【今さら聞けない!? 介護のお仕事の基本 vol.22】訪問のたびに手土産をくれようとするWさん。どう対処する?
介護技術だけでなく、コミュニケーション力、観察力などの幅広い能力も求められる介護職。対応の仕方次第で、トラブルを回避できたり、よい関係性が築けたりすることもあります。当企画では、現場で使える、介護の現場で起こりがちな困りごとの対処法をご紹介します。
訪問のたびに帰りがけに手土産を持たせようとするWさん。断り続けるのも辛い…。どう対応したらいい?
週1回訪問する一人暮らしのWさん(80代・女性)。息子さんのお嫁さんとあまり仲がよくないようで、息子家族との交流があまりないようです。担当ヘルパーが行くと、毎回のように「あなた、一人暮らしでしょ。これ、持っていきなさい」と自分で作った梅干しなどをお土産に渡そうします。もちろん、「規則だからもらえない」ことはその都度伝えているのですが、「誰も見ていないから分からないわよ!」と機会を見つけては、お土産を用意しています。
最初のうちは何とかWさんを傷つけないようにうまく断ることもできるでしょう。しかし、これが続くとなれば、例えば「誰にも言わないって言っているのに。信用できないの?」などのように、Wさんの不満が爆発することも考えられます。そうならないための対処の例を、ポイントをおさえながら見ていきましょう。
ポイント1:「面倒を見て喜ばれたい」願望に応える
息子夫婦とあまり交流がないことや、担当ヘルパーの一人暮らしを気にかけていることを考えると、Wさんは誰かのお世話を焼きたいのではないでしょうか。まずはその願望を可能な範囲で叶えてあげるような対応を心がけてみましょう。もちろん、物品を受け取るのはトラブル回避のためにもNGです。なので、受け取ることは規則で禁止されていることを伝えながらも、例えば「作り方を教えてもらえませんか!」のような応対はいかがでしょうか。『世話を焼きたい』気持ちを満たすことができれば、物を渡そうとする行動も落ち着く可能性が高くなります。
ポイント2:この先もWさんと関わっていきたいと伝える
規則で禁止されている。ばれたらWさんのお世話ができなくなってしまう。確かにこれは事実です。ですがこの場合、これだけではWさんの気持ちが置いてきぼりになってしまいます。ポイント1の対応でWさんの心に寄り添ったうえで、さらに、担当ヘルパー自身も「これからもWさんのお世話がしたい」という気持ちがあることを伝えましょう。そうすることで、受け取れない理由への『納得度』も変わってくるはずです。
世話焼きタイプの利用者に言ってはいけない2つのこと
1.「規則なので!」のような問答無用の拒否
2.「お気遣い無用です」のような気持ちを無視する言葉
Wさんのような人は、母性が強く、面倒みがよくて人に尽くすタイプです。担当ヘルパーに対して「面倒をみたくてたまらない」気持ちがあるのですから、その感情を否定する言葉や態度はトラブルの元です。おせっかいに感じることもあるでしょうが、反面、頼まれごとや他人の失敗に寛大なところに救われたりもするはずです。母親を頼るような対応をすれば、より良いコミュニケーションが取れるでしょう。
文:細川光恵
参考:「こんなときにはどう言葉をかけたらいい? 介護の言葉かけ タブー集」誠文堂新光社
監修
中浜 崇之さん
介護ラボしゅう 代表/株式会社Salud代表取締役/NPO法人 Ubdobe(医療福祉エンターテイメント) 理事/株式会社介護コネクション 執行役
1983年東京生まれ。ヘルパー2級を取得後、アルバイト先の特別養護老人ホームにて正規職員へ。約10年、特別養護老人ホームとデイサービスで勤務。その後、デイサービスや入居施設などの立ち上げから携わる。現在は、介護現場で勤務しながらNPO法人Ubdobe理事、株式会社介護コネクション執行役なども務める。2010年に「介護を文化へ」をテーマに『介護ラボしゅう』を立ち上げ、毎月の定例勉強会などを通じて、介護事業者のネットワーク作りに尽力している。