看護師が申し送りで伝えるべき内容と苦手意識を克服するためにするべきことをご紹介!
後任者に必要な情報を伝える申し送りは、看護師にとって大切な業務です。万が一、伝える情報に誤りや漏れがあれば、重大な医療事故につながる可能性があります。
看護師のなかには、そんな申し送りに苦手意識を持つ方もいるかもしれません。そこで今回は、申し送りをスムーズにおこなうためのコツ、メモの活用方法などを解説します。
申し送りとは
そもそも申し送りとは、業務をおこなううえで必要な情報を次の担当者に伝えることです。シフト制を採用している職場、ひとつの業務を数人で分担している場合などにおこなわれ、おもに業務の進捗や指示などを伝えます。
申し送りと混同しやすい言葉が引継ぎです。引継ぎとは、ほかの人の業務を別の人が代わりにおこなうことで、情報を伝えることではありません。業務の引継ぎをおこなうために、申し送りが必要になります。これらの言葉の意味は、明確に異なるので注意しましょう。
申し送りの必要性
次の勤務者はもちろんのこと、別の病棟の看護師に患者の情報を伝えるためにも大事な業務の申し送り。
患者の情報を正確に共有し、要望に沿った看護をするためには看護師同士の申し送りが大切です。
患者の情報を共有する
患者の状態を確認することは、正確で安全な処置をおこなうために重要です。申し送りをすることで、そのときの患者の情報を携わる看護師全員が共有できます。
そのため、申し送りはシフト交代時に次に出勤する看護師に対しておこなうだけでなく、患者がほかの病棟に移動したり、手術・検査などの担当者に引継いたりする際にもおこなわれているのが特徴です。
患者の要望に沿った看護ができる
看護において、患者の心情を理解して、辛さや痛みを少しでも軽減しようと配慮することは重要なことです。治療をスムーズにおこなうためには、患者の希望や要望に沿った看護が不可欠となります。
看護師が患者の要望を共有できていなければ、患者は看護師が代わるたびに要望を伝えなければならず、大きな負担になるからです。患者に寄り添った看護をするために、申し送りは必須となります。
申し送りの方法は現場によって異なる
申し送りには以下のような手段があり、どの方法を使うかは目的や現場の状況によって異なります。
・シフト交代時に口頭でおこなう
・引継ぎ用のノートを活用する
・パソコン・メールなどのシステムを利用する
口頭での申し送りはすばやく円滑にできますが、伝える情報に漏れが生じたり、聞き手に誤って伝わったりするデメリットもあります。引継ぎ用ノートやパソコン・メールなどを併用すれば、情報伝達の確実性が高まるでしょう。
申し送りで伝えるべき内容
申し送りでは、おもに以下の3つについて伝えます。
<患者の変化>
・変わりない場合は簡潔に「変化なし」でOK
・変化があった場合は「時間」「状態」「対処の内容」「医師の指示」などを具体的に伝える
<処置をした時間と量>
・点滴を交換した時間と量
・ドレーンや尿などの時間と量
・解熱剤や降圧剤など臨時薬を使用した時間と量
<後任者にやってほしい仕事>
・患者が希望している事項
・家族から依頼された事項
・医師から指示された処置や投薬など
具体的には、「ムンテラやインフォームドコンセントの日程調整」や「医師や家族への報告」など。
新規入院患者の場合は、以下の情報も加えなければなりません。
・氏名や年齢、性別、病名などの基本情報
・移送区分
・現病歴
・既往症
・アレルギーの有無
・検査データ
申し送りが苦手な方はどうするべき?
