子どもからプロ選手まで、スポーツ障害で夢を諦めさせない!【もっと知りたい「ヘルスケア」のお仕事vol.96/アスリートゴリラ鍼灸接骨院 高林孝光さん】#1
「ヘルスケア業界」のさまざまな職業にフォーカスし、その道で働くプロに、お仕事の魅力や経験談を語っていただく連載企画「もっと知りたい! ヘルスケアのお仕事」。
今回は、東京都足立区にある「アスリートゴリラ鍼灸接骨院」院長の高林孝光さんにインタビュー。柔道整復師、鍼灸師として多くの施術を行いながら、プロスポーツ選手の専属トレーナーとしても活躍しています。
前編では、高林さんがヘルスケアの仕事についたきっかけや、お仕事で大切にしていることを教えていただきます。
お話を伺ったのは…
「アスリートゴリラ鍼灸接骨院」院長 高林孝光さん
鍼灸師・柔道整復師。治療家として延べ10万人以上を施術し、多くのアスリートの治療実績を持つ。スポーツ障害に精通する専門家として講師活動や子ども向けの筋トレ指導も。『たった10秒!子ども筋トレで能力アップ』(さくら舎)など著書多数。
高校卒業後、すぐに柔整の道へ。働きながら鍼灸の資格も取得
――まずは高林さんが柔道整復師・鍼灸師になった経緯を教えてください。
高校時代、サッカーとラグビーをしていたんですが、あるとき捻挫をしてしまい、接骨院に通い始めたんです。そこで陸上部の女の子に「接骨院、似合うんじゃない」と言われて(笑)。それが仕事として興味を持ったきっかけでした。それで意識してみると、接骨院の先生とケガをした子どもたちが一緒に喋れて、これが仕事になるなんて、なんて楽しそうなんだろうと思ったんです。
高校卒業後、柔道整復師の専門学校に入り、21歳から柔道整復師として働き始めました。すごく忙しかったんですが、1日中仕事をしていると、なぜか「また勉強したいな」と思うようになって(笑)。「30歳までに取れる資格は全部とりたい」と思って、鍼灸の専門学校に通い始めたんです。
――お仕事をしながらですよね?
はい。午前中から接骨院で仕事をして、終わったら専門学校の夜間部に行く生活が3年。学費を払わなきゃいけないので節約のために、足立区から荒川区まで自転車で通っていました。すごく大変でしたけど、この自転車生活のおかげか、今は仕事をしていても全然疲れません。
ただ当時はやっぱり大変だったので、途中で「自分で開業しちゃったほうがいいんじゃないか」と思って、鍼灸学校の2年生の終わりごろに接骨院を開業したんです。
――たしかに、自分の院なら時間の都合もつけやすいですよね。
そうですね。それに、卒業して本格的にスタートするときに、お客さんが少しいる状態から始められるなと思ったんです。だから開業して1年ちょっとは、午前中だけ仕事をして、午後は休診にするかたちでした。
――では現在の働き方を教えてください。
基本は8:00~20:00診療で、12:00~15:00が休憩です。でもお客さんの状況やスポーツ選手の試合日程などで変動は大きいですね。
休日は水曜日、土日は午前中のみで、変則週休2日という感じです。こういう時代なので、スタッフは8:00出勤20:00退勤にしています。
成長痛から運動機能まで診られる「スポーツ障害」の専門家に
――「アスリートゴリラ鍼灸接骨院」の施術の特徴や、力を入れていることを教えてください。
特に力を入れているのはスポーツ障害の治療です。自分も怪我をして接骨院に通った経験があるので、スポーツをしている子どもも大人も、大事な試合に間に合わせてあげたいし、選手には最大限のパフォーマンスを引き出してあげたいという想いがあります。
そのためには、年代を問わず結果を出すこと。子どもとオリンピック選手では、骨の強さも筋肉の厚さも違います。そういった点も考慮し、それぞれに合わせた施術を提供できることが、一番の強みだと思います。
スポーツ障害で有名な医療機器会社での講師の実績もあるので、症状に合わせた医療機器の選択も得意です。またスポーツ障害の治療に関するDVDも出しており、同業の方々からも好評いただいているようです。
――幅広くご活躍されていますが、施術も現役でされているんですか?
はい。そこもこだわりがあって、診察は必ず私がマンツーマンで行います。レントゲンやMRIがなくても、痛みの原因が骨なのか、筋肉なのか、関節なのか、神経なのかが見分けられる。そういう検査ができるというのも、院の特徴のひとつです。
その技術があるおかげで、すぐに効果を実感できる時短手技も提供できます。子どもたちって、早く結果を出さないと飽きちゃうんですよね。だから効果の早さというのも力を入れているところです。
また成長痛や軟骨などの骨の悩みに対応できる接骨院としても好評いただいています。雪印メグミルクの骨の体操も考案指導しているんですよ。
――大人から子どもまでスポーツ障害に関わって20年超というのも強みですよね。
そうですね。子どものころから来てくれていた子が、プロ野球選手になってユニフォームを持ってきてくれたこともあります。一緒に3度目のオリンピックを目指している選手もいますね。
そういう夢を叶えた選手たちのユニフォームを見て、スポーツをしている子どもたちを励ましたり、施術に来たプロ選手が子どもたちにアドバイスしてくれることもあります。そんな夢のある場所になっているのは、とても誇らしいですね。
対症療法ではなく、きちんと効果が感じられる施術を提供したい
――高林さんがお仕事のなかで大切にしていることとは?
「スポーツ障害で夢を諦めさせない」というのは開業当時からのテーマです。それは例えばビリの子を1番にさせることだったり、最大限のパフォーマンスで試合に臨めるようにすることだったりします。みんな絶対に伸びしろを持っている。それを施術の力で引き出してあげたいんですよね。
だから「怪我をして試合までになんとかしたい」という人には、すぐに結果が出る手技を提供します。痛みの原因を見極め、適切な処置をすれば、成功する確率は上がります。対症療法ではなく、しっかり原因にアプローチすること。リラクゼーションではない、痛みが取れる接骨院として、そこはいつも大切にしているところです。
ヘルスケアのお仕事の心得3か条
高林さんに、ヘルスケアのお仕事をするうえで大切な心得3か条を教えていただきました。
1.新しいアイディアを考え、新しいアプローチを作り出す
2.少しでも迷ったら行動し、教える側になる
3.努力を欠かさず、断らない勇気を持つ
お医者さんの術式って、今正しいと思っていることが5年後には全部変わっている…ということが意外とあります。でも接骨院って、湿布と塗り薬とマッサージ…と長年変わらないところも多い。そうではなく、今やっていることが正しいと思わず、新しいアイディアをどんどん出し続けていく。そうすることで、自分も成長できるんだと思います。
また、ある程度成長したら、次は教える人、本を書いている人、講演をしている人を目指す。そうすることで、さらに成長できますし、周りからも認められ仕事も軌道にのっていきます。そのためには、まず行動すること。そしてチャンスがきたときに断らない勇気を持つことです。とにかくチャレンジする。失敗したとしても、それは「ダメだった」という結果が出ただけで、必ず次につながっていくと思います。
次回後編では、接骨院の経営面にフォーカス。これから柔整師を目指す方へのアドバイスもお聞きします。
取材・文/山本二季