軽費老人ホームについて
介護業界の中でも比較的求人数が少なく、マイナーなイメージがある「軽費老人ホーム」ですが、働く魅力はたくさんあります。ここでは、軽費老人ホームの種類やケアハウスとの違い、あまり聞き慣れない「都市型軽費老人ホーム」について、軽費老人ホームで働くメリット・デメリットなど、これから働こうと考えている人にぴったりの情報をお知らせします。
軽費老人ホームとは?
軽費老人ホームとは、身体機能の低下などにより自立した生活に不安がある方で、家族との同居が困難であったり身寄りのない60歳以上の高齢者の、自立した生活をサポートする福祉施設です。施設が食事を提供する「A型」、自炊する「B型」、要介護度が上がっても対応可能な「C型(ケアハウス)(別ページで紹介)」の3タイプに分かれていて、タイプによってサービスも若干異なります。
ただし、平成20年からこの3タイプがすべて「ケアハウス」の基準に統一されたたため、現在では軽費老人ホームはほとんど「ケアハウス」のことを指しています。
軽費老人ホームは、社会福祉法人や地方自治体が運営する施設です。そのため費用の一部を自治体が負担してくれるので、他の有料老人ホームよりも費用がリーズナブルに抑えられることが大きな特徴の一つです。
軽費老人ホームの種類
A型
A型では主に見守りと食事の提供を行います。但し、1990年以降、新規の開設はなく、A型は今後、ケアハウスに建て替えられることが決まっています。
B型
B型では食事提供がなく、見守りのみの提供を行います。B型もA型と同様に1990年以降、新規の開設はなく、今後はケアハウスに建て替えられることが決まっています。
C型
食事や洗濯などのサービスがあるC型は一般的に「ケアハウス」と呼ばれています。重度の要介護状態になっても住み続けられます。
軽費老人ホームとケアハウスの違い
ケアハウスは、軽費老人ホームの中の1種類であり、一般的に軽費老人ホームC型のことをケアハウスと言います。
軽費老人ホームA型・B型・C型の特徴と費用
軽費老人ホームの入所基準
軽費老人ホームは先に紹介したように、「A型」と「B型」の2つのタイプに分かれています。条件はA型B型とも同じで、1 入居者(夫婦の場合は夫婦のどちらか)が60歳以上であること、2 身寄りがないか諸事情で家族と同居できないこと、3 身の回りのことは自分で行なえることで、4 月収が34万円以下であることが条件となります。
軽費老人ホームで受けられるサービス
双方のタイプに共通しているのは日常に必要なサービス(見守りや外出の際のサポート)で、その他はタイプごとよって提供するサービスは異なります。A型は食事提供サービスや日常生活に必要なサービスを受けられます。B型は食事提供サービスが付かないため、自炊をしなければなりません。また、レクリエーションや行事などの充実度は施設によってかなりばらつきがあります。
軽費老人ホームのメリット
軽費老人ホームのメリットで一番大きいのは、自治体からの補助で入所にかかる費用が安くなることです。身寄りがなかったり家族と同居できなかったりと厳しいハンディを負った高齢者のための施設なので、当然と言えば当然なのかもしれませんが、軽費老人ホームの存在意義はそれだけでとても大きいと言えます。
軽費老人ホームのデメリット
軽費老人ホームはあくまでも、身の回りのことが自分でできる高齢者を対象とした施設なので、介護サポートや医療措置が必要になった際には特別養護老人ホームなどの介護施設に移らなければならない場合があります。また、サービス内容も運営母体によって様々なので、入所の際にはレクリエーションや行事の有無などをしっかりと検討する必要があります。さらに待機中の入所希望者も多いため、思い立ってすぐに入所というわけにはいかないかもしれません。
軽費老人ホームの入所手続き方法
軽費老人ホームへの入所手続きは、各施設の窓口で行います。いくつかの書類を提出したあと、施設のスタッフからの面接を受け、入所の是非が決定されることとなります。
軽費老人ホームにかかる費用
軽費老人ホームの入所費用は、タイプによって異なります。
自炊必須のB型は一番安く、月額費用が3~4万円。食事が提供されるA型だと6~17万円が目安となります。いずれも初期費用(入居一時金)がかかることがあり、利用者の経済状況などによって価格が変動します。また、介護保険が適用されるサービスを利用した場合は、その費用の1割が加算されます。
