外見はもちろん、内面もサポートする「メイクセラピスト」のお仕事とは?【もっと知りたい「ヘルスケア」のお仕事Vol.93/メイクセラピスト・小林友子さん】#1
「ヘルスケア業界」のさまざまな職業にフォーカスし、その道で働くプロに、お仕事の魅力や経験談を語っていただく連載企画「もっと知りたい! ヘルスケアのお仕事」。
今回お話を伺ったのは、メイクセラピスト・小林友子さん
東京・吉祥寺で「ガラスの靴」を営む小林さん。「印象変えちゃう専門家」として、エステやパーソナルカラー、メイクセラピーで、お客様の「綺麗になりたい!」を全力でサポートしています。
前編では、小林さんがメイクセラピストになったきっかけや、セラピーで大切にしていることなどを伺います。
苦手だったカウンセリングも
練習と経験を重ね、今では大好きに!
――この業界に進まれたきっかけを教えてください。
独身時代はホテルに就職して、秘書課で働いていましたが、結婚を機に退職。出産し、子育てに専念していたのですが、子どもに手がかからなくなったので、近所のホームサロンで働き始めたんです。
――もともとエステに興味があったんですか?
好きでしたね。昔から、見よう見まねで母や姉の顔を触ったりしていたのですが、それだけでは物足りなくなり、通信教育でエステの資格を取りました。当時はエステティシャンになることは考えていなかったのですが、たまたま私が通っていたサロンで、私を担当してくれていた人が妊娠を機に辞めることになり、私に「資格を持っているなら、やってみない?」と声がかかったんです。
個人経営の小さなサロンだったので、就職というよりお手伝いという感じでしたが、施術するからにはプロですよね。正直、通信教育の勉強だけでは知識も技術も足りず、その後いろいろディプロマを取得して、腕を磨きました。
――その時に、メイクセラピーとも出会われたんですか?
タイミング的にはそうですね。その頃、エステだけに関わらず、何かもっと自分のプラスになり、お客様にも喜んでいただけるものはないか、と探していたんです。
具体的なきっかけはテレビの情報番組。「岩井式メイクセラピー検定」について紹介していたんですが、「これだ!」と思って。すぐ検定事務局に電話し、資料を取り寄せました。
――すごい行動力ですね!
ただ、3級を取ったあと、「なんか、思っていたのと違うかも……」と思って、勉強を一旦ストップさせてしまいました。自分でも勉強していたことを忘れかけていた頃に、サロンのお客様から「メイクの勉強、していたよね?」って言われて、「そういや、そんなのもあったな〜」って、思い出したんです。すると、中途半端なまま終わっていたのが急にもったいなく感じで、改めて2級に挑戦してみました。そうしたら、今度はものすごくハマっちゃって!
――何が違ったんでしょう?
2級から心理学の学びが加わるんです。それがすごく面白くて! 当時の私に必要なことだったようで、心に刺さりました。「もっともっと知りたい!」と、1級、特級も、間髪あけずに取得しました。
特級を取ると、認定メイクセラピストになれるんです。プロとして認定してもらえる。これが私にとって大きな転機ですね。
――勉強で大変だったことはありますか?
やっぱり「カウンセリング」です。これが難しくって! もう向いてないんじゃないかと思うこともありました。
――どうやって乗り越えたんですか?
夫や娘にお客様役をしてもらい、何度も練習しました。いろんなパターンのお客様を演じてもらって、それに合わせて質問していくんです。娘や姉には、練習の他に、実際の検定のモデルも手伝ってもらいました。
あとは実践あるのみ! おかげで今は、カウンセリングが大好きです。
開業3ヶ月でサロンの移転、父の死去……
辛いことを乗り越えて、今がある!]
――独立してサロンを開業する、と決めたきっかけは?
いろいろあるのですが、とにかくメイクセラピーをもっともっとやりたかった。誰に頼まれたわけでもないですが、使命に近いものを感じていました。また、お客様のメイクセラピーをしているうちに、「私自身、もっといろいろチャレンジしなきゃ!」と思うようになったんです。それで独立を決断しました。
でも、直前になって急に不安になり、泣いたこともありました。「果たしてお客さまは来るのか?」とかね。それも、今ではいい思い出です。
――大変だったことや、思い出深いエピソードはありますか?
大変だったのは、サロンの移転。実は最初、久我山でオープンしたんですが、そこが住居専門の建物で……。駅から2分、コンクリート打ちっぱなしのおしゃれ物件で、「これだ!」と気に入っていたのですが、すぐに商業利用がバレて(苦笑)。3ヶ月で泣く泣く退去。ちょうどその頃、父が亡くなり、いろいろなことが重なりましたが、「ここで辞めるわけにはいかない、絶対に乗り越える!」と自分を奮い立たせ、物件探しを再開。数少ない中から、巡り合わせのようにこの物件と出会い、今に至ります。
お客様の「変わりたい!」という思いに寄り添い、
外見も内面も全力でサポート
――メイクセラピーのポイントは何でしょうか?
「セラピー」と「レッスン」は違います。「メイクセラピー」だと、お客様が心に抱えた悩みをしっかり聞いて、それに合わせてメイクをします。
「メイクレッスン」だと、私の場合「大人のイメチェンメイクレッスン」という名前をつけているのですが、セラピーほど心は扱いません。イメチェンしたいということは、少なからず「変わりたい」っていうことですが、あくまで「レッスン」。変わりたい度合いやその人のお悩みの度合いに合わせて、メニューを選んでいただいています。
また、これは「セラピー」も「レッスン」も同様ですが、場合によって、対人コミュニケーションのアドバイスをすることもあります。例えば「可愛くなりたい」というお客様にどんなに可愛く見えるメイクをレクチャーしても、それだけで日常が変わっていくかというと、そうではないですよね。対応がすごく冷たかったり、つっけんどんな物言いでは、可愛らしさとは無縁です。内面も外面も一致して初めて、その人の「なりたい自分」になれるんです。
――お客様に満足していただくために、心がけていることはありますか?
大切にしているのは、「毎回全力投球」。一人一人、どんなお客様にも手を抜きません。開業当時誰が来るのか不安で泣いていたのに、こんなにたくさんの方に来ていただいて、手なんて抜けませんよ! なので、1日に受けられるお客様が限られていて、1組か2組。完全予約制としています。
また、私自身メイクセラピー検定や養成講座で学んだことの全てが、サロンの運営に役に立っています。メイクセラピストの学びは、人としての学びでもあります。この学びがなかったら、技術だけでは続けてこられなかったと思います。例えば「信頼関係」もその一つですよね。お客様に「来てよかった」と思ってもらえるような対応を心がけています。
お客様が「なりたい自分」に近づけるよう、メイクという外見だけでなく、対人コミュニケーションなどのアドバイスも行い、内面までしっかりサポートされている小林さん。メイクセラピストのお仕事は、思っていたより奥が深いなと感じました。
後編では、現在の働き方や今後の目標、未来のセラピストに向けたアドバイスを伺います。
取材・文/児玉知子
撮影/喜多二三雄