認定看護師とは? 資格取得でお給料はどれくらい上がるの?|認定看護師になるには
看護師資格をお持ちの方であれば、認定看護師という資格については聞いたことがあるのではないでしょうか。ですが、認定看護師とほかの資格ではどこが違うのか、給与面や仕事内容、さらには資格の取得方法など、疑問に感じることがたくさんあるかもしれません。
今回は、認定看護師資格がどういった資格なのかを詳しくご紹介します。
認定看護師とは?
認定看護師資格は、すべての分野が認定されているということではありません。
まずは認定看護師とほかの資格がどのように違うのか、役割や働き方など認定看護師資格の概要をご紹介します。自分の働いている分野が認定看護師資格の分野に認定されているのか、どこで働けるかなど、チェックしてみましょう。
認定看護師の役割|実践・指導・相談
認定看護師制度の目的は、以下のように定義づけられています。
「特定の看護分野における熟練した看護技術及び知識を用いて、あらゆる場で看護を必要とする対象に、水準の高い看護実践のできる認定看護師を社会に送り出すことにより、看護ケアの広がりと質の向上を図ること。」
認定看護師の役割は、実践・指導・相談の3つです。それぞれの役割を詳しく見てみましょう。
・実践:臨床推論力と病態判断力にもとづき、水準の高い看護を実践する
・指導:看護職者に対して看護実践を通して指導をする
・相談:看護職などにコンサルテーションをおこなう
認定看護師はこの役割を業務のなかで担うことで、自分および職場全体の看護の質を向上していくことに努めています。
専門看護師とはどこが違うの?
認定看護師と同様に、看護協会が認めている資格に専門看護師があります。
専門看護師制度の目的は、以下のように定義づけられています。
「複雑で解決困難な看護問題を持つ個人、家族及び集団に対して水準の高い看護ケアを効率よく提供するための、特定の専門看護分野の知識・技術を深めた専門看護師を社会に送りだすことにより、保健医療福祉の発展に貢献しあわせて看護学の向上をはかること。」
認定看護師の場合、ひとりの看護師の質および、認定看護師の所属する職場全体の質の向上に注力してきました。これと比べて専門看護師の場合、看護師ではなく看護学の向上を図ることが目的です。この点が、認定看護師と専門看護師の大きな違いといえるでしょう。
そのため、役割についても認定看護師の役割である実践・相談に加えて、調整・倫理調整・教育・研究が加わっており、より看護を探求していく資格であるということがうかがえます。
認定看護分野とは|救急看護など
認定看護師はすべての分野で資格があるわけではなく「認定看護分野」と呼ばれる分野が存在します。認定看護分野とは「保健、医療及び福祉の現場において、熟練した看護技術及び知識を必要とする看護分野」として日本看護協会が定めたものです。
今回は、もっとも歴史の古い救急看護をご紹介します。
救急看護認定看護師は、1995年に認定看護師分野として最初に認められた分野です。救急医療や災害など、救急医療が必要な場において迅速な究明やトリアージ、災害現場の急性期看護ができる看護師を育成する目的で認められました。
現行の認定看護分野|21分野
現存する認定看護分野は、2026年度をもって教育終了となります。現在の認定看護分野は以下の21分野となります。
・救急看護
・皮膚・排泄ケア
・集中ケア
・緩和ケア
・がん化学療法看護
・がん性疼痛看護
・訪問看護
・感染管理
・糖尿病看護
・不妊症看護
・新生児集中ケア
・透析看護
・手術看護
・乳がん看護
・摂食・嚥下障害看護
・小児救急看護
・認知症看護
・脳卒中リハビリテーション看護
・がん放射線療法看護
・慢性呼吸器疾患看護
・慢性心不全看護
新たな認定看護分野|19分野
2020年度より現行の認定看護制度が改定。新たな看護分野として編成をされ、19分野が認定されました。
新たな認定看護分野は以下となります。
・感染管理
・がん放射線療法看護
・がん薬物療法看護
・クリティカルケア
・緩和ケア
・呼吸器疾患看護
・在宅ケア
・手術看護
・小児プライマリケア
・新生児集中ケア
・心不全看護
・腎不全看護
・生殖看護
・摂食嚥下障害看護
・糖尿病看護
・乳がん看護
・認知症看護
・脳卒中看護
・皮膚・排泄ケア
新たな認定看護分野の特徴は、ふたつあります。
ひとつは、すべての認定看護分野に特定行為研修の内容を組み込んだこと。もうひとつは、さまざまな場所での看護師の役割が期待されている社会状況から、地域などの「あらゆる場」で認定看護師としての力が発揮できるような内容となったことです。
認定看護師の活躍の場は?|医療機関・訪問看護ステーションなど
認定看護師の活躍の場は多岐にわたります。とくに病院などの医療機関が活躍の場として多いことが特徴です。
近年では地域での看護師の活躍が期待されているということもあり、訪問看護ステーションで活躍する認定看護師も増加しています。活躍の場が増えることによって、よりいっそう認定看護師の需要も高まるといえるでしょう。
認定看護師のお給料はどれくらいなの?