看護師にとって申し送りは、慎重におこなうべき重要な業務です。そのため、上手に伝えられるかどうか不安に感じたり、苦手意識を持ったりしている看護師もいるでしょう。ここでは、申し送りが苦手な人に向けて、5つのポイントをご紹介します。
1. 事実を優先して伝える
申し送りでは、事実を優先して伝えます。事実と自分の意見が混在すると、聞き手は混乱してしまい、正確な情報が伝わらないからです。
まず、事実だけを伝え、必要があれば「ここからは私の意見ですが…」と断りを入れたうえで、このように変化する可能性がある、このような視点で観察するのがよいと考えているなど、予測や意見をつけ加えましょう。
2. テンプレートを用意する
あらかじめ申し送り事項のテンプレートを作成しておくことで、伝える内容が統一でき、情報が聞き手にわかりやすく伝わります。
具体的には、「伝えるべき項目」を「伝える順序」で記載しておくだけでOK。申し送りをする際に、数値や事実を書き加えるだけで情報がまとまり、手早く正確に伝達できます。
テンプレートは、個人ではなく部署ごとに用意するのがおすすめです。共通のテンプレートを使うことで、個々の看護師の経験値やスキルに関係なく、毎回均等なレベルの申し送りができます。
3. 簡潔に伝える
申し送りでは不用な言葉は省き、必要な情報だけを簡潔に伝えるのがポイント。情報量が多いと、聞き手は結局なにが言いたいのかがわからず、肝心な情報が伝わらないからです。
具体的には、最初に「結論」や「重要事項」を伝えてから、内容を補足説明しましょう。最初に結論を語ることで、聞き手は情報整理がしやすくなります。
4. メモを活用して申し送りの準備をしておく
正確な申し送りをするには、メモの活用がおすすめです。勤務中に起こったことをリアルタイムでメモに残しておくことで、記憶があいまいになることを防ぎます。
メモにはわかりやすく、「時間」「場所」「人物」「内容」を簡潔に記載しておきましょう。時間をかけずに書き留めるために「患者名は部屋番号にする」「時間は数字だけを記載」などのマイルールを決めておくのがおすすめです。
5. ほかの看護師の申し送りを参考にする
申し送りが苦手な人は、ほかの同僚や先輩のやり方を参考にするのもおすすめです。上手な人の話し方はなぜわかりやすいのかを考えながら、以下の視点で観察してみましょう。
・伝える項目や順序
・情報の内容
・声の大きさやトーン
・話すスピード
・視線
見習うべき点を見つけたら、積極的に真似をして改善しましょう。先輩や同僚に具体的なアドバイスをもらうのもおすすめです。
メモを書くときのコツ
正確な申し送りをするためには、メモを活用するのがおすすめです。ここでは、申し送りをする際に、メモを取るときのコツをご紹介します。
1. 項目別に書く
メモを項目別にわけて書くことで内容が整理され、読み返したときにわかりやすくなるでしょう。内容を「日時」「業務内容」「所感」などの具体的な項目にわけるだけで効果があります。
また、「業務内容」をさらに細かい項目にわけておくと、忙しい業務の合間でもかんたんな単語や数字を書き込むだけで記録できるので便利です。
【業務内容のメモ例】
・305(患者の部屋番号)
・1530(15時30分)
・体温:37.6
・血圧:98/128
・排泄:あり、軟便
2. 客観的な事実と主観をわける
申し送りをする際に、事実に自分の所感が入り込んでしまうと情報が混乱します。メモを取る際には、まず事実だけを記載し、必要があれば最後に「意見」「質問」「相談ごと」などを書き加えるのがおすすめです。事実と所感をわけることで情報が整理され、わかりやすくなります。
申し送りでは、「実際のデータや起こったこと」と「それに対して感じたこと」をわけて伝えるのが基本です。メモをする段階で、伝えるべき事実に自分の意見や感想が入り込んでいないかを確認する習慣をつけましょう。
3. 「5W1H」を意識しておく
「5W1H」とは、情報伝達に必要な6つの要素を表した言葉です。「5W1H(いつ・どこで・だれが・なにを・なぜ・どのように)」に沿ってメモをとることで、情報が整理され、申し送りの際に相手に伝わりやすくなります。
<5W1Hを使ったメモ例>
・いつ(When):2330(23時30分)
・どこで(Where):305(部屋番号)
・だれが(Who):○○さん
・なにを(What):睡眠導入剤
・なぜ(Why):同室の患者のいびきがうるさく眠れないとの訴え
・どのように(How):当直○○先生による処方。0200(2時)に眠っているのを確認
申し送りは施設に関わるすべての人にとって重要
病院において、申し送りはすべてのスタッフにとって非常に重要な業務です。病院では、ひとりの患者に医師や看護師以外にも、薬剤師や検査技師、理学療法士など多くの職種のスタッフがチームを組み、関わっています。情報をすべてのスタッフが共有することで、患者の希望に沿った、適切な治療や治療計画立案が可能になるからです。
とはいえ、日々の忙しい業務のなかで、申し送りに多くの時間を割けるわけではありません。後任者に短時間で伝えるためにも、必要な情報を整理してわかりやすい申し送りをすることを心がけましょう。