心理学の知識を活かした自己肯定感が上がる声掛けで10年通いたくなるサロンに!【ヨガ講師 武田明子さん】#2
地方でヘルスケア事業に携わっている方に、開業や経営についての経験談をインタビュー。前編に続き、大阪狭山市を拠点に、ヨガ講師として活動している「サロンAkiko」主宰・武田明子さんにお話をお聞きします。
後編では、武田さんがお仕事をするうえで大切にしていること、地域でのサロン経営について教えていただきます。
お話を伺ったのは…
「サロンAkiko」主宰・ヨガ講師 武田明子さん
大阪狭山市生まれ。会社員生活18年を経て、2010年ヨガ講師に転身。スポーツジムなどで多数レッスンを受け持ちながら、2013年「サロンAkiko」を立ち上げる。自然の中でのヨガイベント、ホテルやカフェとのコラボイベントなど、多数企画・開催。会社員経験を活かし、着替えなしで誰でも簡単にできて、短時間で効果を感じる「仕事着そのままヨガ®(商標登録済)」を考案。
地域での活動で大切なのは
ストレスを感じさせない環境作りと
自己肯定感が上がる声掛け
――お仕事をするうえで大切にしていることは何ですか?
健康のために大切なのは、ストレスをためず、笑顔で楽しく過ごしていけることだと思います。私の仕事は、そのお手伝いをすることです。
戦後、日本人の生活は大きく変わりました。今の生活習慣、食習慣を考えると、不健康になっても仕方がない環境になっていると感じています。だからと言って、これはダメ、こうしないといけないといって、良い生活にしようと頑張りすぎることで起こるストレスが、体に悪影響を及ぼすことも感じています。
ストレスはあるもので、なくすことはできない。だから対処する方法や、ためないようにする方法を知っていることが大切です。そのためには、今の自分を知り、理解すること。そのうえで、自分で選択していくことが、健康で質の高い人生を送ることにつながるのだと思います。
だから私のレッスンでは、レッスン時間は無理なくとれるだけで大丈夫と伝えています。月1回しか来られないなら、それでいいんです。ストレスにならず、「楽しかった」と笑顔で帰ってもらう。そこが一番大切だと思っています。
――集客など経営面で大切なことは何だと思いますか?
地域密着だととくに、講師側の自己成長がお客さんにダイレクトに伝わる気がします。自分が止まっていたら、お客さんも離れてしまったり、新しい人を呼んでもらえなかったりする。逆に成長を続けていけば、「また新しいこと始めたね」「先生は常に変わっているね」と言ってもらえるんです。だから常に向上し続けるという気持ちは大事にしています。
あとは地域の人とのお付き合いも大切です。例えば地域のお店で買うとか、病院や歯医者に行くとかするだけでも、人と繋がるきっかけは生まれます。そうして、人に紹介してもらえる環境を作っていくことが大切。それだけで宣伝や営業活動をしなくても、集客していけるというのも、地域ならではだと思います。
――地域での活動の場合、リピートも大切だと思います。何か取り組みはしていますか?
やめていった方ももちろんいますが、立ち上げてから10年間ずっと来てくれている方もいっぱいいます。でも戦略的には何もしていないんです。
思い当たることとしては、生徒さんから「先生はよく覚えてくれている」と言われることは多いです。たしかに、その方の成長は、できるだけ言葉に出すようにしています。「最初はこうだったけど、今はこんなこともできている。それは続けてきたからこそだよね」と伝えることで、継続へのポジティブな意識が持てる。そんなコミュニケーションができているのかもしれません。
――そう言ってもらえると、自己肯定感も上がりそうです。
それも言われたことがあります。厳しいところだとダメな部分を指摘されてしまうけど、私は「それでいい」「そのままでいいんです」とよく言うんです。きっと心理学などを学んだおかげで、そういった言葉が勝手に出てくるんだと思います。
戦略的にしているわけではないけれど、自己肯定感が上がっていくような声掛けは「継続したい」と思える理由の一つかもしれませんね。それと、やはり「先生といると元気がもらえる」と言ってくださる方ばかりなので、自然と続けてらっしゃるのかもしれません。
――武田さんは「仕事着そのままヨガ®」を商標登録していますが、お仕事の面でよかったことはありますか?