時間とお金をかけて取得する資格ですから、給料への影響も期待したいところです。認定看護師の資格を取得することで、給与へはどのくらい影響するのでしょうか。
ここからは、認定看護師の資格と給与の関係性についてご紹介します。
看護師の給与・年収はどれくらい?|平均年齢41.2歳・勤続年数8.9年
看護師の給与事情を知ることで、認定看護師の給与事情も見えてきます。ここからは、2020年賃金構造基本統計調査の資料にもとづき、看護師の給料と平均年収について詳しくご紹介します。
平均月給額は約33万8千円
看護師の平均月収は33万8,400円となっています。この月収は平均年齢41.2歳、勤続年数8.9年の看護師としており、医療業界で見ると月収としては低めです。
なお、男女で比較してみても、性差で月収の額はほとんど変わらず、男性が1万円程度高いかどうかといったところ。
企業規模別に見ると、やはり規模の大きい医療機関が月収は高い傾向です。この額には夜勤手当や、さまざまな業務による業務手当などがついているので、基本給のみで見ると、医療職種のなかでも少ないものと考えられます。
賞与の平均額は約85万8千円
看護師の賞与の平均額は84万8,000円。平均年齢や勤続年数については、月収額のデータとほぼ同じです。月収同様に企業別に見ると企業規模が大きいほど、賞与の額も高額である傾向にあります。
看護師の平均年収は約492万円
看護師の平均月収やボーナスから算出した平均年収は、491万8,300円です。この値も企業規模別によって変わってきます。
規模の大きい医療機関では、月収や賞与が高額であるぶん、年収も高いことが特徴です。企業規模が大きいと、働く時間も企業規模が小さいところに比べて短いため、短時間でしっかり働いてしっかり稼げる環境が整っているといえるでしょう。
認定看護師の資格手当はどれくらい支給される?
ここからは、認定看護師の収入を見ていきましょう。実は、認定看護師の資格を取ったからといって収入が高額になるというケースは多くありません。
日本看護協会が発表した資料では、医療職俸給表(三)において、新人から副看護師長まで約 8割の看護職員が2級に留め置かれているとしており、ここには認定看護師も含まれています。
結果として、認定看護師の資格手当をもらっていない、あるいは手当をもらっていても少額であるという医療機関が多いということが現状です。
国立病院では、手当をある程度確保できているようですが、それでも6割以上の看護師が認定看護師資格による手当を支給されていません。これを受けて現在、認定看護師の給与を上げるように要望書を提出しており、今後認定看護師の給料状況は変わってくるかもしれません。
手当の支給額は平均5,224円|訪問看護・リハビリ看護が高め
認定看護師の資格手当の平均支給額は5,224円となります。もっとも高額だったのが訪問看護で7,543.5円、次に脳卒中リハビリテーション看護で6,473.2円です。
訪問看護やリハビリ看護が高めな傾向にあるため、給料で考えるとこの分野の認定看護資格を取得するとよいのかもしれません。
認定看護師の資格を取得するにはどうすればいいの?
