【もっと知りたい「ヘルスケア」のお仕事 Vol.21】United Performance 荒井進之介さんが考えるスポーツトレーナーの魅力
ヘルスケア業界のさまざまな職種にフォーカスし、その道で働くプロにお仕事の魅力や経験談を語っていただく『もっと知りたい「ヘルスケア」のお仕事』の企画。
前回はスポーツトレーナーとして活動しているUnited Performanceの荒井進之介さんに、トレーナーを目指したきっかけや、現在に至るまでの経緯をお聞きしました。今回は、荒井さんがスポーツトレーナーのお仕事に感じている魅力や、これからスポーツトレーナーを目指す人たちへのアドバイスを教えていただきます。
フィジカルトレーナーには、コーチングというスキルも必要
―荒井さんが感じるスポーツトレーナーの魅力とは?
選手の能力やスキルが向上していって、実際に試合で力を発揮してくれると、すごくうれしいですよね。今まで試合に出られなかった選手が試合に出られたり。スポーツの世界なので、どうしても勝ち負けは出てしまうんですけど、そういう試合の場で、自分が見ていた選手が力を出せていると、日々の積み重ねを見ている分、うれしく思います。
―スポーツトレーナーになって、仕事にする前とギャップを感じたことはありますか?
トレーナーの勉強をするまでは、知識や技術がある人がすごいと思っていたんですけど、それだけだと限界があるなというのは感じました。大切なのは、いかに選手に信頼されるか。思っていた以上に、選手とのコミュニケーションとか、人との接し方というスキルが大切なんだなって、トレーナーを始めてから気づきましたね。
―コミュニケーションの面で、気をつけていることは?
1グループ大体20人くらいなんですけど、できるだけ全員と話すようにしています。競技のことに限らず、テレビの話とかでも構わないと思うんですが、何か少しでも会話をする。そういうところから、ポロッと悩みが出たりするかもしれない。例えば、チームは勝ったけど個人的にはイマイチだった…とか。そういうところを拾えるようにしたいなと思っています。
いわゆるコーチングというところですよね。僕のようなフィジカル系のトレーナーって、チームの中でもコーチの分類に入ることもあるんです。なので、そういう要素も必要で。選手と話しながら、徐々に考えをいい方向に導いてあげるということも意識しています。
あと、選手だけでなく、監督や他のトレーナーとコミュニケーションをとることも大切ですよね。トレーニングメニューを考えるうえでもそうですけど、お仕事をいただくっていう意味でも、横のつながりが大事だと思います。
―お仕事の依頼は、紹介が多いんですか?
ホームページやSNSから問い合わせいただくこともありますが、人づてで話をいただくことも多いですね。我々の職業はどうしても狭い世界で、人も限られているので、どこかのチームのトレーナーは大体知り合いか、知り合いの知り合いなんです。だから、何かポジションが必要になったときに、スポーツ現場で一緒にお仕事をした方から声をかけてもらうことも実際多いです。
基礎知識を蓄えて、現場でのアウトプットを考える
―トレーナーを目指す人にアドバイスをお願いします。
知識はやっぱり大切なので、一般的な基礎知識っていうのは勉強しておいたほうがいいです。そのうえで、自分が興味のあることをどんどん勉強していくのがいいかなと思います。
スポーツトレーナーって、個性があるんです。例えば僕の場合は、筋トレはもちろんですが、その中でもアジリティ系のトレーニングや、フットワークを高めるトレーニングを得意としています。そういう風に、スペシャリストになれる分野を作るのは必要かなと思います。
あとは、スポーツ現場に出たいということであれば、現場を体験したほうがいいです。学生であれば、先輩が行っているチームを見学させてもらうとか。実際に現場を見ることで、勉強したことがどう活かされているのか参考になると思います。解剖学ってこういうところで活きているんだとか、測定評価って意外と重要だなとか(笑)。勉強って自己完結型だと思うので、いかにアウトプットをするかが大切だと思います。
―最後に、今後の展望を教えてください。
トレーナーの認知と価値を上げていきたいですね。「スポーツトレーナーをしています」と言ったら、何をしているのかわかるくらいに。僕ができる具体的なところで言うと、まずは目の前の選手をしっかりとトレーニングすること。あとは、認知を高めるためにも、もっとスポーツの外の世界と接していく必要があるなとも思っています。選手だけでなく、まずは選手の親とか、身近なところからでもいいので、アウトプットする相手を少し変えることで、輪を広げていければと思います。
荒井進之介さん流! スポーツトレーナーとしての心得3か条
1. 選手と話す機会をたくさん作る
2. 主観ではなく客観的なデータを信じる
3. 最終目標を目指してトレーニングスケジュールをたてる
選手が力を発揮できるように、トレーニングメニューを考えるスポーツトレーナー。そのためには、選手とのコミュニケーション、知識を蓄えていかにアウトプットするかが大切なんですね。次回は、荒井さんがトレーニングメニューを考えるときの技術について教えていただきます。
▽#3はこちら▽
【もっと知りたい「ヘルスケア」のお仕事 Vol.21】United Performance 荒井進之介さんがスポーツトレーナーの技術をレクチャー>>
取材・文/山本二季
撮影/高嶋佳代
教えてくれたのは…
スポーツトレーナー 荒井進之介さん
早稲田大学・同大学院にてスポーツ科学を学び、在学中にアメフト部やテニス部などのトレーナーとして活躍。大学院卒業後は東京リゾート&スポーツ専門学校にて教員を2年務める。2014年、スポーツ現場に戻るため独立し、理想のスポーツ村建設を目指して「United Performance」を設立。有名海外フットボールアカデミーのコーチ兼トレーナー、大学バスケットボール部トレーナー、出張パーソナルトレーナーなど多くの現場で活躍中。