスケア」のお仕事 Vol.36 Wellness Sports 齊藤邦秀さん #3】
ヘルスケア業界のさまざまな職業にフォーカスして、その道で働くプロにお仕事の魅力や経験談を語っていただく連載『もっと知りたい「ヘルスケア」のお仕事』。
これまで2回にわたり、パーソナルトレーナーとして幅広い活動をしている「Wellness Sports」齊藤邦秀さんにインタビューしてきました。「怪我をしない体作り」をたくさんの人に伝えるため、スポーツトレーナーを志した齊藤さん。高齢化社会を見定め「Wellness Sports」を設立、より多くの人に健康に生きるためのライフスタイルマネジメントを行っています。
後編では、そんな齊藤さんがトレーニングで大切にしていることや、おすすめのトレーニングメニューを教えていただきます。
お話を伺ったのは…
「Wellness Sports」代表 齊藤邦秀さん
有限会社Wellness Sports代表取締役、Running Fitness Labo.代表、全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会(NESTA JAPAN)副代表、日本メディカルフィットネス研究会常任理事。運動・栄養・睡眠・ストレスマネジメントを統合させたウェルネスコーチングを掲げ、ウェルネスプロデューサーとして活動。フィットネス雑誌『Tarzan』連載やメディア出演、メディカルフィットネスプログラムの開発、企業の健康経営サポート、行政・学校へのセミナー講演、指導者人材育成など、一般個人やアスリートへのパーソナルトレーニングにとどまらず取り組んでいる。
先の人生をより良くするためのトレーニングを提案
―齊藤さんが現在、力を入れているトレーニングについて教えてください。
僕が掲げているのは、「ウェルネスコーチング」。ウェルネスコーチングとは、ただ運動するのではなく、病気にならず健康的に生きていくためのトレーニングを指導することです。
僕が考える「ウェルネス」は、心と体のバランスが整っていて、自分にとって豊かで充実したライフスタイルを獲得できるような、良いサイクルが生み出せている状態。そこを目指して、生活のタイムスケジュール、食事、睡眠、ストレス解消法などを統合し、課題を見つけて解決を促していく。トレーニングは、そのやりとりの中のひとつです。
また、ロコモティブシンドロームの予防のための「メディカルフィットネスプログラム」の開発も行っています。ロコモとは、体が硬くなったり動きが悪くなったりして、膝が変形したり骨粗しょう症などに進行していく状態。そうならないために、先の人生をより良くするためのトレーニングを、お医者さんや理学療法士さんと一緒に考えています。
―では、お客様も「健康」を求めていらっしゃる方が多いですか?
そうですね。年齢層は高めだと思います。体に違和感がないなら、どうやってそれを維持するか。膝や腰に痛みを感じるなら、どうやってうまく付き合っていくか。そんな風に、「ちょうどいい」ライフスタイルを見つけるためのパートナーでありたいと思っています。
ライフスタイルを「見える化」して課題を抽出
―トレーニングの提案で大切にしていることは何ですか?
考えたトレーニング内容を押し付けないようにはしています。いろいろなトレーニングメソッドがありますが、まずは好き嫌いがあるので、やってみたいかどうかを確認すること。
あとは、その人の体力レベルや運動経験の有無、物理的に時間がとれるかなどを総合的に考えて、ちょうどいい落としどころを考えて提案すること。すごく大変ですけど、そこが面白いところでもありますよね。
―お客様の課題を見つけるためにしていることは何ですか?
課題を見つけるためには、ライフスタイルを「見える化」するというのが、とても大事です。だから僕はまず、ウェアラブルのデバイスを必ず提案します。つけているだけで運動量や睡眠サイクルなどがわかりますし、食事をどんな風にとっているかがわかるものもあります。そういうものを使って、一度ライフスタイルをデータ化し、それを全て分析していく。
あわせて、データには出ない生活習慣や、どういう生き方をしてきたのか、といった話をカウンセリング。その人の背景を詳しく知っていきます。これまでの経験、生き方が、課題につながっていることは多いです。
―トレーニング指導で一番力を入れていることは?
鍛える前に「体を整える」ということをよくします。みなさん、いきなり「鍛えたい」「筋トレがしたい」という方が多いんですが、鍛える前には体がある程度整っていないといけません。
「整っている」というのは、姿勢がよいか、可動域や柔軟性に問題がないかなど、運動のベースになる部分。整っていると鍛えていくときに障害になりにくいので、ある程度は先にやっておいた方がいいんです。
とくに現在はコロナ禍以降、多くの方が低活動になり、体が硬くなるということが起きています。だから「整える」ということは、みんなやったほうがいいと思っています。
齊藤さんが伝授!
人生をより良くする「整える」エクササイズ&トレーニング
コロナ禍以降、体が固まっている人が増えたという齊藤さんに、ウェルネス向上につながる「整える」エクササイズとトレーニングを教えていただきました。
整えるエクササイズ「ソラシックローテーション」
固まりがちな胸と股関節の筋肉を動かすエクササイズ。回数を重ねるほど、可動域が改善していきます。力まず、必ず呼吸を止めずに行いましょう。
片足を前に出して股関節をのばしながら、上半身を回旋するように交互に手を床につける。上方の手は天に向かって伸ばし、顔もそちらに向ける。足を替えて10回ずつ行う。
整えるトレーニング「プランク 3D」
よくある体幹トレーニング「プランク」を前・横・回転と3Dに動かすトレーニング。一定のポジションで止めるよりも、動かしながら安定してコントロールすることが重要。続けることで自分の体をコントロールできるように。
足を肩幅に開き肩の下に手をついて、体幹を一直線にする「プランク」の状態からスタート。腰を上下に10回動かす。
「プランク」の位置から、今度は腰を左右に10回動かす。
「プランク」の位置から、上半身を左右に10回ひねる。
―最後に、今後の展望を教えてください。
今「人生100年時代」に向けて、世の中がどんどん動こうとしています。コロナ以前からもそうでしたが、コロナ以降なおさらそういった動きが強くなりました。いろんな企業や行政が、「人生100年時代」に向けた何かをやりたがっていて、そういったことのお手伝いもしています。
人生100年時代をどう過ごすか。いろんな企業さんと一緒に、自分ができることをしっかり取り組んで、良い方向に行けたらいいなと思います。
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取材に伺ったトレーニングルームには最新のトレーニングマシンがずらりと並び、齊藤さんの腕にはウェアラブルデバイスが。新しいものもしっかり取り入れて、時代に合わせてトレーニングもブラッシュアップ。だから、先の人生にまで寄りそうトレーナーとして活動できるのだと感じました。これからの「人生100年時代」も活躍できるトレーナーの在り方として、とても参考になりそうです。
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「怪我をしない体作り」を伝えるパーソナルトレーナーに【もっと知りたい「ヘルスケア」のお仕事 Vol.36 Wellness Sports 齊藤邦秀さん #1】>>
取材・文/山本二季
撮影/片岡 祥