過去に体験した怪我が現在から未来への道標になった【もっと知りたい「ヘルスケア」のお仕事 Vol.64 木村康彦院長 #1】
ヘルスケア業界のさまざまな職業にフォーカスして、その道で働くプロにお仕事の魅力や経験談を語っていただく連載『もっと知りたい「ヘルスケア」のお仕事』。今回は、口コミで高い評価を得ているきむらカイロプラクティック 木村康彦院長へインタビュー。
前編では、数ある手技の中からカイロプラクティックを選んだ理由や開業するまでの経緯、カイロプラクターの魅力を伺います。
お話を伺ったのは…
きむらカイロプラクティック 木村康彦院長
大学で建築について学んだ後、保険会社に勤務。32歳の時にカイロプラクティックを職業にすることを決めて日本カイロプラクティックカレッジに2年通い、治療院で3年の経験を積んだのち、37歳で結婚とともに吉祥寺にきむらカイロプラクティックを開業。各大手サイトのカイロプラクティック部門で口コミ首位を獲得するなど、顧客からの信頼が厚い院として話題。
自分も周りも助けられると思い、「カイロプラクター」を目指した
――カイロプラクターとの出会いについて教えてください。
中学1年生の頃、体力測定の際に骨折して腰椎分離症を患ったことがきっかけです。
それ以来痛くない日がないくらいに苦しんでいて、腰痛改善のために整形外科、マッサージ、鍼灸、整体など、とにかくあらゆる治療法を試しました。その中で一番自分に効果があった手技が、カイロプラクティックの治療だったんです。
今では、結果的にこの出来事がきっかけとなってカイロプラクターになりましたが、当時は特に目指していたわけではありませんでした。
――そうだったのですね。では、いつ頃からこの道へ進まれたのでしょうか?
もともと学生の頃は、建築家になって設計事務所を開きたいと思っていたのですが、複雑な設計図を書くことに抵抗を覚えるようになり、大学1年目で建築家の道は諦めました。ただ、建築家は諦めても、どこかに属するというよりは自営業がやりたいと思う気持ちは変わらず…。業種は決めていませんでしたが、自営業を営むためにまずは社会経験を積まなければと思い、保険会社に5年ほど勤め、経験を積んだのちに退職して結婚相談所、ラーメン店、ガラス工芸品店など自営業が叶いそうなあらゆる業種を見学しました。そこで辿り着いたのが、過去に自分が体験したカイロプラクティックでしたね。
保険会社に勤めていた時期もずっと腰が痛くて痛くて、とても普通に勤務できる状態ではない日々が続いていましたので、自分にとってカイロプラクティックを職にすることは好都合と考えました。自分の腰痛の手当ができるし、ということも理由の一つでした(笑)。
――それから学び始めたのですね?
はい、カイロの専門学校へ2年間通い始めて勉強の日々を送りました。将来の開業へ向けて、在学中もカイロプラクティックに限らず、いろんな手技の院に通い、それぞれの院の良いところを自分の中に取り入れました。通いながら「ここで働いたら面白そうだ」と感じる院に出会うと、その場で「働かせてください」と、申し出ることもありましたね。笑 そんな体当たりな経緯がほとんどでしたが、雇ってくださる院もあり、いいところだけ吸収したらさっと辞めてまた次の院へ…といったことを繰り返して自分の手技を常に更新してきました。
学校卒業後は、先生に紹介してもらった院で3年働いたのち、無事に開業することができました。
今まで自分が積み上げてきた経験が、患者さんの回復へ繋がることが嬉しい
――実際に働いてみて、大変だと感じたことはどんなことですか?
触診についてはかなり学びを重ねましたね。
というのも、学生の頃から、授業で教わるだけでは足りませんでした。例えば歪みの方向について先生が「右」といえば、それが正解になってしまうんです。私は、そこで実際に自分の手で触って確かめないと腑に落ちなかったので、理屈と自分の感覚を信じ、実践して触診力を身につけました。
――教わることだけを吸収するだけでは終わらせず、ご自身なりに模索されたのですね。
はい、全てを鵜呑みにするのではなく自分でいかに追求できるかが重要だと感じ、何が正しいのかを突き詰めていきました。カイロプラクターの仕事をする上で、必要なポイントだと感じています。
――反対に、施術をしていて嬉しいと感じることを教えてください。
どの先生も同じだと思いますが、やはり患者さんが改善していく様子を見ることがが一番嬉しいですね。以前、交通事故に遭って歩けなくなった方がいらっしゃって、施術したら回復したことがありました。その方は、いろんな病院を回ってきたようで最後の望みでご来院いただいたみたいで、そのときは嬉しかったですね。
患者さんからの信頼を得るには、「説明できること」が重要
――木村院長の一日のタイムスケジュールを教えてください。
大体、1日に20人前後の施術を一人あたり25分くらいで行なっています。空いた時間などは、散歩に行ったり院内でYouTubeを見たりして息抜きしています。笑
――施術で特に重要視していることはどんなことですか?
問診ですね。カイロプラクティックは、目に見えるレントゲンやMRIなどを使わずに患者さん本人から状況を聞き出して原因を探っていくため、どこが痛いのか、目に見えない分、丁寧に聞き出すことを大事にしています。
あとは、説明できる施術を目指しています。例えば、施術後に患者さんからクレームをいただいた際に、説明できないと患者さん側からしたら「説明できないことをしていたのか?」と不信感に繋がりますよね。そういったことも踏まえて、必ず説明できるような施術を意識して行なっています。反対に、痛みを発している箇所以外で改善されるといった出来事が稀にあり、感謝されることがあるのですが、直接その部位にアプローチした施術を行なったわけではないので、自分が治したわけではないということをしっかり説明するようにしています。そういった住み分けをしっかりすることで筋の通った治療をしていくことができると思っています。
――なるほど。口コミにもあるようにお客様満足度が高い理由の一つとお見受けしました。
そう思いますね。あとは、患者さんが不安そうだったら「今日はやめておきましょう」などと施術を無理に強制しません。回数券も用意はあるのですが、必ず2・3回お越しいただいた上で、満足いただけそうだと患者さんご自身で判断をされた場合のみ販売しています。
他人をそのまま信じるのではなく、自分でしっかり疑問に思ったことを学び直して一つずつクリアにしていく木村院長の姿勢は、困っている人を助けるためにとても重要なことだと感じました。また、ご自身が怪我をされた経験によってより患者さんの気持ちが分かることが支持されている理由の一つだと思います。
後編では、きむらカイロプラクティックの独自の矯正方法や今後業界を目指している方へのアドバイスなどを伺います。
取材・文/東菜々(レ・キャトル)
撮影/喜多 二三雄