ただのヨガではなく名前をつけていることでキャッチーになる分、気にしてもらえる面はあると思います。着替えずにできるということが伝わると興味を持ってもらえることは多いので、イベントなどで「仕事着そのままヨガ®」と謳えば宣伝にはなっているのかな。まだ商標登録中の段階でしたが、「仕事着そのままヨガ®」という言葉を見つけていただき、新聞に載せてもらえたこともありました。それはすごく反響がありましたね。
自分の心身のバランスを整えながら
生徒さんも気持ちよく通える関係作りを
――地方でヘルスケアの仕事をするうえで大切なこと3か条を教えてください。
1.自己管理
自分の体はもちろん、心の管理も大切だと思います。自分で自分を整える力がないと、やっぱり説得力がないですよね。その点では、本当に心理学を学んでいてよかったと思います。自営業はどうしても不安定な仕事ですから、お金が絡んでくる分、仕事がメンタル面へ与える影響も大きい。でも心理学を学んだことで、世界の見える角度が変わり、落ち込み方が全く変わりましたから。
2.無理なく続けられる環境作り
自分も、来てくれるお客さんも、その人のペースで無理なく継続できるものを提供したいと、私は思っています。だから「行けるときに行けばいいんだ」「細く長くできればいいよね」と、そう感じてもらえる雰囲気というのが大切。また「ここに来たら心地いいね」「なんか行きたくなる」と思ってもらえる空間作りというのも大切にしています。部屋を整えておくというのも1つですよね。そうしてサロンを、空気が澄んでいるように感じてもらえる場にしています。
3.コミュニケーション
環境作りにもつながる部分ですが、人によって心地いい距離感は違うと思うので、その部分を察しながらちょうどいい関わりを持つことがすごく大事だと思います。とくに小さい地方のコミュニティだと、私と生徒さんでも、生徒さん同士でも、サロン以外でのつながりがあったりしますから、「しゃべりすぎない」というのもコミュニケーションで気をつけている部分ですね。
ヨガを通して、心と体が健康になれば
自立するための前向きな気持ちも生まれる
――武田さんの今後の展望を教えてください。
まずは、自分らしく生きるためのオリジナルコンテンツ「AKIKOアートプログラム」を提供していきたいです。「明子アートプログラム」とは、自分らしさを手に入れて、自分を愛する心を持ちながら、どんな人も受け入れる器の広さを持てるようになれるコンテンツです。
昔自分自身が心身共に落ち込み、這い上がってきたなかで、人間の弱さやマイナス面というものをたくさん見てきました。そのうえで自分も相手も、本当に「今そのままでいい」ということを受け入れられるようになった気がします。
それは私にとってオンリーワンの経験値で、知識だけでは伝えきれない部分だと思うんです。それを活かし、人の心に寄り添ったコンテンツを提供したい。マンツーマンを想定しているのでスケジュール面では大変になるかもしれませんが、そういったコンテンツは立地に関わらずどこでも実現できますし、地域の方が適しているんじゃないかとも思っています。
そしてそのコンテンツを通して、心と体が健康で、経済的に自立できる女性でいっぱいにしたいです。今までヨガをお伝えしてきて、同時にちょっとお茶をしながら会話したりというコミュニケーションもとってきましたが、レッスンでももちろんですが、その会話の時間がきっかけで成長していった方がすごく多いんです。今までシステムを作らずとも、そういった嬉しい変化を感じてこられたので、今後はしっかりチカラを入れて取り組んでいきたいですね。
――最後に、これから地方でヘルスケアのお仕事をしていく方にアドバイスをお願いします。
地方はクチコミの力が強いので、どうしてもコミュニケーション能力が必要だと感じています。それは、すごく関わりを持てばいいというわけでもなく、適度な距離感が大切。コミュニケーション能力を高めるには、人間力を高めることです。自己成長し続けることを大切にしてください。
またサロンを立ち上げるなら、1つのことにこだわりすぎないことも大切だと思います。今は職人的に1つのものだけで食べていける時代ではありません。収入の柱は何個もあるほうがいい。地域でやっていくなら、いろんなことに興味を持って、いろんな引き出しを持てるようにしておくといいと思います。「こんなこともできるんだ」という要素があると活動の幅も広がりますから。
取材・文/山本二季