給料面においては今後改善される可能性もある認定看護師。給料面だけでなく、認定資格を持っているということは看護師としてのスキルや技術を証明するものとなり、全国どこで働いても看護師としての地位が一定に評価されるものといえます。
ここからは、そんな認定看護師の資格取得方法をご紹介します。
認定看護師になるには|日本看護協会の審査が必要
認定看護師の資格を取得したいと思えば、だれでも取得できるわけではありません。認定看護師資格を取得するためにはどうすればいいのか、ここからは受験資格もあわせて認定看護師資格を取るための流れについてご紹介します。
1. 看護師免許を取得し通算5年以上の実務研修を受ける
まずは看護師の資格を取得していることが条件となります。
次に看護師資格を取得しているだけでなく、実務研修が合計で5年以上必要です。そのうち3年以上は認定看護分野の実務研修が必須となります。
つまり、脳卒中看護認定看護師資格を取りたいと考えた場合には、少なくとも3年以上は脳神経外科での経験がなければ受講資格を得られません。
2. 認定看護師教育機関へ入学し修了する
実務研修期間がクリアできていたならば、次に認定看護師教育機関に入学して必要な教育課程を修了します。
2026年度で教育を終了する認定看護師資格を取得したい場合はA課程、2020年度よりスタートした原稿の認定看護師資格を取得した場合には、B課程の教育を受けなければなりません。
・A課程
6カ月以上1年以内の間で615時間以上の教育を集合教育で受けます。つまり、すべて通学で教育を受けていくことが必要です。
・B課程
A課程と異なり、特定行為研修が組み込まれています。そのため研修機関も1年以上と長く、時間数も800時間程度必要です。加えて、認定看護分野の実習と特定行為研修の実習を受けなければなりません。
またB課程はA課程と異なり、一部eラーニングを活用できます。B課程の時間数は多い者の通学などの一部負担は軽減できる可能性があり、勤務をしながら資格取得もできるかもしれません。
3. 認定看護師認定審査を受ける|筆記試験
必要な教育課程を修了したら、認定看護師認定審査として筆記試験を受けます。
試験は一般問題と状況設定問題となり、合計40問を100分の制限時間で回答することが必要です。試験は毎年10月頃に実施されます。
資格は5年ごとに更新|看護実践と自己研鑽の実績について書類審査
資格は一度取れば永年使えるのではなく、5年ごとに更新を受けなければなりません。更新を受けるためには看護師資格を持ち、認定看護師資格を持っていること以外に、申請時に過去5年間において看護実践と自己研鑚の実績があることが必要です。
具体的には、以下のとおりです。
・実践時間が2,000時間を超えている
・学会や研究会などへの参加や発表
・雑誌での発表などの研修実績や研究業績において、50点以上に達している
また、A課程を受けて認定看護師資格を取得した看護師が、更新時にB課程の認定看護師資格の取得を希望する場合には、特定行為研修を修了して所定の手続きを受けることが必要となります。
条件をクリアしてキャリアアップ! 認定看護師を目指そう
看護協会が認定しており、看護師としてのスキルや資質をどの医療機関でも証明できる認定看護師資格。取得まで時間や費用はかかりますが、看護師のキャリアアップを検討している方にはおすすめの資格です。
働く職場によっては認定資格を取得するための支援が充実していることもあります。これからも看護師としてキャリアアップしていきたいと考えている看護師は、ぜひご検討くださいね。
引用元サイト
日本看護協会 認定看護師
日本看護協会 認定看護師ってどんな看護師?
日本看護協会 専門看護師
日本看護協会 2012 年認定看護師の活動及び成果に関する調査報
e-Stat 賃金構造基本統計調査 / 令和2年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種
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