数々の困難を乗り越えて、憧れのトレーナーに。独立するまでにしておくべき経験とは?【もっと知りたい「ヘルスケア」のお仕事 Vol.121 パーソナルトレーナー 萩原智之さん】#1
ヘルスケア業界のさまざまな職業にフォーカスして、その道で働くプロにお仕事の魅力や経験談を語っていただく連載『もっと知りたい「ヘルスケア」のお仕事』。
今回は、西新宿駅にある女性専門のパーソナルジム「Personal Bodymake Hagiwara」にて、トレーナーをしている萩原智之さんにインタビュー。萩原さんは「骨格」にフォーカスした「なりたい骨格エクササイズ」で注目を集めました。一躍その名を広めた萩原さんですが、トレーナーになるまでに紆余曲折があったのだそう。
前編では、萩原さんがトレーナーを目指したきっかけや経緯、独立して現在のパーソナルジム「Personal Bodymake Hagiwara」を立ち上げるまでについてお聞きします。
お話を伺ったのは…
パーソナルトレーナー 萩原智之さん
茨城県水戸市にて、約2年間会社員として働いたあと、1年間アルバイトの経験をしたのち、都内のスポーツケアに特化した専門学校に進学。卒業後は、加圧系のトレーニングジムに就職。勤続7年目に廃業を受けて独立。現在は、「なりたい骨格になれるエクササイズ」を打ち出し、女性客から支持を集めている。
進学、就職、どちらも苦難な展開の連続の末、やっとたどり着いたトレーナー職
――トレーナーを目指したきっかけは?
もともと運動が好きで中学生の頃にサッカーをしていましたが、ケガで辞めてしまって。その後、たまたまスポーツに力を入れている高校に進学しました。それらの影響を受けてなのか、自然にスポーツに関わる仕事をしたいと思うようになっていて。
自分にはプレイヤーよりもサポートが向いていると思い、スポーツトレーナーに着目したんです。
今は、トレーナーと言えばパーソナルトレーナーをイメージしがちですが、僕らの世代が想像するトレーナーは、スポーツトレーナーがメジャーでした。高校卒業後は地元を離れ、スポーツトレーナーに特化して学べる都内の専門学校に進学する予定だったのですが…奨学金の契約に齟齬があり、入学することができなくなってしまったのです。
――その後はどういった経緯でトレーナーに?
とりあえず、一般企業に就職。商業高校出身だったため、経理や庶務仕事が中心でトレーナーとは全く関係のない仕事でしたが、入学資金の貯蓄を目標に奮闘し、約2年間勤めました。それから無事に上京しましたと言いたいところ…転勤を命じられてしまって。トレーナーになることが目標だった僕は、その会社の退職を決意。1年間のアルバイト期間を経て、ようやく上京し、専門学校に入学することができました。
入学してからは、実際に社会人のサッカーチームでトレーナー業を学ぶなど、主にスポーツケアの勉強に励みました。
――進学するまでの道のりも容易ではなかったのですね。トレーナーになりたい気持ちが伝わってきます。
周りの同級生と比べたら、3年くらいの差があるので必死でした(笑)。卒業式の卒業証書授与の挨拶を任されるくらいには成績は良かったのですが、決まっていた就職先の手違いにより無職になってしまって。想像していなかった展開に、とても焦ったのを覚えています。
そんな状況の中、見つけた就職先は業界専門誌で見つけた加圧トレーニングをウリにしたジム。専門学校で学んだ知識やスキルも役立ち、中間管理職を任されるまでになりました。
ところが、トレーナーとして働き始めてから7年目に突然廃業を言い渡されたんです。
――目まぐるしい展開! それから独立を?
トレーナーを始めてから、ぼんやりと独立を考えていました。ここがタイミングだと思い、2017年2月の廃業と同時に、独立を決めて5月にはパーソナルジム「Personal Bodymake Hagiwara」をオープンさせたんです。
――短い期間でオープンしていますが、準備は順調に?
それが…実は当時、結婚していて子どもも幼かったので、妻からは正社員として働いてほしいと言われてしまっていて。しっかり話し合いをするために機会を設け、説得。店舗の賃貸契約更新までに結果を出すことを条件に承諾してもらい、開業にこぎつけました。
勤めていたジムの廃業を機に独立。経験しておいた方が良いこととは?
――始めに準備したことは?
物件探しです。トレーニング器具が置けること、不特定多数の人が出入りができることが懸念点となり、物件探しもかなり難航。期間が短く、十分に準備ができていない状況でしたが、ようやく今の西新宿の場所を見つけてスタートさせることができました。
――ジムの場所を確保するときに気をつけたポイントはありますか?
独立当初から女性専門ジムとして打ち出していたので、なるべくお互いの距離感が保てるように広いスペースの空間を意識して探しました。
――なぜ女性を専門に?
以前働いていたジムでご指名をいただくお客様の9割が女性だったため、女性専門のパーソナルジムと打ち出すことにしたんです。
何かに特化すると、ジムの特徴が出せるかなと思ったのも理由としてありますね。
――では、独立を考える際に経験しておくべきことは何だと思いますか?
僕は卒業してから独立するまで、同じジムに7年間所属していました。長く一つのものに特化して学び続けることは悪いことではありませんが、おすすめはしません。僕はそのジムのやり方しか知らず、ましてや廃業しているわけですから、経営方針も含めて参考にしにくいと感じています。
そうした自分の経験からしておいた方が良いと思うのは、いろいろなジムで働いて、いろいろなトレーニング方法を知っておくこと。うまく行っているジムや話題が絶えないジム、またはトレーニング方法を見て学ぶと良いと思いますよ。
一つのものに固執し過ぎず、目的に合わせた経験がのちのち役に立つと思います。
勤めていたジムが閉店してしまうタイミングで、独立を決意した萩原さん。もともと独立を考えていたと言いますが、準備期間にあまり時間がかけられず不安なスタートを切ります。後編では、どのようにしてジムが軌道に乗ったのか、トレーナーとして抜きん出たきっかけになった「なりたい骨格エクササイズ」を考案した経緯について伺います。
取材・文/東 菜々(レ・キャトル)
撮影/生駒由美
Information
住所:東京都新宿区西新宿8丁目19−1 小林ビル 811