軽費老人ホームの設備
軽費老人ホームは館内の設計がバリアフリーとなっているため、高齢者が行動しやすいのが特長です。居室は基本的に個室で、夫婦での入居者のために2人部屋が用意されている施設もあります。B型の施設には共同の食堂は用意されていません。
A型 | B型 | C型(ケアハウス) | ||
---|---|---|---|---|
介護型 | 自立型(一般型) | |||
メリット | 「少しの生活支援を受ければ自立した生活ができるので、身寄りがなく1人暮らしが不安」という方には安心。 | 基本は自炊だが、病気や怪我の場合には給食を出してもらうこともできる。 | 介護が必要になっても退去しなくて良い。 | |
デメリット | 介護が必要になると退去しなくてはならない。 ※施設による |
介護が必要な人は入居できない。 | A型、B型に比べて、かかる費用が高くなってしまう。 | |
費用 | 初期費用:0~30万円 月額費用:6~17万円 |
初期費用:0~30万円 月額費用:3~4万円 |
初期費用:0~1,000万円 月額費用:5~20万円 |
初期費用:0~30万円 月額費用:5~20万円 |
設備 | リビング:○ 食堂:○ 浴室:○ 機能訓練室:× 相談室:× 洗濯室:○ 居室内トイレ:× 居室内キッチン:× 理美容室:× |
リビング:○ 食堂:× 浴室:○ 機能訓練室:× 相談室:× 洗濯室:○ 居室内トイレ:○ 居室内キッチン:○ 理美容室:× |
リビング:○ 食堂:○ 浴室:○ 機能訓練室:×(施設による) 相談室:× 洗濯室:○ 居室内トイレ:○ 居室内キッチン:○ 理美容室:× |
介護保険が適用されるサービスを利用した場合
軽費老人ホームにおいて介護保険が適用されるサービスを利用した場合は、その費用の1割が加算されます。
『都市型軽費老人ホーム』とは?
「軽費老人ホーム」には定員20名以下の小規模な「都市型軽費老人ホーム」もあります。都市部において施設を開設しやすいよう、居室面積や職員の配置に関する基準が緩和されています。その分、所得が低い高齢者でも入居できるよう利用料を低く抑えており、収入に応じた減免措置があります。
軽費老人ホーム | 都市型軽費老人ホーム | |
---|---|---|
定員 | 20人以上 | 20人以下 |
居室広さ | 21.6㎡以上 | 7.43㎡以上 |
居室設備基準 | トイレ、キッチンなど | 規定なし |
費用 | 月額:6万~数十万円 | 月額:12万円前後 |
地域 | 全国 | 都市部(東京都、神奈川県、埼玉県、大阪府、京都府、兵庫県、愛知県) |
メリット
・家賃が安い
・入居一時金が不要
・食事サービスがある
・夜間も職員が常駐しているため、緊急コール対応可能
・生活支援サービスがあり、健康管理や経済的な不安を相談可能
・生活保護受給者でも入居可能
デメリット
・施設の地域が限られている
入居条件
・原則60歳以上
・身体機能が低下により、自立した生活を送ることが難しい方
・家族の援助が受けられない方
・施設のある地域に住民票を持つ方
・感染症がない方
軽費老人ホームの求人について
軽費老人ホームで働きたい人にとっては、そこで働くメリット・デメリットを把握しておく必要があります。
軽費老人ホームで働くメリット
介護職の悩みの代表格であるものが腰痛です。重度の要介護者の移乗、体位変換などで腰を痛める介護職員は多く、場合によっては仕事を辞めざるを得ない状況になってしまうこともあります。その点、軽費老人ホームでは入居者の要介護度は低く自立に近い状態であることから、身体介助をすることが少なく、介護職員の身体的負担が少ないのです。他の仕事場で腰を痛めてしまった介護職員も、軽費老人ホームでは無理せずに働くことが可能です。
軽費老人ホームで働くデメリット
入居者に対して身体介助をすることが少ないことから、介護の技術が身につきにくいという点がデメリットとして存在します。もちろん、介護予防や自立支援という意味での技術は身につきますが、他の介護施設に転職しようとした時にはあまり役に立ちません。また、軽費老人ホームでの給料は、他の介護施設に比べて低い傾向にあるようです。給料を第一に考えている人にはあまりおすすめできない職場と言わざるをえません。